令和8年5月16日(土)、東京の靖国神社内にある靖国会館で開催された「沖縄県祖国復帰54周年靖国集会」において、一般社団法人日本沖縄研究フォーラム理事長の仲村覚氏が活動報告および提言を行った。仲村氏は沖縄を巡る「弾の飛ばない戦争」の実態に警鐘を鳴らすと同時に、それに対抗するための具体的な道筋について訴えた。
認識の変化と「弾の飛ばない戦争」の勃発
仲村氏は、10数年前に靖国神社で活動を始めた当初は、沖縄の人々は左翼だという偏見を持たれており、参拝者に睨まれることもあったと振り返る。また、沖縄の人々が「先住民族」とされている問題についても、活動当初は国会議員や地方議員を含め誰も信じない状況であったが、沖縄県豊見城市議会が危機感を持ったことを皮切りに、徐々に状況が変化してきたと語る。
しかし、事態は新たな局面を迎えている。仲村氏は、去年(2025年)の10月頃からすでに「弾の飛ばない戦争」が始まっていると指摘する。その根拠として挙げられているのが、中国共産党(中共)政権の手法の明確な変化である。仲村氏によれば、中共はこれまで「裏」で動いたり、人民日報などの「マスコミ」を通じて間接的に沖縄に関する主張を行ってきた。しかしついに、中国の官僚が公式の場で直接「沖縄の人たちは先住民族である」と発言し始めたのである。これまで直接的な明言を避け、メディアなどを通して声を上げていた中国が、国家の公式な立場として表立って牙を剥き始めたことが、この「戦争」の始まりを意味しているという。
ポツダム宣言を悪用した「ナラティブ・ウォー」
現在進行しているのは、「ナラティブ・ウォー」、すなわち「ナラティブ侵略」である。中国は日本に対し「ポツダム宣言を守れ」と主張し始めているが、これは同宣言第8条に日本の領土として「琉球」が明記されていないことを利用し、日本に琉球の主権を放棄させようとする狙いがあるという。
さらに、沖縄返還の根拠ともなっているサンフランシスコ平和条約を無効とし、「日本が琉球を植民地支配し続けている」「先住民族の権利を奪っている」という物語(ナラティブ)を国際社会で構築しようとしているのである。実際に、ニューヨークの国連に「琉球独立学会」を名乗る人物たちが赴いているが、「日本に差別されている」と被害を訴える7人のうち、実に5人がアメリカ人であったという。このように、当事者ではない他者(代理)に物語を語らせる工作も進められており、従来の常識では考えられない事態が進行している。
政府の対応の限界と「我こそが沖縄を守る」という誓い
このような「ナラティブ侵略」に対する日本政府の対応には限界があるのが実情である。外務省には「ナラティブ侵略」という概念がなく、先住民族勧告問題を安全保障問題として扱うことが難しい。一方で、防衛省も国連の人権問題を扱うことはできない。つまり、この問題は両省の管轄の狭間に落ちてしまっており、政府内で正面から対応できる部署が存在しない状態に陥っているのである。仲村氏はこの状況を野球の「ポテンヒット」に例えた。
仲村氏は、自衛隊や外務省など政府の力だけでは沖縄を守り切れないとし、民間が下から声を上げ、政府を突き上げるしかないと強調する。例えば、豊見城市議会が中国共産党党首の習近平宛てに抗議文を出したように、各市町村の議会レベルで「沖縄は日本である」という決議を行うことが有効な手段となる。
結びに、仲村氏は参加者一人一人に対し、「誰が沖縄を守るかという時に、我こそが沖縄を守るんだ」という当事者意識と誓いを持つよう強く呼びかけた。日本人が分断されることなく、未来の子供たちが日本人としての誇りを持てる国を残すため、民間からの組織的・継続的な活動が求められている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。