豪駐日大使 中共の軍拡・経済的威圧に警鐘 日豪防衛協力の強化訴え

2026/09/10
更新: 2026/09/10

オーストラリアの新駐日大使、アンドリュー・シアラー氏は9月9日、東京都内で開かれたイベントで、中国共産党(中共)がアジア太平洋地域で進める軍備拡張や経済的威圧は、オーストラリアや日本などの民主主義国への脅威を強めていると指摘した。

国家安全保障分野の要職を歴任したシアラー氏は、インド太平洋地域の平和と安定を守るため、日豪両国がエネルギー、防衛、先端技術、情報分野で協力をさらに深める必要があると強調した。

日豪防衛協力への北京の批判に反論

シアラー氏は9日、日本記者クラブで会見した。日経アジアによると、質問は主に中共をめぐる地域情勢に集中した。

日本とオーストラリアが最近合意した極超音速兵器をめぐる防衛協力について問われると、シアラー氏は、これを「危険」と批判した北京の主張に反論した。

シアラー氏は、日豪両国は「一貫して地域の平和と安定の維持に取り組んできた」と述べ、日本がインド太平洋の安全保障でより積極的な役割を担う方向へ政策を転換していることについて、「オーストラリアは歓迎し、支持している」と語った。

両国は8月中旬、新たな防衛協力で合意した。日本がオーストラリアで極超音速兵器の試験を行うほか、レーザー技術を使って脅威を探知する防衛協力プロジェクト「ブーブック」を共同で進める。

中共は近年、軍事力を拡大し、地域の緊張を高めている。今年7月には、潜水艦から核兵器を搭載可能な弾道ミサイルを海上に向けて発射し、太平洋島しょ国で懸念が広がった。オーストラリアなど地域各国は先週の太平洋諸島フォーラム(PIF)首脳会議の声明で懸念を表明した。

経済的威圧や民主主義国へのスパイ活動に警戒

日豪など自由民主主義国が直面する別のリスクについて、シアラー氏は「外国による政治制度や社会への干渉、先進民主主義国を標的としたスパイ活動は、世界的に深刻さを増す脅威となっている」と警告した。

具体的な国名は挙げなかったものの、ソーシャルメディアやサイバー攻撃を利用し、「われわれの政治制度に影響を与え、社会に不和の種をまき、同盟国との間に亀裂を生じさせようとする動きがある」と指摘した。

オーストラリアは2018年6月、「国家安全保障法改正法(スパイ活動・外国干渉)」と「外国影響力透明化法」を成立させた。中共による影響力拡大や浸透への懸念が高まるなか、数十年ぶりとなる大規模な反スパイ法制の改革だった。

シアラー氏は、日豪には地理的、歴史的、文化的な違いがあるものの、両国とも中国との関係を維持し、協力を続けることを望んでいると説明した。中国との関係では、主に経済・商業面での協力を重視しているとの認識を示した。

一方、オーストラリアも日本と同様、中共による経済的威圧を受けてきたと指摘した。

中共商務省は9月8日から、日本から輸入される半導体の製造に使う化学物質「ジクロロシラン」に暫定的な反ダンピング措置を発動した。中共はこれまでにもレアアースやエンティティーリストなどを対日圧力に利用しており、今回の措置も日本の半導体供給網に対する新たな圧力との見方が出ている。

エネルギーから防衛まで 日豪の戦略的協力を強化

中共による脅威に警鐘を鳴らす一方、シアラー氏は、日豪を「不可欠なパートナー」と位置づけ、両国がさらに協力を広げるべきだと強調した。

現在、両国は貿易・投資、エネルギー・食料安全保障、科学技術、インフラ、サイバーセキュリティ、防衛、情報、教育、文化など、幅広い分野で協力している。

シアラー氏が特に重視したのがエネルギー安全保障だ。

オーストラリアは日本にとって最大のLNGと石炭の供給国で、日本の電力供給の相当部分を豪州産のLNGや石炭が支えていると説明した。金融危機や新型コロナの流行、世界的な混乱が続いた時期にも、オーストラリアは日本へのLNG供給を維持してきたと強調した。

防衛分野では、オーストラリアが次期汎用フリゲート艦の導入計画で、日本の「もがみ型」護衛艦の能力向上型を採用する方針を決めたことにも言及した。

日豪両国は人、AI、量子技術、サイバーセキュリティ、宇宙分野でも協力を進めている。海底ケーブル、データセンター、5G・6G通信網、再生可能エネルギー送電網など、重要インフラやサプライチェーンの強靱化にも共同で取り組む。

重要鉱物では、レアアースやガリウムなどについて、より安全で安定した供給網の構築を進めている。

シアラー氏は、日豪の防衛力強化は対立を目的とするものではなく、紛争を抑止し、自由で開かれたインド太平洋を維持するためだと強調した。

李皓月