政治パーティ券の裏金問題を受け法的な追及も高まるなか、自民党は13日に全国会議員を対象に行ったアンケート調査の結果を発表した。漏れや誤記載が確認されたのは85人に上った。2018年から2022年の5年間で、総額は約5億7949万円に達したという。いっぽう、調査は資金使途さえ問うておらず「不十分」との声もあがる。
最も多額の記載漏れを報告したのは、二階俊博元幹事長で、3526万円に上った。三ツ林裕巳衆院議員の2954万円、萩生田光一前政務調査会長の2728万円が続く。
すでに除名や離党の処分が下った池田佳隆衆院議員、大野泰正参院議員、谷川弥一元衆議院議員は調査に含まれない。3名は政治資金規制法違反で起訴され、池田議員は約4800万円、大野議員は約5100万円、谷川元議員は約4300万円の記載漏れがあったとしてそれぞれ法的措置を受けている。
アンケート調査は各議員事務所に5日付で配布。8日までに回答を回収した。政治資金収支報告書への記載漏れの有無と過去5年間の未記載額に関する2つの質問からなり、使途については質問されていない。「質問項目が非常に少ない」と立憲民主の長妻昭政調会長は実効性に疑問符をつけた。
岸田政権は裏金問題を受け党内派閥解消に踏み切るなど革新的な策を講じている。いっぽう、国会では厳しい追及が続き、自民党元幹事長である二階俊博氏への約50億円もの政策活動費の脱税疑惑も浮上した。
「一時間10万円、5年50億円ありえない」
「二階元幹事長には幹事長時代の2016年8月から2021年9月の5年間これで約47億4000万円、さらに全部通算すると50億6000万円ほど支払っております」「5年間365日24時間、雨の日も晴れの日も、寝てる時も起きてる時も、1時間ごとに10万円ひたすら政治のためにお金を支出し続けた…ありえますか、ありえないです、通常。残余があるでしょう」
米山隆一衆院議員(立憲民主)は6日の予算委で、政治資金収支報告書を引用し、二階氏が受け取った金額の詳細を列挙。これらの支出が政治活動のためのものであるとしても、その使用方法について透明性が欠けていると批判した。そして、残余が雑所得として課税対象になる点を強調し、この巨額の支出に対する税務調査を強く求めた。
松本剛明総務相は、政治資金規制法における政策活動費に関する特段の規定がないことを認めつつも、政治活動に関する寄付の解釈については、具体的な事実に即して判断されるべきであると述べた。
二階氏への支払いの使途を問われた岸田文雄首相は、「党勢拡大のためと認識」と述べ、詳細な回答は避けた。加えて「法令に基づき当然に適正に取り扱われるべきであり、二階幹事長においても政策活動費や党勢拡張等に使用しているもと認識」と答えた。
国税当局者は答弁で、政治資金の提供を受けた個人が政治活動のために全額を支出していない場合、残額が雑所得として課税対象になる可能性があると説明した。
制作活動費はひとたび支払われれば、使途公開の義務がない。二階氏への活動費は議員への派閥議員の活動費や書籍代に使用されたとみられている。議員が執筆する書籍を大量購入し配布していたという。
50億円支出の使途はSNSでも話題に。在仏の実業家でインフルエンサーのひろゆき氏は「何に使ったか覚えてないけど、税金を50億円貰って、使い切ったと主張する自民党二階元幹事長。上級国民って、なんでもアリですなぁ」と呆れ気味に書き込んだ。
国会では裏金や脱税疑惑に関する野党側の追及が強まっている。5日の予算委では井坂信彦衆院議員(立憲民主)が収支報告書の訂正だけで処分のなされない議員を「裏金議員だ」と糾弾。資金の流れが政治団体宛てだと主張していれば「非課税になるなら、政治家は脱税し放題」と論じた。
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