中国経済の低迷が続くなか、各地で公務員給与の大幅な減給、さらには各種手当やボーナスのカットおよび未払いが常態化している。今月中旬「広東省の全体公務員の給与25%削減」の話題がホットリサーチ入りするほど「公務員の減給」の話題が尽きない。
中国の経済メディア「財新網」6月29日付は、「広東省、浙江省、江蘇省など多くの省の公務員の給与が2~3割減額され、各種奨励手当もカットされた」とする報道をしたが、この文章は後に削除された。この報道によると、なかには4割減給されたところもあるという。
雪崩のように始まった「公務員の減給」
公務員に限らず、教師や医療従事者、銀行員の給与も大幅に減らされている。教師や銀行員らが抗議やストライキを起こしていたことを示す動画もネット上に出ている。上海では、退職者への手当金(中国で退職後に支給される恩給)が2カ月遅れで支給されたケースもあったようだ。
中国のとある病院に勤める医師は「ここ数カ月、同僚と交わすのは、給料が減らされた話題が最も多い。毎月もらえる手取りは、どんどん少なくなっている」と明かす。
中国の「人力資源・社会保障部」が今月5日、全国16の省における平均賃金が月2,000元(約38,800円)未満であるとの情報を発表した。それによると、最上位の上海でも最低賃金は2,690元(約52,000円)、最下位の遼寧省ではわずか1,420元(約27,500円)だった。
雪崩のように、一気に始まった「公務員の減給」。いずれは、社会の治安維持にあたる公安や警察官の報酬も、雪崩現象を免れなくなるだろう。
雇用問題を隠蔽する官製メディアの作為
中国国家統計局の付凌暉報道官は6月15日の記者会見で、「週1時間でも働いていれば、それは雇用だ」との見解を示した。もちろん週1時間の労働収入で、人々が生活できるわけがない。雇用の数字だけを操作して、実態に目を向けない当局の姿勢が見える。
雇用喪失の問題は、中国共産党政権の安定を直接脅かすものである。そのため、中国政府高層は常に「雇用の安定」を最重要課題と位置付けているが、すさまじい就職難の現実を変えることはできていない。官製メディアは相変わらず、中国における雇用状況の厳しさや、そこから生じる社会の対立を「薄らげよう」として、恣意的な報道に傾注している。
中国共産党の機関紙「人民日報」のウェブ版である「人民網」は7月5日、「我が国の雇用情勢はおおむね安定している」とする記事を掲載した。これに対し、記事コメント欄に殺到したのは嘲笑や皮肉コメントばかりであった。
「偽装就職」も暗黙の了解
深刻な就職難のなか、学校が発行する証明書(卒業証書、単位取得証明などの各種証明)を「人質」にして、卒業生に「偽装就職」させるケースが今年も繰り返されている。
中国の教育部には「2年連続で就職率が60%を下回る専攻科は縮小または停止される」という規定がある。そのため大学側は「就職している実績」を作るために手段を選んでおれなくなり、証明書の発行を希望する卒業生の「偽装就職」も黙認、あるいは暗に奨励している現状がある。
「雇用契約書」あるいは「(大学院などへの)進学受け入れ通知書」を提示できなければ卒業証書などを発行してもらえない。追い詰められた学生は、就職を偽装するしかないのだ。
機関紙「北京青年報」によると、ネット上では68元(約1,300円)で「偽装就職」を手助けするサービスまであるという。教師や一部の企業までも学生の偽装就職を手助けしている。いまや「学生の偽装就職は公然の秘密だ」と新卒者は語っている。
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