「ウルムチ火災」が中国人にもたらしたもの【現代中国キーワード】

2022/12/10
更新: 2022/12/17

烏魯木斉
18世紀半ば、清朝が隆盛を極めた乾隆帝のころ。天山山脈の北に広がるジュンガル部を平定し、その中心である城(都市)を迪化(てきか)と名付けた。「辺境の地を、中国文明によって教化する」という意味である。

1949年9月に人民解放軍が侵入し、共産党の人民政府をつくる。53年に、中華民国の行政上の名称であった迪化市を改め、烏魯木斉(ウルムチ)市とした。ウルムチはジュンガル部の古い言葉で「美しい牧場」を意味する。4つの漢字は音だけを並べた当て字であり、特に意味をなしてはいない。

その「烏魯木斉」の名が、特殊な語感を帯びて中国全土に広がっている。
もともと遠く離れた場所(たとえば上海)にいる漢人にとって、新疆のウルムチなど、自分とは全く関係ない「地の果て」の認識しかもっていなかった。

そのウルムチで11月24日、大規模な火災が起きた。中共は「犠牲者10人」と発表しているが、それを信じる中国人はいない。中国では、事故の被害者を「10人以下」にすれば、地元の市政府が管轄する行政の範囲内で処理できる。数字を操作したな、と見るのが常識である。

上海市内の「烏魯木斉路(ウルムチ通り)」に多くの市民が花やキャンドルを手にして集まり、ウルムチの同胞の死を悼んだ。

巨大な犠牲の後であるが、中国人は今、ようやく人間の良心を取り戻しつつある。それを恐れる中共は「烏魯木斉路」の標識を外して捨てた。あまりに幼稚なふるまいである。

関連特集: 社会問題