【独占インタビュー】経済か人権か、日本は選択を迫られている 長尾敬衆議院議員

2021/05/07
更新: 2024/04/22

「日本はいま、経済人権かの選択を迫られている」。大紀元の取材に対し、長尾敬衆議院議員は日本の切実な現状を述べた。長尾議員はかつてビジネスマンとして中国に返還された直後の香港に赴いたことがある。巷にあふれかえる共産党のプロパガンダを目の当たりにし、驚きを隠せなかったという。独裁的なイデオロギーと残酷な統治手法を国外へと輸出し続ける中国共産党政権に対し、日本はどう対処すべきなのか。大紀元は日本が直面する喫緊の課題について意見を伺った。

ー大紀元香港印刷所の襲撃事件について

(国安法施行等を背景に)香港当局は犯人検挙をしっかりするだろうか。大紀元の発信を快く思っていない人々による、言論を封じるための一つの手法の結果だったのだろう。言論を封殺は犯人がどういう立場のものであれ、あってはならない行為だ。

ー日本で対策を講じられることが可能だと思うか

日本国内で破壊活動が発生した場合、メディアの自由、治安は日本と香港とは違う。日本国内で同様の類似案件が発生した場合は相当厳しく捜査するだろう。日本の場合はあのまあ歴とした法治国家なんで国籍問わず超えた案件があれば厳しく対応をしていくと思う

中国共産党の暴力性に関連して。議員たちの間で、台湾の半導体ファウンダリー大手TSMCの日本のつくば設置が話題になった。中国は半導体技術が喉から手が出るほど欲しているとなると、物理的な攻撃を仕掛けかねない。そういう(危険性に関する)議論はある。

ー中国人権問題への取り組みについて

中国についてはチベットウイグル、香港、台湾について取り組んできた。まず、チベットについて、今は情報がほとんど入手できないほど封鎖されている。報道もない。これは、以前と比べ平和だからというのでは全くなく、人権侵害は中国共産党の思惑通りに封じ込められてしまった、ということだと理解している。

新疆ウイグル自治区では少数民族が100万人規模で収容され、世界各国がこれを非難決議や人権制裁を行なっている。日本でもマグニツキー法国会決議の議論があるが、対応が遅れれば遅れるほど事態は深刻さを増すだろう。

香港の雰囲気が変化した当時のことを覚えている。返還直前まで香港で仕事をしていた。中国返還後は短期間で雰囲気がガラリと代わり、街に中国共産党のプロパガンダがあふれ、驚いた記憶がある。

香港の民主活動家の強いエネルギーによって中国政府が変換されたが、香港の人々は共産党の支配に抵抗を続けた。香港には、共産党にとって「内政問題だ」との大義名分を取りやすい環境があったと思う。現在、公然と人権侵害が行われており、民主主義が崩壊した。軍事侵略から始まったチベットやウイグルよりも、(制度変更から)一気に激変を迎えた香港から「将来日本がそうなってはならない」と捉えるのは理解し易いかもしれない。中国共産党の周りは拡張政策の対象だ。台湾も中国側からみれば核心的利益の内側に入る。

ー菅首相は米国で首脳会談を行う。(注:本インタビューは訪米前に行なった)

米国か中国か、どちらをとるのか、という議論ではなく、経済優先か人権重視か、ということを考えたい。今日の経済発展から、日本と中国の経済関係は長く続き、人権侵害は咎めず放置してきた。中国の人権弾圧がこれほど過激で露骨になり、全世界がそれを非難しているなかで、もし「いやいや、日本は経済的なことを考えれば中国とは今までの延長線上でやらざるを得ない」とするならば、日本は世界か軽蔑されるだろう。

守銭奴という言葉がある。経済至上主義で金に目がくらんだ者という意味だ。そういうレッテルが貼られてしまわないようにしなければならない。人権を踏みにじる姿勢を根底に持つ国家のあり方は否定しなければならない。

