日本のオフィス賃料はどう減価するのか? 最新データで迫る経年減価とリノベーションの効果

2026/06/04
更新: 2026/06/04

日本銀行および株式会社ザイマックス総研の研究者らは、日本のオフィス賃料の経年減価とリノベーションの効果に関するワーキングペーパーを発表した。本研究は、日本銀行が毎月作成・公表している「企業向けサービス価格指数(SPPI)」の「事務所賃貸」において、正確な品質調整を行うことを目的として実施されたものである。

従来、日本銀行が利用してきた減価率のパラメータは2007年のデータに依拠していたが、近年の不動産価格の上昇や技術革新、コロナ禍といった外部環境の変化を反映するため、最新のデータセットを用いた大規模な実証分析が行われた。

分析の概要

本研究では、ザイマックスグループが保有する大規模なオフィス賃料・属性データセットを活用している。対象データは、2000年から2024年の間に成約した東京23区および大阪市に所在する物件の取引価格ベースの新規契約賃料であり、観測数は80,057件に上る。

分析手法としては、築年数を含む各物件の属性が賃料に与える影響を高い精度で定量化する「ヘドニック法」が採用された。経年減価の推移を正確に捉えるため、築年数に関する関数として「経年ダミー変数」「Box-Cox変換」「屈折関数」の3つのモデルが比較・検討された。

主な分析結果

本研究により、日本のオフィス賃料の経年減価に関して、以下の3つの重要な事実が明らかとなった。

1. 築25年で減価ペースは鈍化する

わが国のオフィス賃料は、新築時点から築25年頃までは概ね一定のペース(年率約1.4%)で減価していく。しかしその後、減価のペースは急速に低下し、ほぼ横ばいの状態で推移することが判明した。この非線形な動きは、米国の商業用不動産を対象とした先行研究の分析結果とも類似しているという。

2. 大規模物件と中小規模物件で減価トレンドが異なる

物件規模(延床面積5千坪以上を大規模物件と定義)によっても減価のペースは異なる。大規模物件は、新築時点からしばらくの間は新築プレミアムが剥落するためか、中小規模物件よりもやや速いペースで減価する。しかし、築38年頃以降になると、中小規模物件が引き続き緩やかに減価していくのに対し、大規模物件はそれまでの速い減価ペースから一変し、ほぼ横ばいで推移するようになる。これは、大規模物件ほど資金力のある企業によって適切な修繕が継続的に行われやすいことが影響していると考えられる。

3. リノベーションによる明確な「減価押し戻し効果」

リノベーションの実施は、オフィス賃料の減価を明確に抑制・回復させる効果がある。リノベーション実施直後のタイミングでは、新築時点の賃料対比で最大8.23%ポイントも減価を押し戻すことが確認された。経年とともにその効果は徐々に剥落していくものの、リノベーションから約16年間は減価を押し戻す効果が有意に存在し、この期間中に平均で5.43%ポイントほどの減価抑制効果をもたらすことが実証された。特に、築古物件やリノベーション後の経過年数が短いほど、賃料の上昇効果は大きくなる傾向にある。

その他の発見と研究の意義

推計の頑健性を確認するため、いくつかの条件を変えた検証も行われた。その結果、新規契約賃料と更新契約賃料の違いや、物件所在地(東京23区と大阪市)の違いは、いずれも経年減価のペースに大きな影響を及ぼさないことが確認されている。

不動産の価格ではなく、「賃料」を対象とした大規模な実証分析は世界的にも限られている。本研究が提示したオフィス物件の経年減価に関するファクトは、日本銀行の物価統計の精度向上に直接的に貢献するだけでなく、不動産ビジネスにおいてより戦略的な投資や維持管理を行う上でも、極めて有益な知見となると言える。

エポックタイムズの速報記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。