12月10日、日本、イギリス、イタリアの3か国は、次世代戦闘機を共同開発する「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」を管理する国際機関「GCAP国際政府間機関(GIGO)」の設立条約を正式に発効した。この条約により、3か国は防衛能力の強化と国際協力の深化を図り、地域および世界の安全保障に貢献することを目指す。
GCAPとGIGOの概要
GCAP(Global Combat Air Programme、グローバル戦闘航空プログラム)は、日本、イギリス、イタリアの3か国が共同で次世代戦闘機を開発する国際プロジェクトである。
このプログラムの目的は、2035年までに新型戦闘機を配備し、各国の防衛能力を強化するとともに、技術共有と国際協力を通じて開発コストやリスクを分担することにある。GCAPは、従来の戦闘機を超える高度なAI制御、ステルス性能、センサー統合技術などを備えた新世代機の開発を目指している。
GIGOは、GCAP全体の進行管理を行い、技術や資源を最大限に活用する体制を提供する国際機関である。2023年12月に締結されたこの条約に基づき、GIGOは以下の役割を担う。
- 組織体制: 総本部と産業部門はイギリスに設置され、総本部の首席執行官(CEO)は日本から指名され、産業部門のCEOはイタリアから指名される。この役職の明確化により、3か国間の協力体制が強固になると期待される。
- 機能: GCAP全体の進行管理を担当し、各国間の調整を行うとともに、技術力や資源を最大限に活用し、相互の強みを生かす体制を構築する。また、戦闘機の第三国への輸出や技術移転に関する国際規制への対応を統一的に行う。
背景に高まる脅威と日米同盟の強化
12月10日、米国防長官のオースティン氏が東京を訪問し、石破茂首相および中谷元防衛相と会談を行った。オースティン氏は、インド太平洋地域の平和と安定を守るためのアメリカのコミットメントを再確認し、「中国が東シナ海や南シナ海で見せる威圧的な行動は重大な懸念事項だ」と述べた。また、朝鮮半島やロシアからの脅威についても触れ、日米同盟の重要性を強調した。
今回のGIGOの設立は、ロシアのウクライナ侵攻や中国のアジア地域での軍事活動強化といった安全保障上の課題に対応するための取り組みの一環である。これにより、日本は中国の軍事的影響力に対抗する能力を強化すると同時に、イギリスはインド太平洋地域での安全保障上の役割を強化することが期待される。
また、米国は日英伊3か国による共同開発を支持し、自律型システムを含む防衛分野での連携を進めている。GCAPは米国との協力の下で進行する国際プロジェクトとして重要視されている。
オースティン氏は来年1月に退任を控えており、今回の訪問が最後の日本訪問となる。この訪問は、日米の安全保障協力を改めて確認し、特にインド太平洋地域での中国共産党の軍事的台頭に対抗するための連携強化に意義を持つものとなった。
GIGO設立の影響
1. 効率的な運営体制の確立
GIGO設立により、次世代戦闘機開発のプロジェクトが制度化され、運営の効率性が向上。開発プロジェクトの遅延や不透明性を防ぎ、各国間の協調を促進する枠組みが整備された。
2. 先進技術の取得と軍事産業基盤の強化
3か国間の技術協力を通じて、日本はAI制御、ステルス性能、自律型システムなどの先進技術を取得し、防衛技術基盤を強化した。また、GIGOを通じて、国際的な防衛サプライチェーンに組み込まれ、国内防衛産業の競争力が向上。新たな雇用機会の創出も期待される。
3. コスト・リスクの分散
日英伊3か国で開発コストと技術的リスクを分担することで、日本単独で開発を行う場合に比べて財政的負担が軽減され、開発成功の可能性が高まった。
4. 国際的な安全保障体制の強化
GIGO設立により、日本はNATO加盟国である英国やイタリアとの協力を強化し、インド太平洋と欧州を結ぶ安全保障の新たな枠組みを構築した。この枠組みは、地域を超えた国際的な安全保障ネットワークの拡大に寄与する。
5. 防衛政策の多角化
GIGOは、日本が従来の米国依存から脱却し、多国間協力を深化させるための重要な転機となった。日英伊3か国の連携は、日本の安全保障政策の幅を広げるとともに、国際社会における信頼を向上させた。
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