ウクライナ情勢 <オピニオン>

ロシア・ウクライナ戦争は悲劇

2022/02/28
更新: 2022/02/28

ロシアプーチン大統領は24日未明、ウクライナで「特別軍事作戦」を開始したと宣言。ロシアとウクライナの間で、ついに戦争が勃発した。これは悲劇だ。 ここでいう「悲劇」には、2つの意味がある。

第1に、ロシアとウクライナは、歴史を共有していた兄弟国で、両国とも、共産主義がもたらした傷は今も完全に癒えていない。

9世紀以降、キエフを中心に栄えたキエフ大公国は、東スラブ民族の共通の祖国とされていたが、13世紀初頭のモンゴルの侵攻により崩壊し、その後、東スラブ族はロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人に分断された。数世紀後、モスクワ大公国(後のロシア帝国)はロシアの統一を達成し、近代のロシア国家の基礎を築いた。

現代ロシアは、その形成過程からユーラシア大陸の国と呼ばれ、西ヨーロッパ諸国とは異なる文化や宗教を有している。ピョートル大帝(在位1682~1725)は西欧化を推進し、ロシアをヨーロッパの大国にした。しかし、共産主義運動が台頭し、1917年のロシア革命により、ロシアは世界初の共産主義国となり、正常な国家発展の道を断たれ、さまざまな苦難を経験してきた。

プーチン大統領は21日夜、「現代ウクライナ」の国家形成に関するテレビ演説で、「レーニンたちはロシアの歴史的領土の一部を切り離し、引き裂くという非常に乱暴な方法でロシアを統治した」と指摘し、「レーニン主義の国家原理は間違いだっただけでなく、間違いよりも悪いものだった」と、共産主義がロシアにもたらした災厄を糾弾した。

1991年、ソビエト連邦が崩壊した。独立後のロシアとウクライナは、共産主義の余毒の除去、文化の復興、経済体制の転換、政治の変革という歴史的課題に直面しながら、それぞれの発展の道を模索してきた。だが、これらの課題に対し、両国は十分に対応できず、激しく対立するようになった。今回の戦争もその表れの一つである。

第2に、ロシア、ウクライナ、米国、欧州、NATOが闘っている間、米国に代わる世界支配を目指す中国共産党が真の共通の敵であることに気づいていない。

近代以来、人類の文明の形態は激変し、飛躍的な発展を遂げた一方で、共産主義運動というマイナス要素も出てきた。わずか1世紀の間に、共産主義は何億人もの人々を殺したと言われている。その行く先々で、人々に嘘、戦争、飢餓、独裁、虐殺、恐怖をもたらし、道徳と社会秩序の完全な崩壊を引き起こした。

民主主義国家と共産主義独裁国家は死闘を繰り広げ、1990年代に社会主義陣営を崩壊させた。しかし、自由世界は勝利を喜ぶ一方、最大の共産主義政権である中国共産党の存在を過小評価していた。1989年6月4日の天安門広場虐殺事件や1999年に始まった法輪功への迫害も、西側の中国共産党に対する幻想を打ち砕くことはできなかった。中国共産党は米EUとロシアの闘いから、漁夫の利を得て、自由社会にとって最大の脅威になるまで力をつけてきた。中国共産党がすでに十分な力を持った今、国際社会はようやく目覚め始めた。

共産主義(現在の中国共産党がその主体)が人類最大の敵である。この点において、米欧諸国は共産主義を放棄したロシアと最大の共通利益を有している。米国と欧州は、ロシアを民主主義の陣営に受け入れ、ウクライナを含む旧ソ連・東欧諸国の正当な安全保障上の期待とロシアとのバランスが取れるように、時間をかけて辛抱強く支援する必要があるだろう。米国、欧州、ロシアは、NATO(北大西洋条約機構)の変革と拡大などの課題をめぐって、敵意ではなく、善意に基づいて話し合うべきである。

これは、邪悪な中国共産党政権に立ち向かうために必要なことであり、歴史を左右する重大な問題でもある。そうでなければ、中国共産党が「一つずつ撃破する」戦術で、西側諸国を切り崩し、世界征服の野望を一歩一歩実現させていくことになる。

おわりに

ロシアとウクライナの戦争は、中国の言葉にあるように「味方が悲しみ、敵が喜ぶ(亲者痛,仇者快)」である。ロシア、ウクライナ、米国、欧州、NATOなどが、戦争や憎しみに流されることなく、歴史的な観点からその関係を見つめ直し、戦略を練ることができれば、関係国にとっても、世界中の人々にとっても大きな恩恵となるだろう。

(文・王赫/翻訳編集・王君宜)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。