富士通 防衛装備庁のAI幕僚能力獲得の研究プロジェクトを受注

2026/03/11
更新: 2026/03/11

富士通は3月10日、防衛装備庁の防衛イノベーション科学技術研究所から「令和7年度 意思決定迅速化実験装置の研究試作に基づく防衛用マルチAIエージェントによるAI幕僚能力獲得の研究」を受注したと発表した。AIエージェントを活用し、自衛隊の意思決定を支援する新たな作戦支援技術の研究開発を進める。

これに合わせ、富士通はスタートアップ企業などと協働する防衛テック分野のオープンイノベーションプログラム「Fujitsu Accelerator Program for Defense Tech」を開始する。日本で防衛分野に特化したオープンイノベーション型の取り組みは初めてで、民間の先端技術を安全保障分野に取り込む狙いがある。

AIを国防分野で重視する背景には、安全保障環境の急速な変化と、AIや量子コンピューティングなどデジタル技術の飛躍的な進展がある。

現代の軍事作戦は、今の安全保障環境では、膨大な情報の収集や分析能力強化が求められ、データ解析や状況判断を補助するAI技術の導入が各国で進んでいる。世界的にAIを軍事に利用する動きは加速しており、アメリカなどの主要国でもAIを活用した情報分析や作戦立案支援の研究を重要視している。

日本政府も近年、軍事技術と民生技術を分離するのではなく、双方の技術を相互に活用する「デュアルユース」政策を強化している。今回富士通がスタートアップ企業を公募するのも、民間分野で培われたAI技術を防衛分野へ迅速に取り込むためである。

今回の研究の最大の目的は、指揮官の意思決定を支援する「AI幕僚能力」の獲得だ。AIを単なるデータ処理ツールではなく、作戦立案を補佐する参謀のような存在として活用する構想だ。研究では複数のAIが協調して推論を行う「マルチAIエージェント」の技術を用いる。異なる役割や思考を持つAIが互いに議論・検証を行うことで、多面的な分析結果を導き出す仕組みである。

想定する機能には次のようなものがある。

第一に、戦術や作戦の立案支援である。マルチAIエージェントが多面的な議論・考察を行うことで「戦い方」を創出し、指揮官の判断を補助する。

第二に、戦闘シミュレーションへの応用である。AIが戦術案をシミュレーション言語に変換し、さまざまな作戦シナリオを仮想空間で検証することで、より現実的な戦い方を導き出す。

第三に、意思決定の迅速化である。AIが膨大な情報をリアルタイムで分析することで、状況が刻々と変化する戦場環境において指揮官の判断速度を大きく引き上げる。

さらに、情報整理や状況分析などの業務をAIエージェントが担うことで、隊員の省力化にもつながると期待する。

ハルシネーションや情報漏洩への課題

一方、生成AIの軍事利用には課題もある。AIが事実と異なる回答を生成する「ハルシネーション」や、機密情報の漏洩といったリスクである。今回の研究で複数のAIが議論・検証を行う「マルチAIエージェント」を採用したのも、単一のAIによる思考の偏りを防ぎ、多面的で高度な推論を自律的に導き出すアプローチの一つと言える。

また、機密情報の扱いについては、インターネットから隔離した閉域ネットワークや専用データセンターでAIを運用する「専有環境型生成AI基盤」整備を進めている。富士通も機密データを安全に扱うAI基盤の提供を開始しており、防衛分野での活用を見据えたセキュリティ対策を強化している。

富士通は今回の開発プログラムを通じ、防衛分野における技術共創の枠組みを構築する考えだ。共創パートナーとなるスタートアップ企業などを4月10日まで募集し、5月下旬のピッチイベントを経て6月下旬に採択企業を決定する。採択企業には開発資金を提供するほか、防衛省への技術導入につながる機会も与える見通しだ。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます