中国共産党(中共)はこのほど、海底通信線や電力線を切断できる装置を開発したと発表した。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが報じた。
これは世界で初めて国家が公式に披露したもので、深さ4千メートルで切断作業が可能だという。
表向きは海底資源開発や救助目的ということになっているが、専門家たちは軍事転用を懸念している。
この装置が台湾や関島周辺で使用されれば、米国、日本、韓国を含むインド太平洋地域の通信が麻痺する可能性があると専門家は指摘する。

中共の「見えない戦争」はすでに始まっている
台湾の政府系シンクタンク「国防安全研究院」の研究員、鍾志東氏は、「この装置は民間船や無人潜水艇に搭載できるため、発見は困難」と警告している。
台湾周辺では今年に入ってからわずか2か月で、海底通信ケーブルの断線事故が4件発生した。いずれも付近には外国籍を装った中国船が滞留していた。
台湾における海底通信ケーブルの断線事故について、「国防安全研究院」の助理研究員、王綉雯氏は、「中国は民間船に偽装してケーブルを切断し、発覚しても『誤操作』を装う戦術をとっている」と指摘する。
今回発表された「海底ケーブル切断装置」の狙いについて、王綉雯氏は「商業利用ではなく、敵対国への報復や通信インフラへの妨害行為にある」と警鐘を鳴らす。

中国は近年、民間技術を軍事転用し、グレーゾーン戦術を展開している。
2023年には中国の衛星が機械アームで他国衛星を捕獲する実験が報じられた。これも宇宙ゴミの回収を名目にしながら、敵国の通信衛星を無力化する軍事戦術とみられている。
日本の航空自衛隊を取り巻く安全保障環境などを研究する「航空研究センター」は「中国による宇宙の平和利用の状況(2024年3月27日)」のなかで次のように指摘する。
「中国は、他国の宇宙機の機能をいつでも停止させることができる手段を常時運用しており、それを相手国に見せつけプレッシャーをかけ、その行動を制限しようとしているとの見方が可能であり、これは、『宇宙の平和利用』とは言い難いだろう」

今回の海底ケーブル切断兵器も同様だ。表向きは「民間救助」と謳いながら、実際には通信インフラへの攻撃能力を誇示する目的が透けて見える。
中国共産党は海底ケーブルを標的にした「見えない戦争」をすでに展開している。通信インフラへの攻撃は経済や安全保障を直撃し、台湾有事やインド太平洋地域の緊張をさらに高めるだろう。
国際社会は、中国の軍事転用可能な技術開発に対し、徹底的な監視と抑止策を講じる必要がある。
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