人権問題は信念の尊厳というのが含まれる。チベットや南モンゴルの方々との話における人権問題と、日本の人権問題は性質が違う。日本人の人権というのは国民の生活最低限の保証を国が行ない、保証された日常生活の上での人権問題を取り扱っている。だから、外国人の地方参政権とか、そういう話をしている。

しかし、チベット、ウイグル、南モンゴルの人権弾圧の場合は、当たり前の日常生活がある日突然何の理由もなく訳も分からず突然奪われるという深刻な事態だ。

長尾敬衆議院議員(清雲/大紀元)

ー中国の民主化について

中国共産党がいう資本主義導入と改革解放路線を、全世界は一度は信じてしまった。共産党政権は、国民に銃を向けたり戦車で人を轢き殺したりした。当時の日本は他国が経済制裁するなか、最初に制裁を解いてしまった。人権と経済を天秤にかけた。この判断は誤っていた考える。

日本の大きな経済団体での公式会合で(人権と経済についての)質問した。逆に「長尾さんの質問を平たく言えば、泥棒とでも悪人とでも商売取引をするのか?ということですね」という返事がきた。相手は否定せず、商売は世のためになる、というニュアンスだった。人権優先という考えは抱いていないようだ。

日本は経済取引における人権への取り組みに態度を示さなければいけない、その局面に来ていると思う。

ー日本経済界の人権に対する考えは変えることができるか。

日本は外圧がないと変わらないかもしれない。黒船到来、開戦、自然災害など外圧に伴う変化があった。世界でマグニツキー法が施行されていることについても、この変化の後押しになる。G7で人権制裁法がないのは日本だけ。そういう(人権を重んじない)国と商売はしないというのは、世界の潮流になっている。

ー1999年4月25日、当時の中国主席江沢民が法輪功迫害を決めた。22年続く迫害に日本が非難をする可能性はあるか。

日本が人権問題の一つとして態度を示す可能性は十分ある。いま、まとめようとしている国会決議は中国という言葉こそないが、新疆ウイグル自治区や香港などの言葉が入り中国に対するメッセージであることは間違いない。臓器移植の問題も、私は国会前などで法輪功学習者が配布した公表資料で認知している。しかし、臓器収奪問題について、現段階ではすべての議員の認識が十分ではない。国会決議は共通認識が必要で、徐々に高めていきたい。その過程で、臓器収奪問題も入ってくるだろう。

ー在日中国大使館・孔鉉佑氏が自民党外交部会と面会し、ウイグルや香港問題について協議したとの報道がある

話し合いは想像通り、平行線だった。個人的には(日中間の)溝が深まった印象だ。10年前、程永華日本大使(当時)から私宛てに抗議文が届いた。ダライ・ラマ14世やラビア・カーディル氏を呼び捨てにして「反中国勢力」だと批判する内容だ。今回の会議内容はさらに酷く、孔大使は(批判されている人権問題は)内政問題であると同時に「笑い話だ」と取り合わない。米国の政治利用に日本は追随するなと主張してきた。さらには、「あなたたちを見ているものは真実か」と言っていた。「新疆ウイグル地区を見に行ったことがあるのか、来て見てみてほしい」と。先方は自信満々だった。

在日ウイグル人で日本国籍を持つ人もいる。故郷の家族が行方不明になっているとの訴えがある。私は程大使に、現地情報について日本に提供してほしいと申し出たが、この質問には対応しなかった。

ー日本と中国の溝は深まっていると。いっぽう、米国では人権制裁法を次々発動している。日本の立ち位置は?

まずは(人権侵害非難の)国会決議。次に人権制裁法の成立だ。私たち議員立法でもこういう法律を作るべきだ。立法は時間がかかるのかもしれないが、(6月英国で開催予定の)G7まで何らかの形にする必要がある。

ー最後に、迫害されている人々に向けてメッセージを

叫び声について日本は受け止めていく。人権先進国である日本だが、香港や台湾を含む皆さんの行動が日本の意識を変えてくれた。若者を中心とする皆さんが本当に体を張って全世界を気づかせてくれた。僕らはそれに答える責務がある。価値観が共有できる国や組織、民族と協働して対応していきたい。

(聞き手・王文亮)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。