松野官房長官の発言は岸田総理のスタンスを示すものと考えることができると思う。総裁選で岸田氏は台湾海峡にも言及していたが、口で言うことと実際に行動することは異なる。総裁選の時はあくまで一候補者だったが、今は自民党の総裁であり日本国の総理大臣だ。台湾問題は日本の安全保障にも直結するからきちんとした対応をしなければならない。今の考え方を卒業し、中国に対してしっかりとものを言い、行動しなければならない。
軟弱な外交を改め、強い姿勢を示すべき
中国は他国をいじめる国だ。このことについて誰かが言わないといけない。米軍が日本から台湾に航空機を配備すれば相当なメッセージになるし、抑止力になる。
いじめは一か所で終わらない。台湾がやられると次は日本やフィリピンなどにも来る。日本の国益という観点から見ても、台湾を守ることは日本にとって有益なことなのだ。
もし高市氏が総理大臣だったら状況は違っていたかもしれない。現状では、岸田総理が中国寄りと思われても仕方がない。少なくとも、中国共産党政権に「甘い」とみられている。
今こそ軟弱な外交ではなく、強い姿勢と行動を示すべきだ。
日本は4か国枠組み「クアッド」でリーダーシップを取れ
日米豪印の4か国からなる枠組み「クアッド」は日本が構想したものだ。そこで、クアッドにおけるリーダーシップを強化することが肝要になると思う。安倍政権であれば中国に対して厳しい姿勢を取れたと思うが、岸田政権にどこまで期待できるかは不明だ。
先週、日本のヘリコプター搭載護衛艦に米海兵隊のF35B戦闘機が発着艦を行った。このことは、日米は協力することができることを証明した。
2013年11月、オスプレイが護衛艦「いせ」に着艦したとき、私もオスプレイに乗っていた。ここで重要なのは、日米の連携が運用上作戦上できるのを示していることだ。つまり、意思表示だけではなく、実務上の連携ができているということだ。その直後、「いせ」は、フィリンピンへの災害派遣をされ、米海兵隊と大活躍された。
中国共産党の行為を放置すれば既成事実が積み重なるだけ。中国共産党は長年同じような手口で拡張を進めてきた。
日本国民は政治家の見極めを
繰り返しになるが、台湾の有事は日本の有事だ。10月31日に、衆議院議員総選挙があるが、日本の国政に送り込まれる議員が当事者としてその意識を持つか否かが重要。
日本国民は見ている。政治家がどこまで日本のことを守る意識があるのかを、台湾のことを通じて知ることができる。
日本のことを守るかと聞かれれば、すべての政治家が「守る」と言うだろう。しかし台湾のことになると、難色を示す者が出てくるかもしれない。私は、そのような政治家は議員の資格がないと思っている。なぜなら、最も根本的な安全保障を分かっていないのだから。(つづく)
ロバート・D・エルドリッヂ
1968年米国ニュージャージー州生まれ。政治学博士。米リンチバーグ大学卒業後、神戸大学大学院で日米関係史を研究する。大阪大学大学院准教授(公共政策)を経て、在沖アメリカ海兵隊政務外交部次長としてトモダチ作戦の立案に携わる。著書は『尖閣問題の起源』(名古屋大学出版会、2015年)など多数。
(聞き手・王文亮)
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