中国食糧生産に隠された課題(3)

2010/11/29
更新: 2010/11/29

【大紀元日本11月29日】

農業の抗災能力が脆弱

天災がない時でも水不足が恒常化している中国では、自然災害の要素を考慮に入れれば、食糧生産の危機がもっと顕著になる。今年3月、著名な農業専門家・李昌平氏は、「経済改革後、中国の農業の抗災能力が日増しに弱くなった」と指摘した。その理由は、世界各国は皆、農家同士の共済を通し自然災害への対抗能力の増強を図っているが、中国だけは改革後、「小農家による独自経営」が最適な制度だと信じている。そのため、長年にわたり、農村の水利システムや防災システム、全体の経営システムの構築が軽視されてきた。中国では一定の食糧を産出するために使われる化学肥料や水、農薬は、世界平均の2倍に上っている。すなわち、中国の農業環境の脆弱性は世界平均の2倍で、水・肥料・種子・除草剤・農薬などの要素のなか、何か一つでも不足、或いは、人的制約を受ければ、中国の農業に巨大な損失をもたらすことになる。

今年4月、中国農業大学教授・鄭大瑋氏は、▼中国は環太平洋および中緯度ユーラシア大陸の災害多発地帯が交わるところに位置し、地震や地質災害が頻発する▼大部分の国土は大陸性季節風気候であるため、季節や年次変化が激しく、干ばつ・洪水・低温・風・雹・熱波などの気象災害が頻発する▼土地や水などの農業自然資源の1人当たりの占有量が不足しており、気候の変動に影響されやすい▼工業化と都市化が進むにつれ、農業環境の脆弱性がいっそう突出してきた、と指摘し、中国は農業災害が頻繁かつ重大な国であるとの見解を示した。

鄭教授はさらに、近年、中国で起きた農業災害における4つの新たな特徴をまとめた。▼自然資源に対する過度な利用は、資源不足の問題をいっそう深刻にさせている。その端的な例として、水資源への超過利用は、多くの地区の干ばつを深刻化させた要因となっている▼地球範囲の気候の変化は異常気候をもたらしており、気候災害が頻繁に発生し、南部は洪水、北部は干ばつという事態が起きている▼経済のグローバル化で有害生物の侵入や人獣共通感染症の罹患リスクが高まっている▼中国の農業技術の進步は緩やかで、自然災害への脆弱性がいっそう際立っている。

今年9月には、中国農業科学院の唐華俊・副院長が、気候の変化はすでに中国の農作物の分布と農業生産の構造を改変させたと指摘した。トウモロコシは災害に強いため、近年、中国ではトウモロコシの生産が急増し、第二の主食作物になったという。一方、小麦は冷害に弱く、近年、かつての2位から3位へと順位を下げた。また、土壌温度の上昇や降雨量の変化が土壌微生物の活動にも変化をもたらし、土壌の有機質含有量の減少と肥沃度の下降につながったという。ほかの研究でも、25年来の気温上昇により、中国、ベトナム等のアジア地区における稲の生長スピードが1割から2割遅くなったことを示した。

地球温暖化は病虫の農業生産への危害を増加させ、特に小麦さび病、アブラ虫、ズイムシなどの危害が増えている。また、高めの気温と段階的な干ばつは、病虫の繁殖にとって快適な気候となるため、病虫害の大発生をもたらしかねない。

中国は6年連続で食糧生産が増加しているが、作物ごとの生産量と1人当たりの生産量はそれほど高い水準ではない。特に、大豆や油の原料作物、綿花などの作物は輸入に依存しており、主食を含む各種の農作物の確保は安定していない。

中国は食糧輸入に依存していいのか

今年8月、アメリカの地球政策研究所主任レスター・ブラウン氏は、中国の食糧は長年にわたり自給自足でまかなってきたが、最近数カ月のなかで、カナダやオーストラリアから50万トン以上の小麦、アメリカから100万トンのトウモロコシを輸入したと明かした。中国のトウモロコシ輸入量は2015年には1500万トンに増加するとの見方もある。ブラウン氏はこれを、中国が主要食糧輸入国に転向する兆しだと捉えている。米国国家情報委員会の予測によると、2025年に中国は1.75億トンの食糧を輸入する必要が生じ、2030年には、その数字が2億トンに膨らむことになり、現在の世界食糧輸出量の合計に等しい。

中国の一部の経済学者は、中国には十分な食糧生産量とグローバルな市場があるため、中国に飢饉が発生する可能性は極めて低く、さらに、今後の人口の減少は「耕地18億畝のレッドライン」を守る必要性もなくなる、と主張している。しかし、世界史を紐解けば、ギリシャ・ローマ・大英帝国、どれも安定した食糧輸入を維持するために、絶対優勢な軍事強権と貿易独占を必要としたが、今の中国はそこへ至っていない。先進国の食糧輸入への依存は、市場での損得関係を考慮した「市場依存」であって、国民の生死を賭けた「生存依存」ではない。17世紀のオランダでは、工業・商業は農業より経済効率がよかったため、農業を「外注」に依存していたが、19世紀に世界金融の中心がロンドンに移転した時に、オランダは再び食糧輸入国から食糧輸出国への変身を遂げた。

(完)

注:本文は海外中国語週刊誌「新紀元」198期(2010年11月)の記事を翻訳編集したもの。

(編集・張凛音)
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