「アカデミー賞の恥!」 中共の宣伝塔になった香港出身俳優、オスカー授賞式に10万の反対署名

2023/03/15
更新: 2023/05/26

香港の民主化運動を「暴動」と呼び、人権弾圧を続ける中国共産党を賛美する香港出身の著名なアクション俳優がいる。その名はドニー・イェン甄子丹・59)氏。

民主化デモを「暴動」と呼んだ香港スター

イェン氏は1963年生まれ。出生地は広東省広州市だが、2歳のときに香港へ渡り、11歳で米国ボストンに移住した。彼にとっては、幼少期を過ごした香港が出身地といってよい。

そんなイェン氏であるが、今年のアカデミー賞授賞式でプレゼンターを務めるにあたり、同氏の中共寄りの言動を問題として降板を求める署名運動が起こり、集まった署名はオンライン上で10万筆を超えていた。

12日(日本時間13日)米ロサンゼルスで開かれた第95回アカデミー賞授賞式では、式場の外でイェン氏の出席に反対する抗議集会が開かれた。しかし同氏は、遠くに聞こえる抗議者の罵声のなか入場し、式場内の称賛に応えるように登壇を果たした。

イェン氏は、先月末に発表された米誌GQHypeとのインタビューで、2019年に香港で起きた学生や市民の民主化運動について「あれは抗議ではなく暴動だ」と述べた。

この発言を受け、香港の民主活動家らは「彼がアカデミー賞受賞式に招待されるのは香港人に対する侮辱だ」として今回のオンライン署名活動を開始する。

イェン氏はまた、今月初めに中国・北京で開かれた「両会」と呼ばれる重要会議のうち、政治協商会議の協商委員に「香港代表」としても参加している。「海外のメディアは真実の中国を報道しない」などと批判し、中国共産党が統治する中国大陸が「いかに素晴らしいか」を声高に宣伝した。

中共を賛美するイェン氏の言動をめぐり、ネット上では「軽蔑する」「金儲けのために魂まで売った」「アカデミー賞の恥だ」など批判の声が広がっている。

中国時事評論家の唐浩氏は「中国共産党による統治下で、映画スターとして稼ぐためには、中共の政治闘争にも関わらなければならない。それは(香港の民主化運動など)党の敵を憎み、党の世論操作の武器になり、民族感情を扇動するマシーンになることだ」と指摘した。

ゼレンスキー氏はダメで、イェン氏はOKなのか」

批判の対象はイェン氏のみならず、同氏のプレゼンター降板を求める声を無視したアカデミー賞の主催側にも向けられている。

ウクライナのゼレンスキー大統領も、今回のアカデミー賞受賞式へのリモート出演を求めていたが、こちらは主催側によって断られている。

ロシアによるウクライナ侵攻以来、ゼレンスキー氏は国連や各国議会をはじめ、グラミー賞やゴールデン点グローブ賞、カンヌ国際映画祭やベルリン国際映画祭など、さまざまな世界的イベントにリモート出演し、ウクライナへの支援を呼びかけてきた。

しかし、なぜか米映画の最高賞であるアカデミー(オスカー)賞だけは、昨年に続いて2年連続でゼレンスキー氏の出演を断っている。

ゼレンスキー氏への冷遇とは対照的に、今回のイェン氏への「えこ贔屓」の理由は何か。ネット上には「中国共産党と密接な関係にあるジャネット・ヤンが支配するオスカーだ。当然の結果だろう」といった声が目立つ。

アカデミー(オスカー)賞を主催する映画芸術科学アカデミーのジャネット・ヤン会長は、米映画を中国に売り込み、また中国のために米国市場を切り開いた人物であり、非常に親中的な中国系アメリカ人として知られている。

主催側は「中国共産党に屈服した」

そのアカデミー(オスカー)賞授賞式の同日、場外では著名な民主活動家である王丹氏ら約200人が抗議集会を開いた。

集会の場では、2019年に香港の民主化を求めるデモ参加者が使用してきたスローガン「光復香港、時代革命(香港を取り戻せ、時代の革命だ)」が印字された黒い旗が揺れた。また、イェン氏の画像に大きな×印が書かれたポスターも掲げられていた。

王丹氏は、1989年の六四天安門事件で弾圧された民主化運動の元学生リーダー。現在は米国に亡命し、中国の民主化を支援するシンクタンク「対話中国」の所長も務めている。

王氏は自身のSNSで抗議現場の様子を伝えるとともに「すまない。イェンの登壇を阻止できなかった」「アカデミー賞の主催側は、やはり中国共産党に屈服した」「本当に残念だ。しかし、彼ら(主催側)は必ず代償を払うことになる」と投稿した。

イェン氏の発言について、王氏は米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して、「香港人の抗議運動を暴動と中傷する彼の発言は、完全に中共の言い分だ。しかし、それは全く事実に反している」と指摘した。

また王氏は、今回のアカデミー賞授賞式でのイェン氏降板を求める呼びかけに関して「これはイェン氏個人に対する抗議であるだけではない。より大切なことは、米国民へ注意喚起することだ」という。

さらに王氏は「ハリウッドが、なぜ彼のような中共のマウスピースを映画芸術の最高の舞台に呼ぶのか。それこそが問題だ」と述べるとともに、「これは中共による米国へのイデオロギー侵略、文化侵略を許したことに等しい。つまり中国共産党に屈服したようなものだ」と、その危険性を訴えた。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。