中国は7月10日、ヘリウムの輸出を即時禁止した。これにより、3月にイランがカタールのラス・ラファン・エネルギーコンプレックスを攻撃したことで生産減に陥り、すでに逼迫していた世界市場から供給源がさらに一つ失われることになる。
米国地質調査所(USGS)によると、2021年から2024年までの米国のヘリウム輸入のうち、中国からの輸入割合は平均5%であった。なお、カナダが47%、カタールが28%、アルジェリアが10%を占めている。
米国勢調査局が「USA Trade Online」を通じて作成した統計(税関コード2804290010)によれば、2025年の中国からのヘリウム輸入総量は32万8千立方メートル、金額にして約340万ドルであった。
また、2026年1月から5月までの中国からの輸入量は13万7千立方メートル、金額は約270万ドルに上る。直近のデータが得られる5月単月だけでも、約116万ドル相当の5万8千立方メートルが輸入されていた。
中国商務部および海関総署は、税関コード2804290010に該当するヘリウムについて、7月10日をもって輸出を禁止すると発表した。
二文のみのこの発表には、決定の理由、期限、免除規定、移行期間に関する言及はない。今後の調整については別途発表するとしている。
今回の措置は、主要な供給国であるカタールが生産減少に苦しむ中で、中国からの供給を断つものである。また、他国から中国へ輸入され、再輸出されるヘリウムの扱いについても不透明感が漂っている。
本誌は産業用ガス大手エアガスに対し、カタール情勢の悪化に起因する供給不安を背景に、契約上の免責条項の行使や供給量の削減、また供給にかかわる追加手数料の導入の有無を問い合わせた。しかし、記事公開時までに回答は寄せられていない。
即時禁止、詳細は不明
中国当局は、特定の物品の貿易を一時的に制限または禁止することを認めた「対外貿易法」を今回の根拠として挙げた。
7月10日の措置は個別の許可を得れば輸出できるようなライセンス制ではなく、全面的な輸出禁止である。発表では対象品目に「ヘリウム」を挙げているが、特定の国、買い手、または最終ユーザーに限定するものではない。
他国から輸入され、中国国内で保管、加工、梱包、または再輸出されるヘリウムを税関がどのように扱うのかも不明である。
さらに、7月10日以前に締結された契約や、すでに通関申告済み、あるいは発送待ちの貨物に対する指示も示されていない。
医療、科学、人道目的、半導体などへの例外規定も記載されていない。
カタールの生産減少
ヘリウム市場は、中国の発表前から数ヶ月にわたり圧迫されていた。
カタールエナジーは、3月2日にイラン軍による自社施設への攻撃を受け、ラス・ラファンでの液化天然ガス(LNG)および関連製品の生産を停止した。
3月18日のさらなるミサイル攻撃により、LNGトレイン(製造設備)4および6が損傷した。カタールエナジーは、修理に3年から5年かかるとの見通しを示している。
同社は、この停止によりヘリウムの年間生産量が3億954万立方フィート減少すると試算しており、これはカタールのヘリウム輸出の約14%に相当する。
ヘリウムは天然ガス堆積層から回収され、ガス処理の過程で分離される。そのため、世界の供給量は限られた大規模な生産・処理拠点に依存している。
カタールは中国との直接貿易を拡大してきた。2025年2月には、高純度ヘリウムを中国へ供給する20年間の合意を締結しており、これはカタールエナジーにとって中国企業との初の長期直接販売契約であった。
中国の新たな輸出禁止措置はカタール国内の生産に影響を与えるものではないが、カタールの供給減が続く中で、中国の輸出システム内にあるヘリウムが海外へ流出することを阻止するものである。
半導体、MRI、航空宇宙への影響
ヘリウムは全元素中で最も沸点が低く、超電導機器を冷却するために必要な温度域でも液体の状態を保つ。また、不活性であるため、他の物質と容易に反応しない性質を持つ。
これらの特性から、一部の低温・精密用途において代替が困難である。
半導体メーカーは、制御された製造環境やその他の製造プロセスでヘリウムを使用する。病院では、磁気共鳴画像装置(MRI)の超電導磁石を冷却するために使用されている。
米国地質調査所によると、2025年の米国のヘリウム消費量のうち、22%が研究所、エンジニアリング、科学的研究、および特殊ガス用途であった。
制御された大気環境、光ファイバー製造、半導体製造で17%、MRIで15%、航空宇宙で9%を占めた。
米国は依然として主要なヘリウム生産国である。2025年時点で、米国国内の9施設が粗ヘリウムを、11施設がガス状ヘリウムを、5施設がグレードAのヘリウムを生産しており、テキサス州の3カ所では地下貯蔵も行われている。
米国半導体工業会(SIA)は連邦政府に対し、チップメーカーはヘリウムの継続的な供給を必要としており、突然の混乱は価格高騰や、代替供給源を探す間の生産遅延を引き起こす可能性があると伝えている。
中国が7月10日に発表したこの禁止措置がいつまで継続されるのか、また当局が最初の調整を行うのがいつになるのかについては、現時点で示されていない。
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