「今日のウクライナ、明日の台湾」ではない=台湾専門家

2022/03/02
更新: 2022/03/02

ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、台湾では「今日のウクライナ、明日の台湾」という言葉が散見するようになった。台湾は自国の一部だと主張する中国が近年、台湾への軍事的な圧力を繰り返しているためだ。ただ、台湾の識者らはこの見方を否定した。

「今日のウクライナは、明日の台湾ではない」

国際政治学者の汪浩氏は、台湾とウクライナは全く状況が異なるとした。「第1シーレーンに位置する台湾は地政学的に重要だ。そして、ロシアと陸続きのウクライナと違い、台湾は台湾海峡という自然の障壁を持つ。半導体製造の拠点が集中する台湾は世界にとって重要だ」などの理由を挙げた。

ただ、汪氏は「口実を作って侵攻を正当化するプーチン氏のやり方は、習近平氏が台湾問題に応用する可能性は十分にある」とした。

ロシア・ウクライナ紛争に巻き込まれたくない中国

ウクライナ問題に関して、中国政府は慎重かつ曖昧な態度をみせている。NATOの東方拡大に反対するプーチン大統領の主張を支持しているが、プーチン氏がウクライナ東部のドネツクとルガンスクを独立国家として承認したことには消極的な立場を取っている。

汪氏は、プーチン氏のこの主張を支持するなら、中国は台湾、あるいはチベット、新疆、香港の独立に反対できなくなると指摘する。

台湾・淡江大学中国研究所名誉教授の趙春山氏は、習近平国家主席にとって、今秋の第20回中国共産党全国代表大会は最優先事項であり、ロシアとウクライナのトラブルには巻き込まれたくないと分析した。

台湾国防部のシンクタンクにあたる国家安全保障研究所の准研究員・侍建宇氏は、ロシアとも欧米とも対立したくない中国は、一方を支持すれば他方から批判されるため、身動きが取れなくなっていると指摘する。中国は国際社会がウクライナを台湾と同一視することも望んでいない。ウクライナがロシアから独立した国であるのに対し、中国は台湾が自国の一部と主張しているためだ。

台湾がウクライナ問題から学ぶもの

侍建宇氏らの専門家は、台湾はウクライナ問題から「外部の力に完全に頼ってはならない」と学ぶべきだと指摘した。「自国の実力と内部の結束を高めることが最も重要である」。内部の親中派がウクライナの親露派のように、敵を招き入れるのを防ぐことが重要だという。

汪氏は、台湾はロシアのウクライナ侵攻が長引けば、アジア太平洋地域における米国の軍事力が弱体化し、中国政府が隙に乗じることを懸念している、と指摘した。同氏は、中国とロシアは第二次世界大戦の時のように軍事同盟を結ぶ可能性は低いとみている。「中国は欧米を敵に回すまでロシアを全力支持する必要がないからだ」

(翻訳編集・叶子静)