米国議会の規制法案に対してTikTokが利用者に抗議を呼びかけ、法案に関する偽情報を拡散したことを受けて、米国下院は審議の迅速化を図る例外措置を導入する。法案成立後、中国IT大手「バイトダンス」は6カ月以内にTikTokを売却することが求められ、デジタル技術による浸透を図ってきた中国共産党にとって痛手となる。
「外国の敵対勢力が管理するアプリがもたらす国家安全保障上の脅威からアメリカ国民を守るための法案」は7日、米下院エネルギー・商業委員会を通過した。いっぽう、TikTokはユーザーに対し、議員に抗議の電話をかけるようプッシュ通知を送った。一部の議員事務所では電話応対に支障が生じ、アプリが世論を操作する能力を備えているとの懸念が生じた。
下院対中共特別委員会のマイク・ギャラガー議員とラジャ・クリシュナムーティ議員はTikTokに対し、呼びかけを中止するよう求めた。TikTokは「中国共産党のために米国国民を操り、動員するキャンペーンにおいて、虚偽の主張を広めている」と指摘した。
TikTokは米国ユーザーに対し、同法案は「米国でTikTokを全面的に禁止するもの」であり、「政府が1億7000万人の米国人から、表現の自由という憲法上の権利を奪おうとしている」と批判した。さらに、法案は「何百万ものビジネスに損害を与え、国中の無数のクリエイターの生活を破壊し、アーティストの聴衆を奪う」ものだと主張している。
議員らは書簡で「これらのメッセージは欺瞞的だ」と述べた。 同法案はTikTokを完全禁止するのではなく、「外国の敵対勢力による支配を排除するために6カ月の猶予を与える」ものだと説明した。「TikTokが行うべきことは、中共が管理するByteDanceから切り離すことだけだ」。
対中共特別委員会の議員らは3月11日の書簡の中で、TikTokの行動は「中共がアプリに悪影響を及ぼす典型的な手法と一致している」と述べた。
米国国民に法案に反対させるためにTikTokの運営会社が欺瞞的な情報を流すことは「現在検討中の法案の必要性を浮き彫りにしている」と指摘。さらに、TikTokは戦争や米国大統領選挙に関する誤った情報を広めるかもしれないとの懸念を示した。
米国の国家安全保障当局も、TikTokがもたらす国家安全保障上のリスクについて警鐘を鳴らしてきた。
FBIのクリストファー・レイ長官は1月の下院公聴会で、TikTokが米国の膨大なユーザーデータを掌握していることについて、「安全保障上の重大な懸念」であると述べた。TikTokの禁止を支持するかとの質問に対し、レイ氏は「中国(共産党)がビジネスのあらゆる面をコントロールできる限り、その懸念を軽減することはできない」と答えた。
上院でもTikTokへの注目が高まっている。上院情報特別委員会副委員長のマルコ・ルビオ上院議員は、3月11日に開催された年次世界脅威評価公聴会で、TikTokのアルゴリズムに関する懸念を強調した。
「問題は、TikTokを動かすアルゴリズムが中国の企業(バイトダンス)によって管理されていることだ。同社は中共のいかなる命令にも従わなければならない」
共和党のスティーブ・スカリス下院院内総務は今週、TikTok法案を採決に持ち込む予定だと述べた。 ジョー・バイデン大統領は3月8日、記者団に対し、「上院と下院の両方で法案が可決された場合、その法案に署名するつもりだ」と語った。
エポックタイムズはTikTokにコメントを要請したが、報道までに返答を得られなかった。
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