一枚岩ではない中露朝 外交戦略で微妙なすれ違い 金正日が正恩に「中共だけは信じるな」=専門家

2024/11/17
更新: 2024/11/15

2024年10月25日に掲載した記事を再掲載

ロシア下院は最近、ロシアと北朝鮮の「包括的戦略パートナーシップ条約」を批准するための法案を可決した。近く議会上院でも可決される見通しで、両国の軍事的な協力がさらに深まる見通しだ。

6月19日、プーチン大統領と金正恩総書記が会談を行い、「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。北朝鮮の外交政策は、ロシアとの軍事協力が加速する一方で、中国共産党(中共)との関係は微妙なバランスを保とうとしている。この複雑な状況は、北東アジアの地政学的な緊張を一層高めていると考えられる。

ワシントン外交政策シンクタンクのスティムソン・センターの上級研究員、ジェニー・タウン氏は、北朝鮮がロシアとの関係強化を選んでいる背景には、深い軍事的および政治的動機があると指摘。ロシアと北朝鮮は軍事力や国際的な支持において相互補完の関係にあり、北朝鮮はロシアを最優先の外交対象と位置付けているとみられる。

北朝鮮と中共の関係に隙間風

金正恩とプーチンは6月に首脳会談を行い、プーチン氏が自身も利用しているロシア製の高級車「アウルス」(約1.5億円を金正恩に贈与。2人で乗車し、蜜月関係をアピールしていた。

一方、中共からは、4月に趙楽際全国人民代表大会常務委員長が訪朝したきりだ。また王亜軍駐北朝鮮大使は9月に北朝鮮建国76年を祝う行事を欠席している。

韓国の情報機関「国家情報院」は9月に国会の情報委員会で報告した際、中共当局が北朝鮮の労働者の受け入れに慎重になっていることなどから、表面的には変わらぬ連帯をアピールしているものの、中朝関係の内実は「かなり悪化している」と分析していた。

ウクライナへの展開を視野に北朝鮮がロシアに3000人を派兵した証拠があると米国が発表したことを受け、中共外交部は24日、北朝鮮軍がロシアに派遣されている事実は把握していないと表明。中朝関係に隙間風が吹いていることが伺える。

タウン氏は、中ロ両国の北朝鮮問題に対する立場の違いを強調。中ロ両国は制裁解除を支持しているものの、具体的な問題においては意見の相違がみられるという。

中共は国連での北朝鮮制裁専門家パネルの任期延長に関する投票で棄権し、ロシアは明確に反対している。このような態度の違いが北朝鮮の外交方向性に影響を与えている。

ロシアと比較して、中共の北朝鮮に対する態度はより複雑である。中共は北朝鮮の非核化目標を堅持しており、これはロシアの核保有に対する相対的な寛容さと対照的である。

また、中共の対北援助は主に政治的および経済的分野に集中しており、軍事協力は比較的限られている。この立場により、北朝鮮はより緊密な軍事協力を追求する際にロシアに依存する傾向が強まっているとされる。

「誰を信じても良いが、中共だけは信じるな」

国際関係および地政学の専門家である桜美林大学の菅沼雲龍教授は、北朝鮮が国際情勢においてますます重要な役割を果たしていると指摘。

中共はアメリカの制裁を恐れてロシアを直接支援せず、北朝鮮を通じて間接的に支援しているため、このような間接支援が朝鮮の地位と役割をより際立たせていると考えられる。

菅沼教授は、北朝鮮の金正恩総書記が中共に対して深い不信感を抱いていることを指摘している。教授は米ポンペオ元国務長官の回想録に言及し、金正恩氏が「中国人はすべて詐欺師だ」と述べ、米軍が韓国に駐留することで朝鮮が中共の脅威から守られると考えていると書かれている。そうでなければ、「中共はチベットや新疆に対するように朝鮮半島に対しても同様の行動を取る可能性がある」と金正恩氏は考えているようである。

そのため、ポンペオ氏は「朝鮮半島に米国のミサイルと地上戦力を拡大しても北朝鮮は全く意に介さないだろう」と語っている。

また、菅沼教授は、金正日元総書記が亡くなる前に金正恩氏に「誰を信じても良いが、中共だけは信じるな」と言ったと述べている。金正恩氏は複数の場で中共に対する不満を表明しており、これが金正恩氏と習近平の間の相互不信と不満を示している。

飛天大学の章天亮教授も、もし露朝間で協定が締結されれば、一方が攻撃を受けた場合にもう一方が兵を派遣して支援することになると指摘。これにより、北朝鮮は中共に依存する必要がなくなり、中共が孤立する可能性があり、この状況が中共にとって不快であることは明らかである。

菅沼教授はさらに、プーチンと習近平の間に秘密協定が存在する可能性があり、ロシアがウクライナを制圧した後、中共が台湾を攻撃する計画があったと推測している。

菅沼教授は「私の推測では、冬季オリンピックの際にプーチンが中国を訪問した際、何らかの合意があったのではないか。『私がウクライナを制圧した後、あなたは台湾を攻撃する』」と語った。

「習近平は『まず冬季オリンピックが終わるまで待ってからにしてほしい』と答えたのかもしれない。プーチン氏が帰国後、しばらく待ってからウクライナを攻撃したが、3日で制圧する予定が3年に延びたため、習近平は台湾侵攻の計画を再考せざるを得なかった」

韓国国防省の部長である長申源氏は、朝露協力が北東アジア安全に与える潜在的な影響に注目している。長氏は、ロシアが北朝鮮にミサイルなどの軍事物資援助を求めると予測したが、「ロシアが先端技術を移転することは、完全に北朝鮮への影響力を失うことを意味する」と述べた。

「彼ら(ロシア)は先端技術を最後の手段とする可能性が高い」とも語り、「北朝鮮にはロシアがその最後の手段を放棄するだけの十分な取引材料はない」と指摘した。

徐天睿
エポックタイムズ記者。日米中関係 、アジア情勢、中国政治に詳しい。大学では国際教養を専攻。中国古典文化と旅行が好き。世界の真実の姿を伝えます!
エポックタイムズ記者。『時事ノイズカット』の解説員。
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