中共 ロボット推進を大々的に宣伝 専門家が経済構造の隠された危機を警告

2026/02/20
更新: 2026/02/20

2026年の中国中央テレビ(CCTV)春節聯歓晩会(春晩)では、複数のロボット企業が一斉に登場し、同時期には「ロボットが銃を構えて射撃するAI動画」もネット上で拡散した。 多くの専門家は、中国共産党(中共)が国を挙げた舞台を利用して、ロボットの兵器化や「軍民融合」戦略のシグナルを発していると指摘し、その背後には「軍需偏重で民生を圧迫する」という深刻な経済構造の危機が隠れていると分析している。

春晩ロボットショー登場の政治的意図

2026年の旧暦大晦日、CCTV春晩はまるでロボットによる「才能ショー」と化した。 4社のロボットメーカーが、コントや武術、歌や踊りの演目を通して集団で登場した。 ByteDance(バイトダンス)はAIクラウドのパートナーとして画面を独占し、アリババ傘下の「千問」は巨額の資金を投じて複数の衛星テレビ春晩に冠名協賛し、ネットユーザーからは「巨大な商談会そのものだ」と揶揄された。

米国・飛天大学人文学部の章天亮教授は「春晩の番組は中共中央宣伝部の重層的な審査を経る必要がある。 複数のロボット企業が同時に登場するのは番組制作側の自主判断ではなく、上層部の政治的決定によるものであり、ロボット産業が中共の重点育成国家戦略に組み込まれることを意味する」と指摘した。

銃を持つロボット動画が示す軍民融合戦略

同時期には、長年にわたり中共の軍需産業を宣伝してきたSNSアカウントが、「ロボットが銃を構えて射撃するAI動画」を投稿した。 映像には、ロボットが銃を構え、照準を合わせ、引き金を引くまでの一連の動作を行う様子が収められており、「戦闘兵隊」への一歩と受け止められている。 章天亮氏は「これは春晩でのロボットショーと前後呼応しており、ロボットの兵器化がすでに計画段階に入っていることを示している。 敵味方識別や妨害対策といった技術的なボトルネック(障害)は依然として存在するものの、方向性は明確だ」と述べた。

すでに2024年、中国兵器装備集団は珠海航空ショーで偵察装置と銃を搭載した「ロボット犬」を展示していた。 同年に行われた中国・カンボジア合同軍事演習「金龍–2024」でも、自動小銃を背負ったGo2ロボット犬が登場し、国際的な注目を集めた。 章天亮氏は「米国はロボットや人工知能の分野で技術的優位を維持し、重要なサプライチェーンの流出を防ぐ必要がある」と強調した。

巨額資金が軍民融合に流入 ソ連型モデル再現への懸念

中国メディアの報道によると、春晩に登場したロボット企業のスポンサー費用は最大で1億元(約23億円)に達し、CCTV系列のファンドも一部企業に出資している。 同時に中共は「人工知能基金」を設立し、「ロボット革新センター」を建設するなど、「新質生産力」を国家戦略の重点に据えている。

中国問題専門家の王赫氏は「中共が巨額の資金を軍需技術や軍民融合に投入している目的は、米国との間で世界的な主導権争いを繰り広げることにある。 このように民生への投資を押しのけて軍事競争に傾倒するモデルは、旧ソ連と非常によく似ている」と指摘した。

王氏はさらに「中国は現在、人口減少、若年層の高失業率、経済成長の鈍化などの構造的問題に直面している。 それにもかかわらず当局は、限られた資源を医療、教育、雇用保障ではなく、軍需産業や見栄えのするハイテク事業に優先的に投入している。 これは実質的に経済を『自殺軌道』へと追いやっている」と述べた。

また同氏は「中国企業は舞台映えや見栄えのよい『応用シーン』を追い求める傾向が強く、たとえば演出用ロボットや派手な映像作品などに熱中している。 しかし半導体のような基盤技術や本質的なイノベーションでは突破口が少なく、技術基盤は決して堅固ではない。 春晩のような高い露出度を誇る舞台で作られる“先端”イメージは、実際のところ宣伝と資本演出によって作られた幻想にすぎず、持続可能な産業基盤にはなりにくい」と述べた。

「世界一」ナラティブと政治的演出

中共当局や国営メディアは、春晩のロボット演目を「技術突破の集中展示」として包装し、複数の「世界一」を更新したと誇示している。 「未来はすでに到来した」とのキャッチコピーで、身体を持つAI産業の将来像を描いてみせた。

しかし、米国サウスカロライナ大学アイケン・ビジネススクールの謝田教授は「一部のロボットは実際には人間による遠隔操作で動かされており、自律的AIが制御しているわけではない」と指摘した。 リハーサル映像では、スタッフがリモートコントローラーを手にロボットを操作している様子が確認できるという。

同氏は「こうした演出は宣伝色が極めて濃く、実際の技術水準を反映しているとは言えない。 アルゴリズム、基幹モデル、重要ハードウェア、高度人材のいずれの面でも、中国は依然として米国に対して大きな差がある」と述べた。

南華大学国際事務・企業学部の孫国祥教授も「春晩でのロボット出演は、厳密に制御された場面での技術ショーにすぎない。 民族ナラティブと視覚効果を通じて技術先進国というイメージを演出し、経済の減速や失業率上昇による社会的焦燥を打ち消す狙いがある」と指摘した。 彼は「実質的には、国家・資本・メディアが連携して行う『テクノロジー金融総動員』であり、企業の資金調達にも、産業政策の優遇獲得にも利用されている」と分析した。

ロボット代替で拡大する失業リスク

産業面から見ると、春晩での熱狂は、ロボット業界が抱える商業的苦境を根本から変えるものではない。 ある業界関係者は「企業が巨額を投じて春晩に登場するのは、主に企業価値を押し上げ、投資や注文を呼び込むためだ 」と明かした。

社会面では、多くの専門家が警告を発している。 少子高齢化と若年層の高い失業率が進む中、大規模な「ロボットによる人の代替」は、構造的失業と所得格差を一層拡大させる恐れがある。 謝田氏は「中共が優先して考えているのは軍事的・国際的な競争優位であり、一般労働者の雇用や所得ではない。 そのためテクノロジーの恩恵は下層には届かず、労働市場の分断を深める可能性がある」と指摘した。

孫国祥氏も「投資が主に大手ハイテク企業や政府系プロジェクトに集中し、一般労働者や中小企業には資源がほとんど分配されない状況で経済が減速すれば、社会的不満は蓄積し続けるだろう」と述べた。

専門家らの見方を総合すると、2026年の春晩ロボットショーは、中共が内外の困難の中で「ハイテク・ナラティブ」を利用し、統治の正当性を再構築しようとする試みであり、同時に「軍民融合」を通じて戦略的主導権を握ろうとする全体的な路線を示していると言える。

王赫氏はソ連の例を引き、「一つの政権が長期にわたり軍需を中心とし、改革の代わりに宣伝を、内部問題の隠蔽のために対外競争を行うようになれば、どんなに華やかな「ハイテク舞台」であっても、最終的に崩壊する経済と社会の行き詰まりを救うことはできない」と警告した。

易如
李淨