英国南部の都市サウサンプトンで11日、英国に移民した香港人が中心となって、香港デモ4周年に合わせたデモや集会などの記念イベントを行った。
この「香港デモ」とは、2019年から翌20年にかけて香港で行われた一連の民主化要求デモを指す。とくに2019年6月16日に行われたデモは、主催者発表で200万人が参加する最大規模のデモになった。
その「香港デモ」から4年後。サウサンプトンで11日、デモと集会を終えて昼食をとった後、集会地点からやや離れた路上で事件は起きた。
在英の香港人男性が、中国語を話す複数の男に囲まれて暴行を受けた。犯人のうち1人は、手に中国の国旗をもっていた。被害者の香港人男性に見せつけるように旗を示している。米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)11付などが報じた。
香港人に襲いかかる集団「愛国を誇示か?」
暴漢は中国語を話すアジア人で、いずれも中国人とみられる。「香港は中国のものだ。バカやろう」などと叫びながら、香港人男性に殴る蹴るの暴行を加えた。
暴行の様子を捉えた動画を、NPO「香港民主委員会」は公式ツイッターに投稿した。
動画をみる限り、直接暴行を加えた男は3人で「こん畜生、香港は中国のものだ。バカやろう」などの口汚い罵声を浴びせながら、1人の香港人男性に殴る蹴るの暴行を加えた。
加害者の3人は、声の調子から、興奮のあまり完全に正気を失っている様子が分かる。
その主張は「香港は中国のものだ」ということらしいが、非常に激昂していることは間違いない。落ち着いて対話する余地はなく、1人に対する集団暴力そのものであった。
そばにいた香港人女性が、暴行を止めようとしたが、乱暴に押されるなどして危うく転倒しそうになった。暴行を受けた香港人男性は、首や手などに負傷した模様だ。
同NPOによると、当該の動画は香港人を襲撃した中国人側のうち、暴行に手を出していない人物が撮影したものだ。「彼らは事件後、動画をSNSに投稿して(自身の愛国ぶりを)誇示していたようだ」という。
始めから「狙いをつけた」計画的犯行
RFAによると、この日に行われたデモの途中にも「白い服を着た中国人の男」が現れ、騒いでいたという。この男は、デモ側の香港人によって追い払われたが、男は去る前に「もっと人を集めてから、また来るぞ」と言い残していた。
香港人のデモと集会が終了した後、(先ほどと同一人物であるかは不明だが)白い服の男をふくむ複数の中国人が、狙いをつけていた香港人男性に襲いかかった。 「待ち伏せしていたのではないか」とRFAは報じている。
「サウサンプトン大学」の中国SNSウィーチャット(微信)のグループチャットには、街中でデモ行進を行う香港人グループを撮った写真とともに、「バカな連中が市の中心に集まっている」と誹謗する投稿があった。
この投稿に反応して「仲間をかき集めて、あいつらを囲み(中国の)国歌を歌ってやろうか」とコメントするメンバーもいたようだ。また、加害者のうちの1人が「サウサンプトン大学の留学生である」として、この学生の氏名を公表したネット民もいた。
英国の人権団体「香港ウォッチ」のベネディクト・ロジャーズ最高責任者は、地元警察に対して、加害者の逮捕および事件の捜査を求めるとともに、加害者が留学生として在籍する大学に対しても「加害者を退学させるべきだ」と呼びかけている。
昨年10月16日、英マンチェスターの中国総領事館前で、合法的なデモ活動をしていた香港人グループに館内から出てきた領事館職員が襲いかかり、1人を敷地内に引きずり込んで暴行を加えた。
暴行の先頭に立っていたのは、総領事その人であった。習近平氏への「忠誠心」を誇示するためだったとみられている。
海外でも続く活動「香港の民主の灯は消えず」
東京の渋谷でも11日の夕方、あいにくの雨の中ではあったが、香港デモ4周年に合わせて、香港の自由と民主を守るデモ行進が行われた。
英国で香港人同胞が襲撃された事件をめぐり、日本大紀元の取材に応じた在日香港人のウィリアム・リー氏は、次のようにコメントした。
「いま香港人は、香港で声を上げられないが、だからといって香港の民主化運動が終わったわけではない。海外にいる私たち香港人は、香港の『手足』たちのために声を上げるという責任を背負っている。香港の民主化運動は終わらない」
リー氏の言葉にもあるように、香港人は民主を求めてともに活動する仲間のことを互いに「手足」と呼びあう。
香港での抗議運動の参加者も、お互いを「手足」と呼び合った。香港デモの最前線に立ち、警察が撃ち込む催涙弾に耐える者、後方支援で物資を届ける者、SNSで各地の情報をつなぐ者など、役割は違っていても目指すところは一つである。互いに切り離せない体の一部であるという意味が、彼らがつかう「手足」には込められてる。
「香港は中国のものだ」と言わせたのは誰か?
香港人が求めているのは「香港の自由と民主」であって、香港が独立国になることではない。19世紀に、二度にわたるアヘン戦争に勝利した英国が、清朝から割譲したのが香港島と九龍半島である。
その英国領であった香港は、1997年7月1日に中国へ返還された。にもかかわらず「香港は中国のものだ」といって襲いかかる暴力集団は、実は、自分たちが致命的な論理矛盾を起こしていることに全く気づいていない。
「これこそが、中共の洗脳教育の成果である」と言ってしまえば身も蓋もない。彼らは、せっかく英国や日本まで留学にきて、自由社会の空気を吸っていながら「自身の祖国である中国が、外来の悪魔思想である共産主義に奪われている」という恐るべき欺瞞に気づいていないのだ。
もちろん、そこを絶対に気づかせないように、巧みに洗脳するのが中国共産党である。
また、自由主義国(日本をふくむ)へ留学に来ている中国人学生は、主にビザの関係で現地の中国大使館のコントロールを受けやすい立場にいる。
2008年の北京オリンピックの際、長野市で行われた聖火リレーには、在日中国大使館による「動員」で中国人留学生が集められ、大型バス数台で現地に送られた。
福原愛さんなどがトーチをつないだ聖火リレーのコースでは、「中共五輪」に反対する陣営と一触即発の対峙をみせた。
このとき中国大使館に動員された中国人留学生は、バスのなかでスローガンを叫ぶ練習をしたばかりか「敵の目を配布したボールペンで突け」など戦い方の指示まで受けている。
こうした中国人留学生が真相を知り、真実に目覚めるためには、どうしたら良いか。
目の前の香港人と、静かに対話するのも一つの方法であろう。暴力に訴えれば、たちまち中共の走狗になってしまうからだ。
英国にも、日本にも、そうした紳士的な香港人がいる。先述のウィリアム・リー氏も、その一人である。リー氏は「日本の皆さんにもぜひ応援を!」と呼びかけている。
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