中国の高級品販売が失速 税務強化で富裕層消費が冷え込む 7月は10%超減

2026/08/21
更新: 2026/08/21

世界の高級ブランドが、中国で販売不振に直面している。中国当局による海外資産への課税強化が、株式市場やカジノ産業にも影響を及ぼし、富裕層の消費を抑えている。

ブルームバーグが取材した市場データ会社3社によると、7月、中国市場で事業を展開する主要高級ブランド25社の売上高は10%を超えて減少した。6月よりも落ち込みが大きく、年初にみられた販売拡大の勢いは急速に弱まった。

事情に詳しい関係者によると、LVMH傘下のルイ・ヴィトンとディオール、ケリング傘下のグッチ、ボッテガ・ヴェネタ、バレンシアガはいずれも売上高が2桁減となった。エルメスも販売が落ち込み、シャネルとプラダの成長率も大幅に鈍化したという。

中国経済の減速を受け、中間層が支出を控えている。高級ブランド各社は、限られた富裕層の需要をめぐる競争も強まるなか、中国市場の先行きを見通しにくくしている。

海外資産課税と越境取引規制が富裕層を直撃

今回の販売減は、中国当局が資本流出の抑制と徴税強化を進める時期と重なる。当局は越境株式取引への規制を強める一方、海外資産や投資収益をめぐり、国民に数十億ドル規模の追加納税を求めている。

こうした措置は、富裕層の消費意欲を弱める可能性がある。高級品市場は、人工知能関連株の上昇もあり、持ち直しの兆しを見せていたが、回復の勢いは長く続いていない。

上海のコンサルティング会社、フォーサイト・パフォーマンス・パートナーズの共同創業者、ジャック・ロイゼン氏は次のように話す。

「資産価格の下落と高所得層を取り巻く税務環境の厳格化を受け、VIP顧客の消費が慎重になっているとの声が小売業者から出始めている。7月の実績を踏まえれば、高級ブランド各社の経営陣が懸念を抱くのは当然である」

中国当局の新たな措置は、この10年で最大規模の越境金融取引への統制強化とされる。富裕層が資産保全や分散投資に使ってきた手段を、さらに制限する内容である。

規制強化を受け、モルガンのMSCI中国指数は前年の28.3%の上昇分の大半を失い、年初来で8.9%下落した。世界の主要市場のなかでも低調に推移している。香港ハンセン指数も上昇の勢いが鈍っている。

株価・不動産価格の低迷が消費心理を冷やす

市場の低迷は消費者心理を冷やしている。不動産価格の下落を受け、中国の富裕層は資金を株式などの金融資産に振り向けてきた。その結果、市場の変動の影響を受けやすくなっている。

カジノ産業が集まるマカオでは、6月と7月のカジノ収入が市場予想を上回る落ち込みとなった。高額賭博客の掛け金が減り、訪れる回数も減ったためである。

上海の市場データ・調査会社「百観科技(Baiguan)」の呉暁峰CEOは、「この2年間、資本市場の動きと高級品販売には一定の関係がみられる」と指摘する。

「かつては資産の大部分が不動産に滞留していたため、両者の関係はそれほど明確ではなかった」

上海で金融商品の販売に携わる37歳のステラ・リン氏は、景気低迷を受けて不要不急の買い物をやめたという。投資資産の半分以上を占める株式の価値が大きく下がり、ここ数か月は高級品を一切購入していない。

以前は夏休みの時期になるとVIP向けの催しに参加し、ブランドバッグや衣料品を購入していたという。

「損をしているので、今は気分が落ち込んでいる」とリン氏は話す。これまで高級品には年間少なくとも1万5000ドル(約230万円)を使っていたという。

「この2か月は、高級ブランド店で買い物をする気になれない。いつ消費を再開するかは、株価がいつ回復するか次第である」

他の逆風も

リン氏のような顧客の慎重な姿勢は、中国の消費市場をめぐる懸念を強めている。先月の社会消費品小売総額の伸びは0.6%に鈍化した。宝飾品や自動車など高額商品の販売は、10%を超えて減少した。

ベルナール・アルノー氏率いるLVMHは、中国の茶飲料ブランド「Molly Tea(茉莉奶白)」との商標紛争の余波にも対応を迫られている。ルイ・ヴィトンは、花柄のモノグラムをめぐる商標侵害訴訟で勝訴したが、中国のSNS上では「文化の盗用」だとする批判が急速に広がった。

7月は、猛暑や豪雨、海外旅行需要の急増も高級ブランド各社の逆風となった。いずれも来店客数と売上高の減少につながった。

ロイゼン氏は、8月が消費者心理を見極める重要な時期になるとみている。中国では旧暦7月7日の「七夕節」が高級品需要のピークの一つであり、今年は今週に当たる。

「この追い風があってもブランド各社がプラス成長を達成できなければ、成長鈍化が本格化していることを示す有力な兆候とみなすだろう」と同氏は述べた。

呉畏