困ったことがあれば行政に相談する。それは本来、市民の当然の権利だ。しかし中国では、その相談歴が後になって不利益につながることがある。
上海では、行政への苦情を理由に、マンション管理組合役員選びで最多得票だった住民が落選し、批判が広がっている。
上海市のあるマンション管理組合(業委会)の役員選びで、住民の石氏は157票を獲得しトップとなった。しかし、その後の地域管理組織による審査で落選した。
公開された住民と地域管理組織の担当者との会話録音では、「市長ホットライン『12345』へ何度も相談したことが理由なのか」との質問に対し、担当者は「そういう基準だ。「12345」や陳情を繰り返す人を優先して選ぶ理由はない」と認めた。さらに、「辞職を主導した」「管理に従わなかった」ことも落選理由に挙げたという。
「12345」は、中国の「市長ホットライン」と呼ばれる、市民が行政に苦情や相談を寄せる窓口だ。ところが、その利用歴が役員候補の審査材料になっていたことが明らかになり、批判が噴出した。
中国のSNSでは、「どの法律に『行政へ苦情を言った人は立候補できない』と書いてあるのか」「最初から従順な人しか選ばれない仕組みだ」「声を上げた人から排除するなら、誰が行政を信じるのか」といった声が相次いだ。
同様の事例は各地でも起きている。中国メディアによると、「12345」に相談した住民が管理会社から目を付けられたり、マンション管理組合役員への立候補を控えるよう求められたりしたケースが相次いでいるという。
行政への苦情は本来、社会をより良くするためのものだ。しかし、その結果として不利益を受けるのであれば、人々はやがて声を上げなくなる。今回の騒動は、中国社会に広がる「沈黙」の理由を物語っている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。