中共は米大統領選に介入したのか トランプ氏発言の根拠と動機

2026/07/22
更新: 2026/07/22

論評

トランプ米大統領は7月16日、中国共産党(中共)が2020年米大統領選に介入したと指摘した。その根拠は何か。中共には介入する動機と能力があったのか。

CBSはファクトチェックを行い、トランプ氏の主張に反論した。CBSの結論は、複数の情報機関による評価、監査、裁判での訴訟のいずれにおいても、外国による介入が2020年の選挙結果を変えたことを示す証拠は見つかっていない、というものだった。

しかし、ここには論点のすり替えがある。トランプ氏が述べたのは「介入」または「介入の試み」であり、CBSが検証したのは「介入が選挙結果を変えたかどうか」である。つまりCBSは、中共による介入の有無そのものを否定したわけではない。介入が選挙結果を変えた証拠はない、と述べているにすぎない。

有権者情報の窃取

一部では、これらの情報は確かに中共に取得されたが、「盗まれた」という表現は正確ではないとの見方がある。多くの州の有権者情報は公開情報であり、2州では誰でも閲覧できる形でオンライン上に掲載されていたからだ。

しかし、トランプ氏とホワイトハウスの声明はいずれも、米情報機関が2020年の時点で「18州における数千万件の有権者情報が、中国によって購入、窃取、またはハッキングで侵害された」と把握していたと述べている。つまり、ハッキングだけがあったかのように国民を意図的に誤解させるのではない。公開情報の購入や盗取も含めて指摘していたのだ。

ホワイトハウスが同時に公開した情報機関の文書には、日時や場所が明記された具体的な事例も含まれている。漠然とした非難ではない。

たとえば文書では、2022年1月14日、中共と関係のあるハッカーが、6州で一般に公開されていた有権者登録情報を商業サイトからダウンロードしたとされている。この6州はコロラド州、コネティカット州、フロリダ州、ミシガン州、ロードアイランド州で、後にオクラホマ州が加えられた。一方、ハッカーはオハイオ州の情報をダウンロードしようとしたが失敗した。

これらの事実は、対象となった情報が公開情報だったことを示している。文書によれば、2013年から2021年までは一括ダウンロードが可能だったという。しかし、本来の目的はおそらく一般市民による照会であり、外国政府による一括取得のために用意されたものではない。2022年以降はダウンロードできなくなった可能性がある。オハイオ州でのダウンロードが失敗したのも、同州のサイトが何らかの保護措置を取っていたためかもしれない。

したがって、公開情報をダウンロードしたからといって、必ずしも合法とは限らない。公開情報であっても、敵対的な外国政府が一括で取得することは、本来の目的から大きく外れている。これは、民主社会の公開性と透明性の隙を突いた行為だ。

中共が関心を寄せていたのは、2020年大統領選だけではない。ある情報文書では、中共が2024年米大統領選で標的を絞った介入工作を行う可能性について分析している。重点は激戦州、有権者情報の共有、選挙監視計画に置かれていた。

この報告書は、2024年米大統領選を監視し、影響を与えることを目的とした行動に言及している。こうした行動は、激戦州や選挙プロセスに関わる可能性がある。

アメリカの州政府機関から共有された有権者登録情報は、データの安全性と選挙の公正性に対する懸念を引き起こした。また、中共が激戦州での行動に関与する計画を立てていたことは、中共が2024年の大統領選または連邦議会選挙の投票結果を観察、または影響しようとする意図を持っていたことを示している。

別の文書は、中共ハッカー集団APT31が2020年大統領選に介入した詳細を明らかにしている。5月20日までに、APT31は大統領選陣営のメンバーのGoogleアカウントにフィッシングメールを送信していた。6月4日には、GoogleがAPT31が大統領選関係者を標的にしていたと発表した。

このAPT31は中共国家安全部の傘下にあるハッカー集団で、過去にはイギリスの選挙管理システムに侵入し、イギリス有権者4千万人分の個人情報を流出させた。関係者や関連企業は英政府から制裁を受けている。

CIAは、2018年から2020年にかけて、中共がアメリカのシンクタンク、学界、元政府高官に働きかけ、中国旅行の費用を負担するなどして、米企業や個人に対中関税をめぐり大統領へ圧力をかけさせようとしたとまとめている。

記者の買収

2019年半ばごろ、中共当局は米国民の大統領に対する信頼を低下させ、さらにビジネスリーダーらを大統領に反対させることに力を注いでいた。中共は、米大統領に関する否定的な報道を行った米国人記者を探し出し、資金を支払い、米大統領に関する否定的な記事をできるだけ多く書かせようとしていた。

ホワイトハウスの文書では具体的な記者名は示されていない。このため、アメリカの世論からは、政府に対して調査を行い、記者の名簿を公表するよう求める声が上がっている。

中共がアメリカの記者やメディアを買収することは、決して新しい話ではない。中共は過去に、アメリカの多くの主要メディアに対して、中国大陸であらかじめ組版された紙面を提供し、広告費の名目で資金を提供していた。紙面のレイアウトは特定メディア自身の形式とほぼ同じで、読者がそのメディアによる通常の記事だと誤認しやすい形になっていた。法律に従い「有料広告」と表示されていたものの、その文字は極めて目立たない場所に置かれていた。

