就職難と低賃金、中国の若者を直撃 打開策見えぬ経済

2026/04/03
更新: 2026/04/03

中国経済の減速が一段と鮮明になっている。外資系企業の撤退や民間企業の倒産が相次ぎ、中流層の縮小も指摘される中、社会全体は単発労働に依存する「ギグエコノミー化」の様相を強めている。官製メディアの宣伝報道では景気の好調さが強調されているものの、将来への見通しを持てない人々の間では消費を控える動きが広がり、「寝そべり」や海外移住志向も目立っている。

景気悪化の実態 賃金減少と地方経済の停滞

広西チワン族自治区の医師・李諾さん(仮名)は、「コロナ禍以降、地域経済は明らかに悪化した」と語る。現地では外資企業がほぼ撤退し、多くの住民が失業状態にある。若年層の就職難は深刻で、「どの業界も競争が激しく、ほとんど稼げない」という。

医療分野でも影響は大きく、同氏の月収はコロナ前の約2万元(約40万円)から現在は1万元未満へと半減。「広東省の一部地域はさらに厳しい状況にある」とも指摘する。

湖南省郴州市に住む謝濤さん(仮名)は、地方財政のひっ迫を背景に行政支出の抑制が進んでいると話す。公務に伴う会食や接待費は「一般的な簡易食の水準を超えてはならない」と厳しく制限され、治安維持関連の慣例的な贈答も大幅に減少したという。

また、インフラ整備の停滞も顕著だ。自宅近くでは、県道からわずか100メートルほどの道路が1年前に舗装予定とされたにもかかわらず、いまだ着工されていない。

工場縮小・店舗閉鎖 地域経済の空洞化

謝さんによると、近隣の石材加工工場では、昨年は常時3人が勤務し残業もあったが、今年は稼働日数自体が少なく、日常的に働くのは1人程度に減少。早々に業務を切り上げる日が続いているという。小規模工場の中には、旧正月後も操業再開に踏み切れない例が少なくない。

街中では閉店する店舗が増え、薬局の閉鎖も確認された。市場では空き区画が目立ち、物流関係者の間でも仕事不足への不安から、自費で車両や人員を手配して受注を確保しようとする動きがみられる。

さらに、建設・内装業に従事する労働者の間では、工事代金の未払いが長期化するケースが相次ぎ、「年末になっても精算されない」との不満が広がっている。

若年層の就職難 低賃金で生活難

四川省成都市の元公務員・施倩さん(仮名)は、「現在の若者は非常に厳しい状況に置かれている」と指摘する。大学卒業後も就職先が見つからず、仮に職に就いても月給は2千〜3千元(約6万円)程度と低水準で、家賃を払えば生活が成り立たないケースが多い。

その結果、多くの若者が実家にとどまり、保護者の年金に依存する生活を余儀なくされている。中には、保護者が小規模な商売で学費を工面したにもかかわらず、卒業後に再び家業を手伝うケースもある。

配達員や配車サービスなどの「ギグワーク」に従事する若者も増加しているが、「一時的に収入は得られても長続きせず、年齢とともに淘汰される」と施さんは指摘する。

北京市では、修士課程を修了しても就職できず、保護者に頼る若者が一般化。就職できた場合でも、コネによる採用で月給3千元程度にとどまる例が報告されている。

民間企業の苦境と外資撤退の波

施さんは、「民間企業は極めて厳しい状況にあり、生存自体が難しくなっている」と述べる。民間企業はこれまで中国の雇用の大部分を支えてきたが、その弱体化により雇用の受け皿が急速に縮小している。

外資撤退も続いており、特に米企業はほぼ撤退済みとの見方もある。一方、欧州企業は比較的残っているものの、撤退の流れは続いているという。施さんの家族も、上海の米企業の撤退に伴い職を失い、その後ドイツ企業に再就職したと明かした。

また、公務員の給与削減や支給遅延も起きており、「資金確保の必要性からだ」との見方が出ている。

消費低迷の実態 「見るだけ消費」と物価上昇

商業施設では一見、賑わいが戻っているように見えるが、実態は異なる。施さんは「多くの人は店内を見て回るだけで、実際にはほとんど購入しない」と語る。冷暖房を目的に訪れる人も多いという。

湖北省に住む温さんも、2019年以降に大型スーパーが乱立した結果、競争が激化し経営環境が悪化していると指摘。オンラインショッピングの普及も実店舗の売上を圧迫している。

物価上昇も生活を直撃しており、野菜価格は1元未満の商品がほぼ消え、公共交通機関の運賃も最低2元からとなるなど、生活コストは着実に上昇している。

大型連休中の旅行では、高速道路料金の無料化を利用して外出する人は多いものの、宿泊費を抑えるためテント泊を選ぶなど、支出を極力抑える傾向が顕著だ。

不満の拡大と情報統制への違和感

経済停滞への不満は社会全体に広がっており、公務員の間でも不満の声が上がっている。一方で、官製メディアでは景気の好調さが強調され続けており、「現実との乖離が大きい」との指摘もある。

また、海外情報へのアクセス制限や娯楽コンテンツの統制強化に対する不満も聞かれる。映画やテレビ番組の選択肢が減少し、創造性の低下を懸念する声もある。

海外志向の高まり 資産移転の動きも

こうした状況の中、富裕層を中心に海外移住を志向する動きが強まっている。子どもを先に留学させ、海外での定住の条件を整えた後、家族全体で移住するケースも増えている。

李さんは、自身の家族が約20万元を費やしてカナダのビザを取得し、孫が現地で出生した例を挙げ、「資金のある人は国外へ移動している」と語る。

一方、都市部では不動産などの資産を現金化できず、移住をためらうケースも多いが、「これまで様子見だった人々も、次第に絶望感を強めている」との指摘がある。

中国経済は依然として公式には安定成長が強調されているものの、現場では雇用不安、企業の撤退、消費低迷が複合的に進行しており、社会全体に先行き不透明感が広がっている。