中国共産党の「戦狼」外交官、アメリカを目覚めさせた=仏メディア

2020/06/04
更新: 2020/06/04

中国武漢から始まった中共ウイルス(新型コロナウイルス)が猛威を振るうなか、ますます攻撃性が増す中国共産党の「戦狼(戦うオオカミ)」外交は、国際社会から反感を買っている。感染被害が最も大きいアメリカもその攻撃の対象となった。

国際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)は5月25日に掲載した評論文章で、中国の戦狼外交官がウイルスの発生源をアメリカ軍に責任転嫁したことがアメリカ政府の顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまい、米中関係の構造に激変をもたらしたと述べた。

米ホワイトハウスは5月20日に発表した報告書で、中国共産党の略奪的な経済政策、軍事力拡張、偽情報の散布および人権侵害など「悪質な行為」を概説したうえ、根本的な対中戦略の転換を明示した。

報告書は冒頭で、ニクソン政権時代以来の対中戦略が失敗したと認め、アメリカは1979年の国交正常化以来、「経済政治の改革を停滞させた中国共産党の意図を過小評価していた。過去20年余り、中国の改革は減速、停滞または後退していた」と指摘した。

RFIによると、この報告書は、アメリカの対中戦略が約半世紀にわたる誤りから抜け出し、完全に目覚めたことを示している。

中国の戦狼外交官、アメリカの覚醒促す

RFIの記事は、米国の覚醒は、2年前に勃発した米中貿易戦争から始まった。徹底的な覚醒は、趙立堅・中国外交部報道官がウイルスの発生源をアメリカ軍になすりつけたことが発端だったと指摘した。

米中貿易戦争が始まって以来、アメリカは中国共産党の邪悪さを認識していたが、不和は表面化していなかった。今年2月、中国共産党の情報隠ぺいや不作為によって、中共ウイルスが世界に広がり、米国は最大の被害国となった。数万人が死亡し、経済活動がほぼ停止状態になった。

一方、中国共産党は、国内のマスコミやSNS(交流サイト)を媒介に「ウイルスがアメリカ発だ」などと偽情報や陰謀論を広め、責任転嫁を企んだ。

3月12日、中国外交部(外務省に相当)の趙立堅報道官はツイッター上で、「ウイルスはアメリカ軍によって中国に持ち込まれたかもしれない」と述べた。同氏の事実無根の発言に、トランプ大統領は激怒し、「中国 (中共) ウイルス」という呼称を使った。

その後、アメリカでは中共ウイルスの犠牲者が増え続け、現在までに10万人以上が死亡し、アメリカ経済はこの感染症によって1930年代の大恐慌よりも悪い状態にあるとの予想も出ている。

トランプ大統領は4月27日、ホワイトハウスの記者会見で、中国当局による感染情報の隠ぺいが米国を含む世界各国に大きな災難をもたらしたと痛烈に批判した。中国共産党政府に対し、数千億ドルに上る賠償金を求める可能性を示唆し、その他の制裁措置も検討しているとした。

趙立堅報道官、「戦狼外交官」の代表格

中国共産党の外交官は「戦狼」と呼ばれる。これは2015年と2017年にシリーズで上映された中国の大ヒット映画「戦狼(ウルフ・オブ・ウォー)」にちなんで名づけられた。いわゆる「愛国心」で満ちたこの映画は、中国軍特殊部隊の元隊員が外国軍団と激戦を繰り広げる物語である。

このような銀幕上に映出された軍事作戦は、中国共産党の外交官によって現実化された。経済力と軍事力の増強で発言力を増すにつれて、戦狼外交官らは敵方と見なす国々に外交攻勢を強めている。中国外交部の趙立堅報道官は、戦狼外交官の代表格と見なされている。

趙氏は昨年8月、外交部報道局副局長に就任し、外務報道官として記者会見を始めた。これまでは、駐パキスタン公使参事官や駐米大使館の一等書記官を務めていた。

駐パキスタン大使館に勤務した際には、中パ関係を強めるため、自らの名前を「モハンマド・趙立堅」に変えた。駐米大使館勤務中はツイッターアカウントを開設し、アメリカのネットユーザーと論戦を繰り広げた。

RFIによると、趙氏は、中国共産党の幹部の中でそれほど地位は高くない。しかし、趙氏は挑発的な言論でアメリカを完全に目覚めさせたのだ。さもなければ、トランプ政権は未だに習政権と「静かな外交」を維持しようと、黙々とウイルスの被害を耐え忍んでいたかもしれないという。

5月13日付のドイツ経済紙ハンデルスブラット(Handelsblatt)によると、北京当局が戦狼外交に歯止めをかけないのは、こうした行動パターンが最高指導部に黙認されているからだと指摘した。戦狼外交は中国共産党の外交官を海外で挫折させただけでなく、中国と良好な関係を維持しようとする国々をも落胆させてしまうという。

中国国営中央テレビ(CCTV)は5月26日の番組で、「米国の『テナガザルたち』、香港問題でまた夢を見ている!」と題した文章を紹介し、再びアメリカを糾弾した。香港の自治権を根こそぎ奪う香港国家安全法の実施において、アメリカによる香港への支持と介入を徹底的に罵倒した。

ホワイトハウスの対中国戦略報告書は、アメリカが誤った対中政策から目覚め、正面衝突も辞さない強硬姿勢に転じたことを示した。RFIの記事は、米中は昔のような関係に戻ることはできなくなったと分析した。

(翻訳編集・王君宜)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。