被災民が語る真実「増水前に避難通告はなかった」「倉庫にある救援物資は転売される?」

2023/08/07
更新: 2023/08/07

河北省涿州市をはじめとして、人為的な「ダム放水」により水没した被災地では、依然として危機的な状況が続いている。

一時は完全水没の危険もあった涿州市だが、今では水が引き始めているところもある。しかし、後に残されたのは生活の全てを失った被災民と、膨大な泥の山であった。不幸にして亡くなった人の遺体はほとんど収容されておらず、折からの高温で顔も分からぬほど腐乱している。

飲用できる清潔な水はない。食料や医薬品も全く足りない。電気が使えないため夜は真の闇となり、通信手段であるスマホも役に立たない。衛生状態は劣悪で、伝染病などの二次災害が発生する可能性が極めて高くなっている。

そのようななか、中国各地から現地政府へ寄贈された救援物資が被災民の手に届いていないことが明らかになった。「政府関係者によって転売される恐れがある」という懸念の声が上がっている。

救援物資が被災民へ届かず、倉庫に山積み

現地政府は、各地から送られた大量の救援物資を受け取っている。だが、物資の分配において、末端の被災民にそれが届くのは極めて難しいようだ。涿州市の役人は、寄贈された救援物資を直接被災民に渡すのではなく、全て地方政府に一時預けるよう要求している。

5日、涿州市での救援活動にも参加している中国メディア「南方週末」の記者・鄭碩氏は、SNSで「天災より、人災のほうがはるかにひどい!」と怒りを露わにした。

同記者によると、涿州市には食べるごはんもない被災民が大量にいるのに、同市へ寄付されたトラック2台分の救援物資の受け入れを、市の役人が拒否したという。

拒否の理由は明らかでないが「もらっても、さばききれない」という職務怠慢からか。鄭氏は、涿州市の役人を「どうしようもない人でなしだ!」と非難した。

この日(5日)ある涿州市民は、政府の倉庫に山積みになった救援物資の様子を動画撮影し、ネット上に公開した。この撮影者によると、被災者がこれらの物資を手にすることはできないという。

「たとえ被災した村が物資の供給を申請しても、上からの許可が必要だと言われる。これらの物資は、この後何人の手を経て転売されるのだろうか」と撮影者はいう。物資が転売されれば、その売上金は市の公庫に入るのではなく、限られた役人に着服される可能性が高い。

(涿州市政府の倉庫内に、山積みされた救援物資。どこかから新たに届いた物資も、荷下ろしされているようだ。しかし、これらの物資が被災者に分配されず、転売される可能性も否定できない)

これに先立ち、救助活動に関わっているあるネットユーザーは3日、「涿州市当局は、山のような救援物資や食料を受け取っている。しかし政府当局者は『被災民にわたす物資などない』と主張している。しかも、倉庫に物資があることが外に漏れないよう、市職員には口止めしている」と明かしていた。

なぜ増水前に避難しなかったのか?

「なぜ増水前に避難しなかったのか?」。救助された河北省涿州市のある被災民(女性)は、この質問に答える自撮り動画をSNSに公開した。

「増水する前、そもそも避難通告はなかった。村のほうから、家の2階へ上がって待つように、という知らせが来ただけだ。水深2、3メートルになってやっと避難通告が出されたが、その時にはもう水に囲まれて身動きがとれなくなっていた」

「家のなかで救助を待っていると、救助隊のボートが見えたのでそれに向かっていった。この時、水深は腰から胸まであった。私たちを発見した救助隊は『後で迎えに来る』と約束したが、結局来てくれなかった」

「家に高齢者や子供がいる人は登録を済ませて救援を待て、と村役人はいう。しかし、結局今日になっても、その救援は来なかった。(涿州市ではなく)隣の市の船が見つけてくれて、救助された。そうでなかったら、私たちは今でも家のなかで立ち往生しているだろう」

「(私の村だけでも)60人以上の村民が、まだ救助されていない」。自らも被災したこの女性はそう述べて、村役人の不作為を糾弾した。

(水没から6日経っても「60人以上の村民が救助されていない」。この女性はそう述べて、村役人の不作為を糾弾した)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。