トランプ米大統領は16日、ホルムズ海峡を通過する商船の安全確保に向け、米海軍と連携した多国籍の護衛活動に各国が参加するよう呼びかけた。これを受け、日本政府は日本関係船舶の安全確保を目的として、自衛隊を中東地域へ派遣する可能性について検討を進めている。政府関係者によると、現時点では武装護衛ではなく、情報収集活動を中心とした派遣案が有力視されている。
トランプ大統領は同日の昼食会で、ホルムズ海峡周辺の安全確保に向けて複数の国が軍艦派遣の意向を示していると説明し、「多くの国が向かっていると伝えてきた」と述べた。一方で、英国やドイツなど北大西洋条約機構(NATO)の主要国が共同作戦の呼びかけに応じていないことについて、失望を表明した。トランプ氏は自身のSNSなどでも、日本、中国、フランス、韓国、英国などに艦船派遣を期待する考えを示している。
各国の対応は分かれている。韓国国防省は米国と緊密に意思疎通を行いながら慎重に判断する姿勢を示しており、オーストラリア政府は現時点で艦船を派遣する予定はないとしている。
こうした情勢の中、日本政府は独自の対応を模索している。ロイター通信によると、高市早苗首相は16日午前の参院予算委員会で、米国から正式な要請はまだないとしたうえで、日本関係船舶と乗員の安全確保に向けて自衛隊派遣の可能性を検討していることを明らかにした。高市首相は「日本の法律の範囲内でどのように日本関係船舶及び乗員の命を守っていくか、何ができるかということを検討中だ」と述べ、日本独自の判断で対応を決める考えを示した。
関係筋によると、政府内では紛争の焦点となっているホルムズ海峡そのものは活動範囲から外し、オマーン湾やアラビア海北部などでの情報収集活動を中心とする派遣案が検討されている。日本は2019年のイラン情勢緊迫化の際にも、米国主導の有志連合には参加せず、独自の判断で護衛艦や哨戒機を中東地域へ派遣した経緯がある。
もっとも、自衛隊派遣をめぐっては法的制約も大きい。今月19日にワシントンで予定されている日米首脳会談では、トランプ大統領が日本に対し直接協力を求める可能性があるとみられているが、高市首相は自衛隊法に基づく「海上警備行動」による護衛艦派遣について、相手が国家やそれに準ずる組織である場合は法的に極めて難しいとの認識を示している。
国内でも慎重論が広がっている。ブルームバーグによると、国民民主党の玉木雄一郎代表は、現行法制の下での派遣は自衛隊員を危険にさらす恐れがあり「明らかに限界がある」と指摘した。また、自民党の小林鷹之政調会長も、紛争が継続する状況下での派遣には「非常に高いハードルがある」として慎重な判断を求めている。
政府は今後、米国の要請の有無や中東情勢の推移を見極めながら、日本の国益と邦人・日本関係船舶の安全確保を最優先に対応を検討する方針だ。高市首相は同日の答弁で、事態の早期沈静化に向け外交努力を続ける考えも示した。
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