トランプ米大統領は3月7日、カナダから輸入される木材と乳製品に対し、カナダが米国産品に課している関税と同じ水準の「相互関税」を導入する意向を示した。
トランプ氏は「カナダは長年にわたり、木材や乳製品の関税で我々を不当に扱ってきた」と主張。「カナダが関税を撤廃しなければ、我々も同じ関税をかける。それが『相互的』という意味だ」と述べた。
また、「本日中に実施する可能性もあるし、来週の月曜か火曜になるかもしれない」とした。
乳製品と木材を巡る米加の対立
トランプ氏は、カナダが乳製品に最大250%の関税を課していると指摘し、「これはアメリカの農家にとって極めて不公平だ」と批判。さらに、「カナダの交渉担当者は非常に扱いにくい」とし、これまでの交渉に不満を示した。
カナダでは乳製品、鶏肉、卵、七面鳥などの生産と需要を調整し、輸入を管理する「供給管理制度」を導入しており、農家の収益を安定させる仕組みとなっている。
また、トランプ氏は米国内の環境基準を見直し、木材生産を増やすことで「カナダ産の木材に頼る必要がなくなる」との考えを示した。アメリカの製材業界は、カナダの木材産業が不公平な貿易慣行によって利益を得ていると主張しており、その影響でアメリカの製材工場の閉鎖が相次いでいるという。
「カナダは我々の木材や乳製品を輸入しづらくしているのに、カナダ産品はアメリカ市場に大きく入り込んでいる」とトランプ氏は不満を表明した。
USMCAとカナダの対応
トランプ氏は当初、4月2日から相互関税を導入するとしていたが、今回の発言で前倒しの可能性を示唆。また、3月12日には全輸入品に対し25%の鉄鋼・アルミ関税を適用する方針も明らかにしている。
これに対し、カナダ政府は2月6日、供給管理制度を維持する意向を示した。メアリー・グー国際貿易相は「この制度はカナダ経済にとって非常に重要だ」と強調。さらに、トランプ政権下で締結された米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の交渉時に、カナダはアメリカに対し一部市場を開放する譲歩を行ったと説明した。
また、グー氏は「米国は貿易協定の紛争解決制度を活用しているが、乳製品に関する裁定ではカナダの対応が協定に適合していると認められた」と述べ、アメリカの主張に反論した。
現在、米国はカナダ産木材に14.54%の関税を課しているが、グー氏はこの措置について「根拠がなく不当だ」と批判。「この関税は米加両国の消費者と生産者に悪影響を及ぼしている」と主張した。
貿易摩擦と関税の応酬
3日、トランプ氏はカナダとメキシコからの輸入品に一律25%の関税を課す措置を発表。両国が米国への違法薬物(フェンタニル)の流入を十分に防いでいないことが理由だとした。しかし、3月6日には一部の関税を1か月間猶予する大統領令に署名し、USMCAの条件を満たすカナダ・メキシコ産品については例外とした。
ホワイトハウスによると、メキシコからの輸入品の約50%、カナダからの輸入品の約38%がUSMCAの適用対象となる。
この発表を受け、カナダ政府は3月25日に予定していた1250億ドル相当の追加関税を一時停止。しかし、アメリカ製品に対する既存の300億ドル分の25%関税は継続する方針だ。ドミニク・ルブラン財務相は「最終的にはすべての関税撤廃を目指す」と述べ、今後もアメリカとの交渉を続ける考えを示した。
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