アメリカ下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(The Select Committee on the Strategic Competition Between the United States and the Chinese Communist Party)」は、中国の鉱業企業が世界各地で展開する悪質なビジネスの実態をまとめた最新の調査報告書(2026年5月1日発表)を公開した。本報告書は、重要鉱物の世界的サプライチェーン支配を目論む中国企業が、中国共産党政権の庇護のもとで「鉱物マフィア(Minerals Mafia)」のように振る舞い、汚職、環境破壊、人権侵害、労働搾取を組織的に繰り返している実態を厳しく告発している。
環境災害の引き起こしと隠蔽工作
中国の国有企業傘下にあるSino-Metals社が運営する銅鉱山において、有毒な鉱山廃棄物をためておくダム(テーリングダム)が決壊する事故が起きた。その結果、酸や重金属が混ざった泥状の有毒な廃液(スラリー)が、数千万リットルという途方もない規模で周辺の川や土地へと流れ出したのである。この事故により川の魚が大量死し、近隣都市の70万人が飲料水を絶たれるなど破滅的な被害をもたらした。
さらに問題なのは、Sino-Metals社が流出量を実態(150万トン)のわずか30分の1である5万トンと虚偽報告し、被害の全容を記した独立機関による約400ページの環境評価報告書を揉み消そうとしたことである。同社は被害者に対して口止めを条件とした和解書への署名を強要し、不都合な事実を報じようとする市民団体やジャーナリストを脅迫して真実を隠蔽しようとした。
過酷な労働搾取と人権侵害
報告書は、中国企業による非人道的な労働環境や人権侵害が世界中で蔓延していると指摘している。

- ジンバブエ(リチウム採掘): 労働者は劣悪な居住環境での生活を強いられている。また、中国人管理者が賃金未払いに抗議した労働者を銃撃した事件や、窃盗を疑われた地元労働者を重機のバケットに縛り付け、宙吊りにして虐待するなどの暴力行為が横行している。
- コンゴ民主共和国(コバルト採掘): 中国の電池材料大手Huayou Cobalt社は、児童労働が蔓延する手掘り鉱山からコバルトを買い上げている。7歳の子供を含む推計4万人が、崩落の危険があるトンネルで防護服もなく働かされている。また、同国のテンケ・フングルメ鉱山では、中国企業による有害ガスの排出で住民に深刻な呼吸器疾患が広がり、数千人が強制移住させられた。
- インドネシア(ニッケル精製): Tsingshan Holdingが主導するモロワリ工業団地では「安全よりも生産を優先」する風土が根付いており、火災や爆発事故が頻発し、2015年から2023年の間に少なくとも49人の労働者が死亡している。
- セルビア(銅・金採掘): Zijin Miningの鉱山では、中国人出稼ぎ労働者がパスポートを没収され、排泄物があふれる不衛生な宿舎で週72時間以上の過酷な労働を強いられている。これは中国とセルビア間の労働法適用を除外する取り決めによって助長されている。
汚職と権力との癒着
「鉱物マフィア」は、巨大な資金力と一帯一路構想(BRI)を背景に、現地の腐敗したエリート層や権力者と結託して規制を回避している。 ミャンマー(ビルマ)では、Wanbao Miningなどの中国企業が国軍に数億ドル規模の資金を供給しており、自社の鉱山施設を軍の拠点として提供している。鉱山の警備を名目にした国軍部隊が周辺の村を焼き討ちにし、村民を虐殺する事件も発生した。アフガニスタンにおいては、タリバン政権や麻薬密売ネットワークと手を結んで採掘権を取得し、抗議する地元の長老を自らの土地で射殺するなどの暴挙に出ている。ペルーやエクアドルでも、地元警察に資金を支払って先住民の抗議デモを弾圧させ、違法な強制立ち退きを行っている。
対抗策と今後の展望
報告書は、こうした中国企業の搾取を防ぐためには、米国および西側諸国が「より良い選択肢」を提供することが不可欠だとしている。例えば、ザンビアにおける米企業KoBold Metalsは、現地での大規模な雇用創出、地元企業からの調達、学校や病院の建設などを通じて地域社会に価値を還元しており、中国の搾取モデルとは対照的な責任あるビジネスの姿を示している。
委員会は、中国依存のサプライチェーンからの脱却を進めるとともに、著しい人権侵害や汚職に関与した中国の鉱業企業や政府関係者に対し、経済制裁やビザ発給停止などの強力な措置を講じるよう提言している。
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