かつて中国の街を埋め尽くしていた路線バスが、今、存続の危機に直面している。
近年、「バス離れ」が急速に進み、各地で路線の廃止や運休が相次いでいる。その象徴ともいえるのが、南部の巨大都市・広州で起きている異変だ。
中国交通運輸部によると、2024年の全国のバス利用者数は386億7千万人で、2015年の765億4千万人からほぼ半減した。
特に広州での落ち込みは深刻だ。2019年に1日611万人だった利用客は、2025年には249万人、2026年には244万人まで減少した。一方で、地下鉄や電動自転車の利用は大きく伸び、配車サービスも急速に普及している。
背景には、人々の移動手段の変化がある。地下鉄の整備が進んだことに加え、配車サービスや電動バイク、シェアサイクルが急速に普及し、「遅い」「待ち時間が長い」といった路線バスは利用者を失っていった。
広州のバス事業が厳しい経営状況にあることは、中国メディアも報じている。近年、路線の廃止や統合が相次ぎ、この3年間で約120~130路線が廃止または統合された。
利用者が減れば収入が減り、路線や運行本数を減らす。しかし利便性がさらに悪化し、利用者が一段と離れていく。こうした悪循環が、各地のバス会社を追い詰めている。
もともと中国の路線バスは採算が取りにくく、多くの地域では運賃収入だけでは運営費の1~3割しか賄えず、残りは地方政府の補助金に依存してきた。しかし、利用者の減少に加え、地方財政の悪化で補助金も縮小し、各地で運転手への賃金未払いと路線の運休が相次ぐようになっている。
海外Xや中国のSNSでは、バス運転手が賃金未払いを理由にストライキを行い、「給料を払え」と書かれた横断幕を掲げて抗議する様子が各地で相次いで拡散している。
各地では、生き残りをかけた試みも始まっている。杭州では18メートル級の大型バスを8メートル級の小型コミュニティーバスに切り替え、「5分間隔バス」や地下鉄との接続路線、深夜利用者向けの「夜帰りバス」を導入し、利用客の呼び戻しを図っている。
また、浙江省寧海県や遼寧省盤錦市では、路線バスが乗客を運ぶだけでなく、周辺の村へ宅配便も配送する「客貨郵一体化」の運営を試験的に導入し、収益の確保に取り組んでいる。
その影響は市民生活にも及ぶ。特に高齢者にとって路線バスは、買い物や通院に欠かせない交通手段だ。
かつて満員だった路線バスが、乗客だけでなく荷物まで運ぶようになった。その変化は、中国経済の景色が変わりつつあることを静かに物語っている。
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