ロシアのプーチン大統領が、トランプ米大統領のグリーンランド購入計画を「真剣なもの」と評価し、北極圏における地政学的競争の激化を警告した。国際北極フォーラムでの演説で、ロシアの北極開発計画と国際協力の可能性を示唆しつつ、NATO諸国の活動に懸念を表明した。

アメリカのヴァンス副大統領夫妻がグリーンランドを訪れる前日、プーチン大統領はムルマンスクでの国際北極フォーラムで、トランプ米大統領のグリーンランド購入の意向に言及した。

プーチン氏は演説で北極地域の重要性を強調し、この地域での地政学的競争が激化していると指摘した。彼は、ロシアが西側諸国を含む外国のパートナーと協力し、互恵的な経済活動を展開する意向があると述べた。

プーチン　米国のグリーンランド購入には歴史的根拠がある 　トランプの島購入は真剣

ロシアのプーチン大統領は、トランプ氏のグリーンランド購入の考えは「真剣なもの」だと語った。

「グリーンランドの購入については、特定の2か国の問題であり、我々には関係ない」とプーチン氏は述べた。「この（グリーンランド購入）を新しいアメリカ政権の荒唐無稽な発言と考えるのは大きな誤解だ」

彼は、アメリカが「1860年代」からこのような計画を持ち、第二次世界大戦後にもデンマークからグリーンランドを購入する提案を行ったことを指摘した。

「要するに、アメリカのグリーンランドに対する計画は真剣なものである」と彼は強調した。「これらの計画には長い歴史的根拠があり、アメリカは北極における地政学的、軍事的、経済的利益を体系的に推進し続けるだろう」

アメリカのヴァンス副大統領と妻のウシャ・ヴァンス氏が3月28日にグリーンランドを訪問する中、プーチン氏の発言はトランプ大統領の意図を批判するものではなかった。

トランプ大統領は中国とロシアの北極での動きに常に警戒し、グリーンランドの購入を何度も提案してきた。

アメリカ国防総省は、改訂した2024年北極戦略において、中露の協力強化に懸念を示した。

グリーンランドは豊富な鉱物資源を有し、特にレアアース鉱床に注目している。

3月13日、トランプ大統領はホワイトハウスでNATOのマーク・ルッテ事務総長を迎え、アメリカはグリーンランドを「国際安全保障のために必要としている。単なる安全保障ではなく、国際的な（安全保障）だ」と述べた。

アメリカは北極が国家安全保障にとって極めて重要であり、核攻撃に対する早期警戒システムもその一部と考えている。クレムリンは北極がロシアの戦略的利益圏であるとし、今年2月にはロシアとアメリカがその地域での天然資源開発で協力できると提案した。

プーチン氏は、トランプ氏によるグリーンランド購入への反応は、アメリカとの関係構築を試みていることを示した。ロシアは、天然資源が豊富な北極地域でトランプ政権との経済協力を進めるアイデアを提案した。

プーチン大統領のキリル・ドミトリエフ特使は、「我々はロシア政府が承認した特定分野で、アメリカとの共同投資の機会を検討する準備がある」と述べた。

プーチン氏は、トランプ氏がグリーンランド島の支配権を求める動きを無視することは愚かだと警告した。

NATOへの懸念

プーチン氏は演説で、グリーンランドとアメリカの緊張関係はロシアとは無関係だが、NATO諸国が「極北地域を潜在的な紛争の足がかりとして指定し、軍隊を訓練する」ことが増えていることを懸念していると強調した。

彼は、ロシアが北極地域の状況を監視し、対応策を策定し、戦闘能力を強化し、軍事インフラの近代化を進めていると述べた。

「我々は我が国の主権が侵害されることを許さず、国益を確実に守る」とプーチン氏は強調した。

彼はまた、北極がロシアや他国にとってますます重要になっている一方で、「地政学的競争とこの地域での地位を巡る争いが激化している」と警告した。

演説では、ロシアの北極に関する計画を示し、この地域の交通とロジスティクスの改善が「重要な優先事項」であると強調した。