それが単なる中共のイメージ向上のための宣伝にとどまるならまだしも、資金を支払って米大統領をおとしめる記事を書かせるとなれば、米国内政への干渉そのものである。

なぜ有権者情報を盗むのか

調査報道記者であり、Just the Newsの創設者でもあるジョン・ソロモン氏は、「ファクトチェックのファクトチェック」と題する記事を書いている。それによれば、大統領が演説を行う前、CIA、NSA、国家情報長官室、FBIは、演説に含まれる一字一句を確認し、承認していたという。その中には、中共が情報を入手した手段について「購入、窃取、ハッキング」とする表現も含まれていた。ソロモン氏は、これを自ら目撃したとしている。

ソロモン氏によれば、NSAは中共が商業データを「購入」したとされる7州を確認した。その後、2023年には、より大規模な2億2千万件分の有権者情報について、「侵入された」または「流出した」と表現した。この2つの言葉は、情報機関が違法に取得された情報を説明する際に用いる用語であり、合法的に購入された情報を指すものではない。

2022年に機密解除されたNSAの報告書によると、中共側のCNE、すなわちネットワークを通じて情報を収集するサイバー部門の一つが、2022年にアメリカの有権者登録情報プロジェクトを新たに担当することになった。こうした部門は、合法的なデータ購入を行う組織ではなく、ハッキングを担う組織である。

ソロモン氏は決定的な証拠も示している。Ballotpediaの資料によれば、多くの州が情報を販売する際に提供するのは、氏名、住所、政党、投票履歴といった基本情報に限られる。社会保障番号を提供する州はなく、生年月日を完全な形で提供する州もほとんどない。また、商業販売される情報の中に電話番号を含めない州も半数近くに上る。

しかし、ホワイトハウスが公表したNSAの資料には、2023年までに中共が取得した有権者ファイルに「生年月日」と「電話番号」が含まれていたと明記されている。これは、中共が得た情報の少なくとも大部分が、合法的なダウンロードや購入によるものではなく、違法に取得されたものであることを示している。

今回、ホワイトハウスはトランプ氏の主張に関する多くの文書を同時に公開した。いずれも機密情報を黒塗りした公開版ではあるが、主要な内容は読み取ることができる。これらの文書は分類され、まとめて公開されており、誰でもダウンロードできる。米情報機関によるこれらの文書こそが、今回のトランプ氏の演説の根拠である。

動機は米国政治への影響

この問題で最も重要なのは動機である。情報分析では、これらの情報が米国政治、選挙を含む政治過程に影響を与える目的で利用される可能性があることは認めている。しかし、本当の動機は明らかではないとしている。

中共は米国にとって最も重要な対立相手である。では、中共はなぜアメリカの有権者情報を必要としたのか。米国が中共を「対立相手」と呼ぶのは、かなり控えめな言い方である。中共は米国を事実上の敵対相手と見なしている。

中共がアメリカの経済、軍事、科学技術に関する情報を盗むのは、少なくとも追い越し、米国に対抗し、最終的には米国を超え、さらには置き換えるという理由で説明できる。その理由は正当ではないにせよ、情報窃取の動機としては説明がつく。

しかし、有権者情報は完全に米国内政に関わるものである。中共当局がアメリカの有権者情報を入手する理由として考えられるのは2つしかない。好意的に見れば、アメリカの選挙制度を学ぶためだという説明もあり得る。しかし、それは成り立たない。選挙が重要なのは、民主主義の基礎だからであり、制度そのものが重要なのであって、有権者個人の情報が重要なのではない。まして中共はこれまでも、そして今後も民主選挙を行うことはない。

したがって、有権者の個人情報が中共にとって持つ用途は一つしかない。米国選挙への介入である。

機密解除されたある情報報告書も、これらの情報を取得した真の動機は依然不明だとしつつ、外国の敵対勢力が理論上、氏名や住所などの個人情報を利用し、将来、標的を絞った偽情報工作や選挙介入を行う可能性があると指摘している。

アメリカの著名な保守派政治評論家グレン・ベック氏は、次のように指摘している。多くの州は、有権者情報はあまりに機微でプライバシー性が高いとして、連邦政府への提供を拒んでいる。それにもかかわらず、敵対的な外国政府がそれを盗んだ途端、メディアの口ぶりでは大した問題ではないことになってしまう。これはなぜなのか。

2020年米大統領選に対する中共のその他の介入行為について言えば、その動機は非常にはっきりしている。トランプ氏の再選を阻止することだった。長年、米政府の宥和的な対中政策に慣れていた中共にとって、トランプ氏の「米国第一」政策は想定外だった。対中関税によってアメリカの製造業と雇用を守り、国内回帰を促す政策は、中共を困惑させた。

中共は「すでに証明済み」と主張 いつ証明されたのか

中共外務省報道官はいつものように否定した。林剣は記者の質問に対し、米側の主張は完全な捏造であり、悪意ある中傷で、すでに根拠のない話だと証明されていると述べた。さらに、米大統領選に干渉する関心もなく、過去に干渉したこともないと主張した。

しかし、この「すでに証明されている」が何を指すのかは分からない。そもそも介入を証明することですら容易ではない。まして「介入していない」ことを証明するのは、ほぼ不可能だ。

動機の面から見れば、中共がアメリカの消費者情報を盗むなら、そこには経済的価値がある。しかし、経済的価値のない有権者情報を盗む疑いがあるなら、その目的は選挙介入と見るのが自然である。

当時はロシアによる選挙介入ばかりが語られていた。しかし実際には、より深刻な脅威だったのは中共だ。中共によるアメリカ政治への浸透、影響力、そして介入能力は、ロシアをはるかに上回っている。

トランプ氏の今回の演説は、名指しこそしていないものの、習近平に対するトランプ氏の本音をうかがわせるものでもある。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
横河
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