中国各地を襲う「経済破綻の津波」 あふれる失業者、求人倍率200倍の職種も

2023/03/11
更新: 2023/05/26

過去3年間、中国共産党によるゼロコロナ政策など極端な防疫対策の影響で、中国社会は深刻な打撃受けた。なかでも中国経済の破綻は致命的で、昨年の若者の失業率は20%に達している。

もはや「風前の灯」に至った中国経済

かつて「世界の工場」と呼ばれて繁栄した中国の製造業は、輸出製品の需要低迷で受注の9割が失われた。それにともない、企業の倒産や工場の閉鎖、従業員の大量解雇や新規採用の停止など、中国経済の深刻な状況は止まるところを知らない。

各地の職業紹介スポットは求職者で溢れかえり、なかには求人倍率200倍に達する職種もあるという。正社員での雇用はもちろん、臨時工(アルバイト)を探すことさえ極めて困難。雇用主から提示される給料は、驚くほど安い。

消費者の購買力が著しく低下したことで、ネット販売は継続しているものの、一定の賃貸料やテナント料がかかる実店舗は経営ができなくなり閉店に追い込まれるケースが後を絶たない。かつては賑やかだった商店街が不気味な「シャッター街」になっている現状が、上海にも出現している。

社会に不安が広がるなか、最新の政府報告書には、軍の大幅な拡張や再編の話はあっても、不況にあえぐ中国の不動産市場に対する新たな支援案など、景気の低迷を打開する具体的な方策は乏しい。

ネット上に流出した動画の中には、職を求める人たちが長い行列を作る様子や、家賃が払えず、道端や公園で寝泊まりする人の姿があった。「もう一銭もない」と語ったホームレスの男性は、何を食べて今日の命をつなぐのか。

当局の「公式報道」を信じてはいけない

中国最大の経済都市「上海」と観光地として有名な「水の都・蘇州」。二つの都市のちょうど中間に江蘇省崑山市はある。多くの外国企業が立地する崑山市は、中国国内でも経済状況が比較的良い場所とされてきた。

その崑山市の現状はどうであるか。同市の住民である蒋さんは、新唐人テレビの取材に対して、次のように語った。

「コロナ流行後から経済が衰退し始め、多くの人が職を失った。崑山ですらこの有様だ。全国の経済がどこまで崩壊しているのか想像できる」

「崑山で普通のアルバイトを探すにも、3日4日探しても見つからないケースは多い。多くの店舗は赤字で、もう維持できなくなっている。今では消費者すらあまりおらず、景勝地でもほとんど観光客をみかけない」と蒋さんは明かした。

また、新唐人が報道した映像の中には、道端や公園で寝泊まりしながら職を探す人たちの姿があった。

ある若い男性は「今の工場は男手がいらない。女の子しか雇わないが、その賃金だって格安だ。今自分は一銭もない。アパートの家賃を払えないから、公園でホームレスをするしかない」と明かした。

上海市民の魏さんは「(中国)経済は今や急降下。これほど経済が厳しいと感じたことは今までに一度もない。ネット上に流出した(求職者が溢れかえる)動画は間違いなく本モノだ。当局の公式報道のデータを信じてはいけない。あんなのは噓っぱちだ」と語った。

フリーの宅配員「これでは飢え死にする」

上海の街角で捉えた、経済の「凄惨さ」を物語る動画がネットで拡散されている。映像の中には、ほとんどの店でシャッターが閉まった現状や、300万人とも言われるフリーの宅配員(デリバリー業者)が街角にあふれ、客からの注文が入らぬまま「失業」に直面している場面がある。

ある宅配員は「デリバリーで3時間働いても、得られるお金はたったの12元(約230円)だ。これでは飢え死にするしかない。ゴミ拾いをするほうがマシだ」と苦境を訴えた。

上海市民の魏さんは「これでもまだ最悪の状態ではなく、今後もっと悪くなるだろう。広東のほうでは昔は19元(約370円)だった時給が、今では9元にまで下がっている。私には親も子供もいるが、これでは家族を養えない。どうすれば良いのか。中国共産党が倒れなければ、人民は安心した暮らしなどできない。これが本音だし、単純な話だ」と語った。

そのほか、上海や北京に次ぐ第3位の都市として、かつては成長を誇ってきた「経済特区」の広東省深セン市にも深刻な失業の波が押し寄せている。深センの道端に寝泊まりする失業者は、動画を見ても数えきれない。

       (ツイッター投稿動画:深センの道端で寝泊まりする求職者)

教師職の求人倍率は200倍以上

ツイッターには「教師職の募集人数30人に対して、7~8千人の応募者が殺到した」という投稿もある。しかも応募者は高学歴で、いずれも著名な教育系大学の大学院生だという。

現在、中国では、清華大学や北京大学などトップクラスの大学や大学院を卒業した高学歴者であっても、4人に1人は就職できていない。

そうした高学歴者のなかには、心ならずも「城管(じょうかん)」の職に就く若者もいる。城管とは、都市部の治安を維持する名目の集団であるが、黒い制服を着て徒党を組み、市民を棒で殴りつけるなどの暴力をふるうため、市民から恐れられ、非常に嫌われている。  

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。