2026年に入り、中国共産党(中共)はレアアース関連技術を中核とするすべてのデュアルユース(軍民両用品目)品目について、日本の軍事ユーザーや軍事用途、日本の防衛力強化につながる用途や最終ユーザーへの輸出を禁止した。さらに、日本に戦略物資を提供する国にも報復すると警告している。
これは、2010年に起きた対日レアアース禁輸をはるかに上回る措置である。当時の危機を受け、日本はレアアース供給網の見直しを進めた。供給源の多角化、代替技術の研究開発、戦略備蓄、資源リサイクルを通じ、中国産レアアースへの依存度を約90%から現在の約60%まで引き下げた。
とはいえ、依存度がなお60%に上ることは、日本にとって大きな弱点である。中共の狙いが、日本に圧力をかけて譲歩を迫ることにあるのは明らかだ。
しかし日本は折れなかった。むしろ「脱中国」のレアアース供給網づくりをいっそう加速させ、積極的な「レアアース外交」を展開している。2026年に入ってまだ半年も経たないうちに、具体的な成果も出始めた。主な4つの動きを整理する。
日豪「準同盟」 重要鉱物協力を経済安保協力の中核に
オーストラリアは、中国以外で最も重要なレアアース供給国である。5月4日、高市首相とオーストラリアのアルバニージー首相はキャンベラで5つの共同文書を発表し、日豪の「準同盟」関係を一段と強めた。その重点の一つが、経済安全保障協力の強化。
日豪の重要鉱物協力強化に関する共同声明によると、両国は中国に依存しないサプライチェーンの構築に向けて協力する方針を示した。レアアースなどの戦略的プロジェクトを特定し、オーストラリア側の13億豪ドル規模の資金支援と日本の技術を組み合わせることで、供給源の多角化を進め、中国のような特定の供給元への依存を減らすとしている。両国は、オーストラリア国内の6つの鉱物開発プロジェクトを優先的に進める方針で、対象にはレアアース、ニッケル、ガリウム、鉱砂に含まれるレアアースの抽出などが含まれる。
高市氏は、両国が「経済安全保障協力を深める」ことは「喫緊の課題」だと述べた。オーストラリア側も、「日本はオーストラリアにとって特別な戦略的パートナーであり、両国関係は一段と強まっている」と表明した。
これに先立つ4月18日、両国は画期的な防衛協定に署名している。オーストラリアは、「もがみ型」護衛艦の能力向上型11隻を導入する計画だ。
日豪のレアアース協力には、すでに長年の実績がある。2011年には、双日(総合商社)がオーストラリアのレアアース大手ライナスに出資し、日本国内の軽希土類需要の約3割について、安定供給の見通しを確保した。2025年10月からは、ライナスが日本向けに重希土類の輸出も開始している。現在、ライナスは中国以外で唯一、重希土類を商業ベースで精製できる企業である。
双日は2027年半ばまでに、オーストラリアから輸入する希少性の高い中・重希土類の品目を、現在の2種類から最大6種類へ拡大する計画だ。
ベトナムのレアアース開発 重要パートナーに
5月1~3日にかけて、高市氏はベトナムを公式訪問した。両国は「包括的戦略的パートナーシップ」をさらに具体化し、協力を深めることで一致した。レアアース、エネルギー、半導体、AI、宇宙などを含む「経済安全保障」を新たな協力分野の柱に据え、レアアースなど重要物資の安定供給に向けた連携を強化する方針を確認した。
ベトナムのレアアース埋蔵量は世界6位とされる。2010年10月には、両国はベトナムでのレアアース共同開発に合意した。2011年には、両政府が「ベトナムにおけるレアアース資源の採掘・開発分野に関する研究および技術協力覚書」に署名している。
日本は、レアアースの精錬、分離、磁石製造において世界有数の技術を持つ。一方、ベトナムは2026年1月1日からレアアース原鉱石の輸出を禁止しており、日本の資金と技術を活用して、高付加価値の精錬国へ転換することを目指している。日本とベトナムの協力は、今後さらに拡大する見込みだ。
現在、双日は、オーストラリア企業のナスダック社と協力し、ベトナム、ラオス、カンボジアなど、中国南部に隣接するレアアース鉱床帯で、新たな鉱床の地質調査や、投資に向けた採算性の検討を進めている。
また、信越化学は、世界第2位のレアアース磁石メーカーである。同社はベトナム北部のハイフォン市に、精錬から製造までを一貫して行う拠点を持つ。この拠点はすでに10年以上稼働しており、年間生産能力は2200トン以上に拡大している。さらに、ベトナムの環境保護や脱炭素政策に対応し、磁石廃材のリサイクルにも取り組んでいる。
