【石平氏】中国経済「崩壊と言わずして何と言う」 若年失業率46%、不動産業相次ぎ激震

2023/08/18
更新: 2023/08/18

「若い人々の失業率は40%以上になっている。これを経済の崩壊と言わずして何と言うのか」ーー。

中国問題評論家の石平氏は8月初旬、都内の講演会でこう語った。大手不動産企業の債務不履行やゼロコロナ政策の後遺症が続くなか、中国経済は火の車だ。中国の国家統計局は上半期のGDP成長率を5.5%と発表したが、皆眉唾ものとして見ている。石平氏は習近平政権が掲げる「内需拡大」についても、中国経済の構造的欠陥により、効果は見込めないと語った。

34億人分の住宅を作ったものの

石平氏によると、中国経済を牽引してきた柱の一つは不動産業だ。「毎年の不動産開発投資はその波及効果も含めて、中国経済のおよそ3割を作り出すと言われている。マンション一つ作れば、鉄鋼産業やセメント産業、内装業、家電産業など、多くの関連産業が繁栄する」。例えば、2020年の中国の不動産投資額は14.14兆元であり、日本円にすると実に280兆円以上となる。

中国が長年不動産投資を続けてきた結果、現在では完全に「家余り」の状態となっている。「中国ですでに出来上がっている住宅がどれくらいあるかというと、34億人が住む分の住宅があると皆平気で言っている」と石平氏は弁舌を振るう。

長く続いた不動産バブルにより、一般人の多くが金融機関からの借り入れを原資に、必要以上に住宅を購入してきた。「ほとんどの人が、いつまでも値上げすると期待していた。しかし、この数年間で不動産価格はもう上がらなくなってしまった」。ロイター通信が中国国家統計局のデータに基づいて算出したところによると、中国の6月の不動産販売(床面積ベース)は前年同月比で28.1%減となり、5月(19.7%減)以上のマイナスとなった。また、不動産投資は1兆2849億元で、前年比20.6%の減少だった。減少の傾向は北京、上海、広州、深圳といった大都市にも例外なく及んでいる。

「今まで中国経済を支えてきた支柱産業がダメになってしまった。これ以上成長することはあり得ない」と石平氏。「輸出が激減し、さらに不動産投資まで減ると、雇用にも響く。リストラが頻発し、失業率はさらに高くなるだろう」

実際、中国国家統計局は今年6月の16~24歳の若年失業率は21.3%としているが、専門家は疑いの目を向けている。北京大学国家発展研究院で副教授を務める張丹丹氏は、就職難が続くなか、多くの学生は就職を先延ばしにするため、本当の失業率は46.5%に達するのではないかと考えている。「卒業すなわち失業」という言い草には、中国の大学卒業生の悲哀が込められている。

さらに、中国国家統計局は15日、若年失業率の公表を当面の間停止すると発表した。「統計作業を改善し、健全化するため」だという。国家統計局の付凌暉報道官は同日の記者会見で、「学生の主な任務は学業である。就職活動を行っている在校生を労働力統計に含めるかについては社会の意見がまとまっておらず、更なる検討が必要だ」と主張した。

国家統計局は水増しの常習犯

中国の国家統計局は今年の第2四半期のGDP成長率を6.3%と計算したが、日本をはじめ各国世論は厳しい眼差しを向けているという。

「中国国内の専門家や一般庶民は、国家統計局の数字をほとんど信用しない。水増しの常習犯だから」と石平氏は一蹴する。いっぽう、税収を担当する財務部(財務省に相当)は、税収に基づいて国家予算を決める必要があるため、その数字は一定の参考価値があるとした。

コロナ禍を経て、中国の多くの税目は減収となった。2023年上半期の国内消費税は8,272億円であり、前年同期比13.4%減だった。企業の所得税は前年同期比5.4%減で、個人の所得税も、前年同期比0.6%減だった。関税は前年同期比13.6%減となり、車両購置税は前年同期比3.6%減となった。

「輸出も、車の購入も、所得も落ち込んでいる。それでも国家統計局は経済が5.5%成長していると言っている。その数値をどう信じろというのか」と石平氏。有価証券を売り買いするときに払う証券交易印紙税は前年比3割減となったことに言及し、「半ば死んでいる」と指摘した。

個人消費、GDP比4割届かず

改革開放以降、中国経済は大きな伸びを見せた。しかし、慢性的な消費不足、すなわち内需不足は長らく解決されてこなかった。

「よく中国市場は大きいと言われる。しかし基本的にずっと消費不足だ。一国の経済に占める国民の個人消費(GDP比)の割合を計算した個人消費率という数字がある。例えば、日本の個人消費率はおよそ60%以上で、米国は70%に迫る。しかし中国の個人消費率はなんと38%。今日までの20年間で、40%に達したことは一度もなかった。米国は高すぎるが、中国は逆に低すぎだ」

石平氏によると、中国経済を牽引してきたもう一本の柱は輸出だ。コロナ以前の中国の対外輸出の伸び率はおよそ25%以上で、非常に高い数値だったという。しかし、近年では人件費の高騰により、輸出産業はインドやベトナムに猛追されている。政治的なリスク、すなわち「チャイナ・リスク」も、経済の更なる発展の阻害要因であると指摘した。

出生率、10年で半減

中国経済を長期的な目線から眺めると、もう一つの問題が浮かび上がってくる。中国では2017年あたりから、国内の出生数が毎年激減しているのだ。中国は2015年までの数十年間、一人っ子政策を行ってきた。時には強制堕胎を厭わない高圧的な政策で、国民の基本的人権を抑圧してきた。

2010年頃までは、毎年の出生数はおよそ2,000万人以上を維持していたが、2015年になると、1,665万人に減少した。危機感を覚えた中国当局は同年秋に一人っ子政策を廃止し、育児を奨励し始めた。一時的な好転は見られたものの、2018年から急激に出生数が減り始め、2020年には1200万人となった。そして2022年には初めて1000万人を下回った。

日本でも少子化は問題となっているが、状況が根本的に異なっていると石平氏は見ている。「日本でも昭和の時代から出生数は減ってきていた。日本の出生数が半減するのにかかった時間はおよそ40年だ。しかし中国ではたった10年ほどで出生数が半分まで落ちた。最新の予測だと、今年には800万人を下回る勢いだそうだ」

出生率急落の背景にあるのは、若者が将来を悲観視し、文字通り何もしないことだと石平氏は語る。「中国の若い者たちは『四つのしない主義』を貫いている。まず恋愛しない。恋愛しないため消費もしない。そして結婚もしない。たとえ結婚したとしても子どもを産まない。子どもを産まないから、家を買う必要がない。みなこのような消費生活を送っているため、不動産開発業者は当然儲からなくなる」

さらに、急速な高齢化が進む中国では労働力人口が不足し、いずれ「世界の工場」の地位をインドやベトナムに譲ることになるだろうと見られている。石平氏は「長期的な視点からしても、中国の経済成長はすぐにピークを過ぎている。10年後にどこまで落ちるか分からない」とし、「若い人々の失業率は40%以上になっている。これを経済の崩壊と言わずして、何をもって崩壊というのか」と指摘した。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
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