中国は近年、空港建設のために台湾金門島周辺の海域で砂を採取し、大規模な埋め立てを行っている。「グレーゾーン」とされるこの行為に対し、台湾の議員や専門家らは、台湾海域の環境や国家安全保障に与える影響などを危惧している。
中国が建設中の「厦門翔安国際空港」(福建省)は2025年に完成する予定。完成後、同空港から台湾の金門空港までの距離は10km以内となる。約7割の路線やルートが金門空港と重複しているため、航空安全上の懸念も生じている。
同国際空港の建設について、台湾国防部のシンクタンク・国防安全研究院の蘇紫雲所長は大紀元の取材に対し、金門島の生態環境への破壊をはじめ、航空安全上の懸念や台湾の国家安全保障に与える深刻な影響などについて指摘した。
「中国の海砂採取は金厦海域(金門島と厦門市の間の海域)のみならず、大陳島でも埋め立てを行っている。これらグレーゾーンの行動は、台湾に対する軍事的脅迫であり、経済的な略奪でもある」と蘇所長は批判した。
また、中国側には金門市民の不満を煽ぎたて、その不満の矛先を台湾政府に向けさせる狙いもあると同氏はみている。
中国の空港建設が金門島にもたらす環境破壊に関しては、地元議員も警鐘を鳴らしている。
台湾通信社「中央社」によると、金門県の董森堡議員はこのほど財団法人開催のウェビナーで、中国による砂採取や埋め立てなどの影響で金門の環境はダメージを受け、周辺の養殖カキの品質が低下したと指摘した。
「中国厦門の大嶝島と台湾の金門島の最北端にある馬山観測所は、約6.8キロメートル離れていたが、埋め立てによって今では距離が約4.21キロメートルに縮まった。しかも、埋め立てはまだ続いている」と述べ、中台間の緩衝地帯が縮まることに危惧を抱いている。
台湾・健行科技大学企業管理学部の顔建発教授も「金門と厦門の距離が近ければ近いほど、中国軍が台湾入りしやすくなる」として、国家安全保障上のリスクを指摘した。
中国船が台湾海峡の中間線付近で作業しているため、取り締まりが困難だという。
米国の専門家からも批判の声が上がっている。
今年7月、米国家安全保障専門家のエリザベス・ブロー(Elisabeth Braw)氏は米誌への寄稿で、中国による台湾海域での違法な砂採取は台湾周辺海域の汚染を悪化させたうえ、台湾政府に大きな負担をかける「狡猾な行為」であると批判した。同氏はこれは中国側の「グレーゾーン侵略作戦(gray zone aggression)」の一部だと指摘した。
グレーゾーン侵略作戦とは、明確な軍事攻撃ではない手法で他国などに被害を与えることを意味する。
(翻訳編集・李凌)
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