路上で生活する人たちの呼び名を変える動きが波紋を広げている。
中国の立法機関は4月24日、生活困窮者を支援する法律の見直し案を公表し、これまでの「路上で物乞いなどをして暮らす人(流浪乞討者)」という表現を、「流散人員」という言葉に変更する方針を示した。
この「流散人員」は、日本語に直すと「さまよう人」や「住まいを失い各地を転々とする人」、あるいは「居場所を失って流れ歩く人」といった意味に近い。一定の場所に定住できず、生活の基盤を失った状態を指す言葉だ。
当局はこの変更について、「より中立で簡潔な表現にするため」と説明している。
一方、中国では景気の悪化や失業の増加により、住まいを失う人が各地で増えている。本紙もこれまで繰り返し報じてきた通り、橋の下や歩道で寝泊まりする人に加え、働き口を失った出稼ぎ労働者が飲食店で残り物の食事を求める姿が広がっているほか、若者の路上での死亡や、高齢者や子供がごみ箱から食べ物を探す姿も見られる。

こうした現実がある中で、中国ではこれまでも当局が言葉を言い換えることで状況をやわらげて見せる手法が繰り返されてきた。
たとえば失業は、かつて「国有企業労働者の一時帰休(下崗)」や「仕事待ち(待業)」と呼ばれていたが、近年では「柔軟な働き方(柔軟就業)」「個人事業(自雇経済)」「手軽に始める仕事(軽創業)」「短時間の仕事(軽就業)」「就職を急がない働き方(慢就業)」などと表現することがある。
また、経済の悪化についても、「マイナス成長」を「減速」「規模の縮小」「長引く減速局面」などと言い換え、実態をやわらげて伝える手法が続いている。
今回の呼び名変更も、こうした言い換えの延長ではないかとの見方が広がっている。
ネット上では、「言葉を飾ることばかりに力を使っている」「呼び名を変えれば問題は消えるのか」といった声に加え、「こんな言葉遊びに神経を使うより、問題を解決するためにやるべきことがあるはずだ」「また『小鳥が歌っている』ことにされた」と受け止める声が相次ぎ、現実にふたをしているだけだとする強い反発も広がっている。
この「小鳥が歌っている」というコメントは、中国のネット上で広まった詩「小鳥を殺す方法」に由来する。「一羽の小鳥を黙らせる最も確実な方法は、その小鳥がどんなに叫んでいても、すべて『歌っている』ことにしてしまうことだ。抗議も、泣き声も、助けを求める声も、すべて『歌声』として塗り替えてしまうことだ」という内容で、現実の苦しみや抗議の声が「なかったこと」にされる社会を描いた作品として、若者の間で共感を集めた。

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