日本は軍事力を増強すべき=岸防衛相 中国の軍拡に危機感

2021/05/21
更新: 2021/05/21

岸信夫防衛相は19日、日本経済新聞の取材に対し、日本は「抜本的に異なる速度」で軍事力を増強しなければならないと述べた。また、防衛費のGDP比1%の枠を見直す考えも示した。その背景には、中国共産党政権の軍備拡張により、日中間の軍事バランスが年々中国側に傾いていることへの危機感がある。

日経新聞のインタビューに応じた岸防衛相は、軍事力の増強を重ね、海洋進出に積極的な中国を念頭に置いている。尖閣諸島から150キロあまりしか離れていない台湾の状況についても触れ、日本の「防衛力強化は台湾海峡だけでなく、我が国自体の問題として考えないといけない」と述べた。

尖閣諸島や南西諸島方面の防衛力の整備について、「自衛隊の空白地域をつくってはならない。島しょ部への部隊配置は極めて重要だ」と話した。さらに、中国がゲームチェンジャーになりえる宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の技術力を高めており、日本も「多次元の統合防衛力を強化」していく考えを示した。

中国人民解放軍は日本周辺の海域・空域での活動を活発化させており、日本を取り巻く安全保障環境は不安定さが増している。4月には宮古海峡を中国の空母「遼寧」打撃群が通過したほか、防衛省は尖閣諸島の周辺海域で中国船が恒常的に活動していることを確認している。

2021年3月、中国の全国人民代表大会(全人代)で公表された2021年度予算案によれば、国防費は前年比6.8%増の1兆3500億元(約22兆円)となった。しかし、米国防省は、実際は公表された値より2兆9000億円以上多いと分析する。

4月、米国の首都ワシントンで行われた菅義偉首相とジョー・バイデン大統領の首脳会談後に発表された共同声明では、「日本の防衛力強化の決意」が明記された。また、台湾をめぐる緊張の高まりについて半世紀ぶりに言及し、中国の海洋進出に対する懸念も共有するとした。

バイデン大統領は5月19日、コネチカット州に位置する沿岸警備隊学校でのスピーチで、台湾と米沿岸警備隊の連携・協力について触れた。双方の「連携は、私たちが直面する共通の脅威に対応し、人道的および環境的任務を遂行する立場にあることを確実にする」とバイデン氏は述べた。

大統領はスピーチのなかで、「航海の自由のような長年の基本的な海事の原則は、世界経済と世界の安全保障の基盤だ」と語り、中国やロシアなどによる破壊的な行動で、既存ルールが挑戦を受けているとした。また、「独裁者の価値観ではなく民主主義に基づいて、それら(ルール)を形作らなければならない」と強調した。

(佐渡道世)

関連特集: 日本の防衛力