近年、中国軍の士官学校(軍校)は入学者の選抜採用点を引き下げているが、それでもなお「定員割れ」が続いており、状況は依然として改善されていない。
中国教育部の統計によると、今年の大学入試統一試験(高考)を受験した学生は1291万人で過去最高となった。いっぽう、全国に27のある軍関係の士官学校は「定員割れ」が続き、入学者はわずか1万人余りにとどまっている。
本来ならば、士官学校は学費や雑費の個人負担が不要なうえ、卒業後の就職(軍人)は100%保証されている。就職後の待遇も、景気に左右される他業種に比べて、決してわるくはない。
そのような高待遇の学校であれば、士官学校への進学は「理論上」定員割れは起こりにくいはずだ。実際、以前は確かに、若者の人気進路の1つであった。しかし近年では、志望者数が減少の一途をたどっている。
士官学校入学の冷え込みについて、当局は「学生の体力低下」や「士官学校卒業者が軍務から民間へ転職する場合、就職先探しが困難」などを理由に上げているが、ネット上ではもっと本音に近い、切実な理由が上がっている。
「戦争になれば真っ先に戦場へ送られる。そんな軍人に、誰がなりたい?」
「士官学校に入れば、西側のブラックリストに載ることになる。そうすると、いざ海外へ脱出するときに、ビザ取得に影響を及ぼすだろう」
これらは、多少露骨ではあるが、その背景にある考えは今の世相を反映しているようだ。
とくに近年、国際情勢の緊張が高まるなか、中国当局は、口を開けば「台湾統一」を強調している。
こうした宣伝報道の影響で、一般の中国人は「戦争が近づいている」ことを実感するとともに、「我が子を戦場へ送りたくない」という親の本音も現実感を帯びてくる。そうした理由から、士官学校への入学に同意しない親も少なくないようだ。
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