中国の経済不振が深刻化し、詐欺や窃盗といった行為が、社会の各所で頻発している。
そんな中、先日の「清明節」の間に湖南省で起きたある事件が、中国社会の現状を象徴する出来事としてネットで話題になった。
4月5日、湖南省株洲市にある墓地(「福寿陵園」)で、頭からチェック柄の衣服をかぶった中年女性が、墓前に供えられた果物などを大量に持ち去る様子が動画に収められ、SNS上で急速に拡散された。
「覆面の女」は両手にいくつもの袋を抱え、かなりの量の供物を運び去ったが、見るからに重そうな様子だった。持ち去られた果物は、とても新鮮に見えたため、供えられて日が経っていないものと思われる。
供物泥棒に対し、現地住民は怒りを露わにした。
「供えてからまだ2時間も経っていないのに持ち去るなんて、信じられない」といった怒りの声のほか、
「覆面の女はあらかじめカラの袋を4つも持ってきていた」と、計画的犯行を疑う証言も上がった。
この事態に、墓地関係者は中国メディアに対し、「こうした窃盗行為は防ぎようがないが、非常に遺憾」と語った。
一方で、ネット上では意見が分かれて、「供物を分け合うのは地方の伝統」として、行為を擁護する声もある一方、「死者への冒涜だ」「貧しさに狂ったのか」といった批判も寄せられている。
「持って帰って食べるならまだ許せるが、転売目的なら本当に悪質だ」との懸念の声も上がり、なかには、「誰が好き好んで死人に手向けられた供物に手を出すのか。生活が逼迫しているからこそ、こういう行動に出たのでは」という同情的な意見も散見される。
あるユーザーは、「両親を亡くし、寝たきりの祖父のために供物を拾って食いつなぐ小さな女の子の話」を紹介し、経済格差がもたらす悲劇について語っており、とても印象に残った。
この事件は、ただの窃盗にとどまらず、中国社会に広がる貧困とモラルの崩壊を映し出す鏡ともいえる。
「清明節」という祖先を敬う場で起きた「供物泥棒」騒動は、今の中国の現実と、その根底にある経済的苦境を強く浮き彫りにしている。

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