米保健福祉省(HHS)は大規模な組織再編と人員削減に踏み切り、その影響で主要な幹部職員が相次いで行政休職となった。
その中には、アンソニー・ファウチ氏の後任として2023年に国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長に就任したジーン・マラッツォ医師も含まれる。
4月3日、マラッツォ氏やその他の米国立衛生研究所(NIH)の幹部職員からの自動返信メールにより、複数の幹部が休職中であることが確認された。
対象となった幹部にはそのほかにも、2016年から国立小児保健・人間発達研究所の所長を務めているダイアナ・ビアンキ医師のほか、国立ヒトゲノム研究所の副所長代理であり、前所長の退任後は実質的に所長の職務を担っていたヴェンス・L・ボーナム・ジュニア氏も含まれている。ボーナム氏は、少なくとも2005年以降、同研究所に勤務してきた。
さらに、米食品医薬品局(FDA)では、生物製品評価研究センターの幹部ジュリア・ティアニー氏と、新薬評価部門のピーター・スタイン医師も同様に休職中であることが判明している。
生物製品評価研究センターはワクチンの審査を、新薬評価部門は医薬品の安全性と有効性の監督を担っている。いずれも医療政策上重要な部門である。
これらの職員は、3日時点で公式サイト上では依然として在職扱いとなっている。
HHS、全米で1万人規模の職員削減
HHSは3月下旬、組織再編とあわせて約1万人の職員を削減する計画を発表した。ロバート・F・ケネディ・ジュニア長官は、この取り組みを「効率性と効果の向上のために必要な措置」と説明している。
削減対象は以下のとおりである。
- FDA およそ3500人
- 疾病予防管理センター(CDC) 約2400人
- NIH 約1200人
- メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)約300人
第一段階として人員削減と再編の方針が発表された。第二段階として、今週から解雇が始まり、情報公開法(FOIA)に基づく請求対応を担当していた職員も対象となった。
HHSの広報担当者は、「重複業務や不要な事務職に対象を絞って実施した」と説明した。
ケネディ長官もXで「慢性疾患の蔓延を止め、アメリカを再び健康な国にするための改革だ」と投稿している。
一部職員に地方医療機関への異動を提示
HHSはまた、一部の職員に対し、アメリカ先住民向け医療機関「インディアン保健サービス(IHS)」への異動を提案していたことも明らかにした。IHSは主に地方や農村部で医療を提供している。
この異動提案は任意であり、受け入れるかどうかは本人の判断に委ねられている。ただし、提案を受けた人数や、受諾・辞退の内訳は明らかにされていない。
FDAのスタイン医師は医療系メディアに対し、「私は『患者対応部門』への異動か、行政休職の後の解雇という選択肢を提示された。ばかげた提案だと感じたので異動を断った」と語っている。
生物製品評価研究センターでは、前所長のピーター・マークス医師が、ワクチンの安全性に関するケネディ長官との意見の相違を理由に辞任していた。ティアニー氏が暫定所長に就任していたが、4月2日にはスコット・スティール氏が新たな暫定所長に任命された。スティール氏は2017年からFDAに所属している。
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