中国共産党は、テスラの自動運転システム「FSD」に対する制限を緩和し、中国での道路データ収集を許可した。この動きは、米中の貿易戦争や技術競争の中で、新たな戦略として注目されている。

なぜ中国共産党はテスラに制限を緩和したのか、その背後にある意図と影響について深く探る。

米中の競争が激化する中、中国共産党は新たな一手を打った。アメリカのブリンケン国務長官が北京で厳しい言葉を残して帰国した直後、テクノロジー界の巨人であるイーロン・マスク氏が中国を訪れ、中国共産党から高い評価を受けた。

最新の情報によると、中国共産党はテスラの完全自動運転システム「FSD」の中国での道路データ収集を認め始めているとのことだ。

米中関係が緊迫する中で、なぜ中国共産党がテスラに対する制約を緩和したのか？　これは米中貿易戦争や技術競争への備えなのか、それとも別の意図があるのか？

中国共産党がアメリカ企業を引き寄せ新展開

ネバダ大学ラスベガス校の王宏恩助教授は新唐人テレビの番組『菁英論壇』で、マスク氏が中国共産党の李強首相に対して大きな敬意を表したと指摘した。マスク氏は当初インド訪問を予定していたが、それを急遽キャンセルして中国で李強氏と会談した。

現在、アメリカの主要な二大政党は中国共産党に対して懐疑的な見方を持っている。もし中国共産党がアメリカに対して影響力を強め、特にホワイトハウスに影響を及ぼしたいと考えているならば、どのような手段を講じるべきか？

イーロン・マスク氏のケースは、企業を通じてホワイトハウスに影響を及ぼす典型例である。

王宏恩氏は、ブリンケン国務長官が中国訪問で目に見える成果を上げられなかったのに対し、マスク氏が中国を訪れた際にはすぐに李強首相と会談し、一部の制約が緩和されたと指摘した。

中国共産党は、「問題を解決したいならば、ホワイトハウスや政府官僚を通さずに、直接中国の官僚と個人的な関係を築くべきだ」というメッセージをアメリカの企業に伝えたいのだろう。

その結果、特にウォールストリートの企業のトップたちは、貿易の障壁や中国での問題を解決するためには、アメリカ政府を通さずに直接中国に行き、中国共産党の官僚と交渉すべきだと考えているだろう。

困難に直面する両者　マスク氏と李強首相が再び協力

テレビプロデューサーの李軍氏は『菁英論壇』で、マスク氏がブリンケン長官よりもはるかに優遇されていると指摘した。「李強首相は会談後にマスク氏を夕食に招待したが、ブリンケン氏はただ説教を受けただけだった」と述べている。

マスク氏が李強首相と会談した背景には、テスラが今年抱える問題がある。2020年以降で初めての販売減少で、ここ数か月で約8.5％減少した。

もう一つは、株価が大幅に下落したことで、ウォールストリートからの評価が厳しくなり、空売りが増えていることである。

李強氏の意図が何であれ、この時期にマスク氏を支援したのは明らかである。彼との会談後、テスラの株価は数日で15%上昇した。また、マスク氏の中国訪問はテスラにとって大きな課題解決につながる可能性が高い。テスラは4年前からFSD搭載車を開発しており、中国市場での販売が可能になれば市場拡大に貢献できる。

訪問後、李強氏はマスク氏に大きな恩恵を与えた。彼が到着した翌日、中国共産党の関連機関は、テスラの自動運転機能を搭載した2車種が中国市場で販売可能と発表した。マスク氏にとっては嬉しいニュースだっただろう。

李軍氏によると、中国共産党がテスラに対する規制を解除した背景には、李強首相の戦略的な決断があるという。

アメリカやヨーロッパが中国から資本を撤退する動きがあり、多くの外資系企業が撤退し始めている。李強首相はこれらの企業を中国に留めるために尽力し、良い例を示す必要があった。そこで、マスク氏の訪問を契機に、李強氏はテスラを米中貿易協力の好例として取り上げ、アメリカ企業が中国市場に参入する際には支援を行うという姿勢を示した。

また、テスラの中国市場への参入は、李強首相の力強い推進があったからこそである。彼は上海のトップを務めたとき、反対を押し切ってテスラの導入を実現し、これは彼の政治キャリアのハイライトの一つと見なされている。李強首相は他の要素も考慮していたかもしれない。

現在、マスク氏のFSDは中国市場にまだ導入されておらず、この分野は未開拓の状態である。李強氏はマスク氏を中国に招いて、この新市場の発展を望んでいる。さらに、中国共産党はマスク氏のAI技術やスターリンクの衛星通信技術に興味を持っており、彼を中国に留めることを望んでいる。