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トランプ大統領 石炭火力発電の推進を表明 中国の経済優位に対抗

2025/03/20
更新: 2025/03/20

アメリカのトランプ大統領は、石炭火力発電の拡大を推進する方針を明らかにし、中国の経済的優位に対抗する考えを示した。ブルームバーグの報道によると、中国は石炭火力を活用し、太陽光パネル、重要鉱物、半導体などの分野で経済成長を加速させている。

トランプ大統領「アメリカの石炭産業を復活させる」

トランプ大統領は3月17日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、「アメリカの石炭産業は長年にわたり環境団体の影響を受け、他国、特に中国共産党(中共)が数百の石炭火力発電所を建設し、経済的優位を確立した」と指摘。その上で、「政府に対し、クリーンな石炭を活用したエネルギー生産を直ちに開始するよう指示した」と投稿した。

トランプ政権は、石炭火力発電を維持することで、エネルギーコストを抑え、データセンターやAI関連分野の電力供給を確保できると考えている。

国家エネルギー評議会の設立

2月14日、トランプ大統領は「国家エネルギー評議会(National Energy Dominance Council)」の設立を命じる大統領令に署名した。その際、「アメリカはエネルギー分野で主導的地位を確立し、AI関連産業の電力供給も確保する」と述べた。

ダグ・バーガム内務長官は、「アメリカは中国とのAI開発競争において優位に立つため、より多くの電力を生産する必要がある」と強調した。

バーガム長官はブルームバーグに対し、政府が閉鎖した石炭火力発電所の再稼働を検討していることを明らかにした。また、クリス・ライト・エネルギー長官は、石炭火力発電所の閉鎖を抑制する市場ベースの対策を進めていると述べた。

AIのトレーニングや運用には膨大な計算能力が必要で、データセンターが計算処理やデータ管理、ネットワーク資源の提供を担っている。しかし、その運用には大量の電力を消費する。

調査会社iResearchの2021年のデータによると、データセンターの運営コストの約56.7%を電力コストが占めている。

ブルームバーグによると、中国は石炭火力を利用し、太陽光パネル、重要鉱物、半導体の製造を支えることで経済成長を進めた。これにより、中国は世界最大の温室効果ガス排出国となった。

経済成長と石炭消費の関係

中国の国内総生産(GDP)は、1990年の約3610億ドルから2020年には約14.7兆ドルへと急成長。これに伴い、石炭消費量は4倍、二酸化炭素排出量は3倍以上に増加した。

発電コストの比較

石炭火力発電はコスト面で優位にある。アメリカエネルギー情報局(EIA)によると、2023年の電源別の発電コスト(LCOE)は以下の通り

  • 石炭火力 36ドル/メガワット時
  • 陸上風力 40ドル/メガワット時
  • 太陽光発電 55ドル/メガワット時
  • 最新型原子力 110ドル/メガワット時

LCOE(平準化発電コスト)とは、発電所の寿命を通じた1メガワット時(MWh)あたりの平均発電コストを示す指標である。

中国 石炭火力発電の拡大を継続

ヨーロッパの環境シンクタンク「エネルギー・クリーン空気研究センター(CREA)」と「グローバル・エネルギー・モニター(GEM)」が2月13日に発表した報告書によると、中国は2024年に約100ギガワット(GW)の新規石炭火力発電所を建設する予定で、これは過去10年間で最大規模となる。

GEMの年次報告によると、2023年に世界で新たに着工された石炭火力発電のうち、中国が占める割合は95%に達した。同年、中国では合計70ギガワット(GW)の石炭火力発電所の建設が開始され、2019年比で4倍に増加した。

一方、中国以外の地域では、新設石炭火力発電所の規模は4GW未満にとどまり、2014年以来の最低水準となっている。

GEMの報告書では、2024年に世界で新たに建設が始まる石炭火力発電所のうち、中国が占める割合は93%に達すると予測している。

また、2023年に開催した「第24回東アジア・西太平洋電力工業協会大会」において、中国の太陽光発電大手・隆基緑能科技(LONGi Green Energy Technology)の李振国総裁は、業界の試算結果を発表した。

それによると、太陽光発電パネルの製造過程における電力消費量は、1ワットのパネルを生産するごとに0.4キロワット時(kWh)としている。これは、鉱石の採掘から、工業用シリコンや多結晶シリコンの製造、インゴットの引き上げ、ウェーハ切断、セル・モジュールの生産までの全工程を含めた試算である。

李氏は、「2024年に中国が400ギガワット(GW)の太陽光発電パネルを生産すると仮定した場合、その製造に必要な電力は約1600億キロワット時(kWh)となる。これは三峡ダム2基分の年間発電量に相当する」と説明した。

アメリカの電力需要は増加、石炭火力は縮小

米エネルギー省(DOE)の報告によると、2023年時点でデータセンターがアメリカの総電力消費の約4.4%を占めており、2028年には6.7~12%に増加する見通しだ。

データセンターの電力消費推移

  • 2014年 58テラワット時(TWh)
  • 2023年 176TWh
  • 2028年予測 325~580TWh

アメリカ国内では現在約200の石炭火力発電所が稼働しており、総発電量の16%を占める。しかし、過去30年間で石炭火力の割合は大幅に低下し、1997年の52.8%から2022年には19.7%に減少した。

さらに、今後5年以内に120か所の石炭火力発電所が閉鎖予定となっており、主な要因は環境規制の強化によるコスト上昇だ。

楊旭