日仏 重要鉱物供給多角化でロードマップに合意
4月1日、訪日したフランスのマクロン大統領は高市氏と会談した。両首脳は「日仏重要鉱物協力ロードマップ」に署名し、フランス国内のレアアース精錬工場「Caremag」への原料調達で協力を強めることで一致した。
日本エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と岩谷産業の合弁会社は2025年、Caremagに出資した。フランス政府も同社の出資者である。Caremagは2026年末に操業を開始する見通しで、日本は同精錬工場を通じ、ジスプロシウムとテルビウムの約20%を確保する計画だ。
日本とフランスはいずれも、中共によるレアアース鉱物の輸出規制を懸念している。今回の日仏連携は、レアアースにとどまらず、原子力や宇宙技術を含む重要分野の供給網を立て直す動きでもある。世界的な供給網再編を見据えた長期的な戦略ともいえる。両国の協力は、従来の外交関係を超え、科学技術と産業を軸にした戦略的な関係へ移りつつある。
日米、レアアース戦略協定に署名
米中関税戦争が再び激化するなか、中共はレアアースを使い、アメリカに強い圧力をかけた。これにより、アメリカは中国に依存しない世界的なレアアース供給網の構築を主導する必要に迫られている。
数ある協力相手の中で、アメリカが特に重視しているのが日本である。なぜか。RFIの分析によれば、日本には海底レアアースの埋蔵量、レアアースのリサイクル技術、一部の高付加価値レアアース金属の生産技術、代替材料の開発技術、海外資源の確保など、アメリカが高く評価する強みがある。
アメリカは日本を、重要技術とサプライチェーン安全保障の協力相手であるだけでなく、将来的なレアアース供給拠点にもなり得る存在と見ている。日本とのレアアース協定の意味は、資源確保にとどまらない。同盟国の技術力と戦略的優位性を守る意味もある。
2025年10月28日、トランプ大統領と高市氏は東京で首脳会談を行った後、重要鉱物およびレアアースの供給確保に関する協定文書に署名した。
今年3月、高市氏はアメリカを訪問し、日米は総額730億ドル規模の第2弾対米投資計画を共同で発表した。投資の重点は、次世代原子力技術、天然ガスエネルギー、中国依存の低減を見据えたレアアースと重要鉱物の供給網に置かれている。
両国はまた、「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を策定した。これは、重要鉱物とレアアースの供給網について、中国以外の調達先や供給ルートを確保することを目的としている。当初は、特定鉱物の最低価格設定を柱とする。さらに、両国は深海鉱物の開発を加速させるため、「作業部会」を設置する覚書にも署名した。
こうした日米の動きを背景に、G7もレアアース供給網を共同で構築し、中国への依存を減らす方針を明確にした。フランスのレスキュール財務相は、「われわれは1970年代にエネルギー問題に対応したときと同じように、重要鉱物の問題を共通戦略として扱わなければならない」と述べた。ドイツ財務相も、G7がレアアース依存の低減を急ぐ必要があるとの認識を示している。
5月18日と19日にパリで開かれたG7財務相会議では、レアアースの生産・精錬での協力に向けた協議が主要議題の一つとなった。
結び
国際エネルギー機関(IEA)は、2040年までに世界のレアアース需要が2020年の3.4倍に拡大すると予測している。西側諸国にとって、中共に供給を左右されないサプライチェーンの構築は急務である。
なかでも日本は、中共とのレアアースをめぐる対立が最も激しい国の一つであり、その対応も現時点で最も成果を上げている例の一つといえる。
オーストラリアのローウィー研究所は3月19日付の文章で、「日本はもはや、中国以外の代替供給源を受け身で探す段階にはない。地政学的な圧力にも耐えられるレアアース供給体制を、自ら構築し始めている。これは、日本が単に供給源の多角化を追求しているだけではなく、市場任せにしない、政策主導の安定した枠組みを構築し始めたことを意味する。これにより、中共が価格操作を通じて市場に影響を及ぼす余地を狭める狙いがある」と指摘した。
日本が中国に依存しないレアアース供給網の構築に成功すれば、中共がレアアースを圧力手段として使う力は、大きく損なわれることになるだろう。

ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。