つつめどもかくれぬものは夏虫の身よりあまれる思ひなりけり
2021/07/28
書き終えて切手を貼ればたちまちに返事を待って時流れだす
2021/07/26
行きなやむ牛の歩みに立つちりの風さへあつき夏の小車
2021/07/25
夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ
2021/07/24
風は清し月はさやけしいざともに踊りあかさむ老いの名残に
2021/07/23
わぎもこが汗にそぼつる寝より髪夏の昼間はうとしやと思ふ
2021/07/19
防人に行くは誰が背と問ふ人を見るがともしさ物思もせず
2021/07/18
めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に雲隠れにし夜半の月影
2021/07/15
葛飾の真間の手児名がありしかば真間の磯辺に波もとどろに
2021/07/14
筒井筒井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに
2021/07/13
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
2021/07/12
夏と秋とゆきかふ空のかよひぢはかたへ涼しき風や吹くらむ
2021/07/10
蓮葉のにごりに染まぬ心もてなにかは露を玉とあざむく
2021/07/08
よられつる野もせの草のかげろひて涼しくくもる夕立の空
2021/07/06
夏麻引く海上潟の沖つ洲に船はとどめむさ夜ふけにけり
2021/07/02
音もせで思ひに燃ゆる螢こそ鳴く虫よりもあはれなりけれ
2021/07/01
垂乳根の母が釣りたる青蚊帳を清しと寝つたるみたれども
2021/06/29