岸田文雄首相は内閣改造を行い、19人の新閣僚を発表した。認証式を経て、第2次岸田第2次改造内閣が正式に発足する。この日は自民党役員も発表された。日中議連役員の小渕優子氏や、自民党きっての親台派・木原稔氏に、中国や台湾のメディアは“目玉人事”としてスポットをあてる。
自民党きっての親台派、木原稔氏
台湾の自由時報は、初入閣となる防衛大臣の木原稔氏を際立たせる。木原氏は台湾議員連盟「日華議員懇談会」事務局長や、自民党青年局長を歴任。自民党内でも代表的な親台派だと評する。
木原氏は議連会長の古屋圭司氏とともに台湾を訪問し、毎年台湾の国慶節の行事に参加している。今年7月初め、木原氏と古屋氏は与那国島(沖縄県)を視察し、台湾立法院の游錫堃議長と高速船で同島から台湾の宜蘭を訪れた。
台湾中央社も新組閣を受けて木原氏を特集した記事をしたためている。安倍晋三氏の一周忌法要に参加した木原氏を取材した際、「安倍氏の遺志を実現するために努力を続けるつもりだ」との言葉を紹介している。
54歳の木原氏は、安倍内閣の時にも防衛大臣政務官を務めており、今回の防衛大臣の指名は早くから予想されていた。7月中旬にシンクタンク「日本戦略研究フォーラム」(JFSS)が主催する日米台の有事シミュレーションで防衛大臣役を担い、日本が「反撃能力」を備え中国軍の侵攻に対処すると主張し、安全保障に現実的な態度を見せた。
熊本選出の衆議院議員でもあり、当選5回。台湾企業で半導体の受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)を熊本に呼び込んだことで、木原氏と台湾との関係はさらに深まった。
熊本県と高雄市は友好都市契約を結ぶ。高雄市出身で交流のある台湾の趙天麟立法委員(国会議員に相当)は木原氏の防衛相就任にお祝いの言葉を贈り、両都市のさらなる交流を楽しみにしていると述べた。
台湾メディアの一部はこのほか、外相就任まで日中友好議連会長を務めていた林芳正氏の交代についても強調して報じている。
中国と堂々と交流を続ける小渕優子
中国のソーシャルメディア新浪微博が取り上げるのは、自民党の選挙対策委員長に就任した小渕優子・元経済産業相だ。小渕氏は現在、日中友好議連事務局長を務める。
父親の小渕元首相(故人)に引き継いで中国共産党との交流を重ねている。
小渕恵三元首相と中国共産党の関係は90年代にさかのぼる。小渕氏が中国訪問時、当時の江沢民党総書記が日本側に植樹事業を提案。日本政府が100億円を捻出して「日中緑化交流基金(別名:小渕基金)」を設立した。この活動を両国間で推し進めてきたのは優子氏とされ、「中国との深い絆を築いた」人物と評されている。事業は21年3月に終了している。
在日中国語メディア、亜州通訊の徐静波社長は12日、小渕優子氏をめぐる出来事や印象をSNSの網易(ネットイース)につづっている。
「あるとき彼女は団長として、超党派の若手議員代表団を率いて中国を訪問した。北京に滞在中、当時の安倍晋三首相が靖国神社を参拝したため、中国側は高レベルの会談を一時的にキャンセルした…(略)小渕優子氏はこう述べたという。ーー日中関係が困難な時期にあるからこそ、さまざまなレベルの交流を通じて信頼関係を築く必要がある」。
徐静波氏はこのほか、駐日中国大使館で催されたレセプションや祝賀会などで小渕氏に面会しているとし、「日本の政界で数少ない中国との交流を正々堂々と続ける政治家であり、とても尊敬している」と付け加えた。
今年3月、小渕氏は呉江浩駐日大使と会談。中国大使館によれば、小渕氏は「友好の伝統を受け継ぎ」と日中友好議連の役割を強調しつつ、「議連代表団が早期に訪中し、中国各界の友人と意思相通を深めたい」との思いを語ったという。
内外が注目する2人のほか、第2次岸田第2次改造内閣では大幅な入れ替わりがあり、19人の閣僚のうち13人が交代、11人が初入閣となった。認証式を経て、正式に発足する。
自民党の役員人事も発表され、副総裁に麻生太郎氏、幹事長に第三派閥の茂木敏充氏、政務調査会長に最大派閥・安倍派の萩生田光一氏、総務会長に森山裕氏を起用した。日本の主要メディアでは、岸田氏は派閥のバランスを考慮した人事と分析する。
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