長期的な経済政策運営の方針を決める中国の重要会議「三中全会」は、今月15~18日に、北京で開催される。
恒例のことだが、北京で重要会議があると、その開催にあわせて、地方政府から受けた不当な扱いや地方官僚の不正などを中央に直訴するため、全国各地から陳情者が北京に殺到するのである。
そこで、この時期を狙って地方からやってくる陳情者を阻止するべく、北京と地方の公安当局が結託して、その排除に努めている。
「陳情者」とマークされている人が、スマホで北京行きの乗車券を購入すれば、地元の公安局へすぐに通知されるようになっており、地元公安は旅行の目的が何であれ、北京を訪ねようとする地元民を、その自宅で、あるいはバスターミナルや鉄道駅などで、待ち伏せして、上京を阻止するのだ。
地方政府が陳情民に「ご執心」な理由は、北京の陳情局に訴える民衆が多いほど、地方政府の「失点」につながるからだ。失点が多ければ、地方官僚の出世に響く。だからこそ、各地方政府は地元陳情者を北京に行かせないよう、血眼になって阻止しようとする。もちろん、陳情民を拘束して引き渡してくれる北京警察には、地元政府から「謝礼」の賄賂が渡される。
「拉致現場」
今月6日、北京永定門の地下通路内で、陳情者2人が地方からの拉致要員によって無理やり、持ち上げられて、運び去られた。その様子を捉えた動画がSNSにも流れており、その乱暴すぎる拉致のやり方を見た人は誰もが固唾を飲むばかり。
弾圧の実態
黒龍江省出身の人権活動家・馬波さん(女性)はNTD新唐人テレビに対し、「三中全会」の開催を控えるなか、北京は緊張状態にあり、多くの陳情民が排除され、逮捕されている」と明かした。
馬さんによると「今は北京へ出入りするのに、身分証のチェックを求められ、宿泊施設から駅、バスの中、とにかくあちこちでセキュリティーチェックがあり、本当に厳しい」という。
「三中全会」を控える先月19日、北京へ陳情しに行った「新型コロナワクチン被害者の会」の代表17人が全員逮捕、拘留された。
北京へ行かなくても、「陳情をネットの権利擁護動画に投稿した」として地元警察によって拘留されたワクチン被害者家族もいる。
このほか、長く陳情を行ってきたという、当局の「要注意リスト」に載る市民は北京の地を踏んだだけで、すぐに捕まり、地元へ拉致される。エポックタイムズの取材に応じた胡大艷さんがその1人だ。
ワクチン被害者
先月22日、陳情ではなく、「北京へ旅行に行った」という胡さんは、北京に着いたとたん、警察によって身分証をチェックされ、その後、駆け付けてきた地元役人によってそのまま地元の常州へ送り返された。以降、自宅軟禁状態が続いている。
江蘇常州出身の胡さんの生後5か月の息子は2021年に三種混合ワクチンの3回目接種を受けた後に死亡した。以来、彼女は亡くなった我が子のために、正義を求めて陳情してきた。責任転嫁やたらい回しをする当局に抗議をするために、過去に2度にわたり自殺を試みたこともある。
胡さんは、エポックタイムズの取材に対し、次のように明かしている。「私はただ北京へ遊びに行っただけなのに、地元警察に拉致され連れ戻された。いま、自宅の外で6人が見張っている。2人は常州陳情局の人、残りの4人は地域組織の人員、私は家から出してもらえない」
胡さんは、度重なる陳情や自殺未遂、拘留を経て、「これ以上陳情しない」ことを条件に最終的に政府側から81万元(約1763万円)の弁償金が支払われた。
しかし、胡さんによると、「当時、政府側は弁償金を少なく出すかわり仕事を与えると約束してくれた。しかし、4年が経ったいまもその約束は果たされていない」という。
また、ワクチン被害に関する補償には「明確な基準はない」という。
「197万元(約4288万円)、40万元(約870万円)、30万元(約653万円)、6万元(約130万円)などと、本当にまちまちだ。被害者家族がどれくらい弁償をもらえるかは、どれだけ騒いでことを大きくしたかと直結してくる。大きく騒げば弁償をたくさんもらえる。なかには仕事をあげるとか、家をあげるかわりに弁償金をまけてくれというケースもある」
「自分がもらった補償は不十分であるうえ、補償内容もあいまいだ。担当役人に説明を求めているが、相手にされない」
「私はもう陳情に行っていない。だから納得いく答えがほしいだけだ。そのために、市の役人に尋ねている。しかし、彼らからの回答はもらえていない。それだから、私はその上の省の役人に聞こうとしているが、尋ねるのも犯罪だというのか? 北京へ旅行に行くのも法律違反なのか?」
「中国人民には自由の権利が全くない、24時間体制での監視、法律がどこにあるのですか?」と胡さんは訴えている。
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