トランプ氏 台湾・イラン情勢を巡る緊張のなか北京に到着 重大な首脳会談へ

2026/05/14
更新: 2026/05/14

トランプ米大統領は5月13日、約9年ぶりとなる中国訪問のため北京に降り立った。台湾、イラン、テクノロジー、地域安全保障を巡る緊張が続くなか、中国共産党(中共)政権は今回の訪問を前に、米国との「平和共存」というお決まりのレトリックを再燃させている。

中共政権は5月10日、トランプ氏が5月13日から15日まで国賓として訪中し、中共党首・習近平と会談することを認めた。両首脳による対面での会談は、2025年10月に韓国で行われて以来となる。

訪中の発表に先立ち、中国外交部はX上に「平和共存」と題した短い動画を公開し、米中両国に対し「誠実さと善意を持って関与すること」を呼びかけた。

動画の中では、習近平や中国当局者が長年用いてきた「地球は中国と米国が対立し争うには小さすぎ、太平洋は両国がそれぞれの方法で繁栄するのに十分な広さがある」というフレーズが繰り返された。

習氏は2013年のオバマ大統領(当時)との会談でも同様の表現を用いている。以来、中共政権は二国間関係を議論する際、このスローガンを繰り返し引用してきた。

台湾の国防安全研究院(INDSR)の鐘志東(ウィリアム・チュン)副研究員は、大紀元(エポックタイムズ)に対し、中共政権のメッセージは、東太平洋では米国が支配し、東アジアでは中国が主権を握るという、太平洋における「勢力圏」を構築しようとする長年の試みを反映していると指摘した。

「それが中国の戦略的野心だ」と鐘氏は述べた。「しかし、この手法がトランプ氏に通用する可能性は低い」。

鐘氏は2025年の米国家安全保障戦略を引き合いに出し、「第一列島線」の強化と中国の地域的拡大への対抗が強調されている点に触れた。トランプ氏は西半球における中国の影響力を阻止し、インド太平洋における米国の優位性を維持しようとしている、と同氏は分析する。

また、鐘氏は、日本をはじめとする多くのアジア諸国が、中国への対抗軸として地域における米国の強力な存在感を引き続き支持している点にも言及した。

ドナルド・トランプ大統領は、2026年5月12日、メリーランド州アンドリュース統合基地でエアフォースワンに搭乗する際に手を振った( Alex Wong/Getty Images)

同じく国防安全研究院の蘇紫雲氏は、中国外交部の動画について、中国を平和的で信頼できる国際的アクターとして描写するための戦略的な情報発信であると述べた。

「短期的には、こうしたメッセージングには戦術的な価値があるかもしれない。しかし、長期的には、民主主義陣営と権威主義体制との構造的な競争は残る。それは中共政権が克服できない根本的な課題だ」と蘇氏は語った。

新華社通信の5月11日の報道によれば、中国公安部は、4月に行われた国境を越える薬物密売事件に関する米中共同の麻薬対策作戦を強調した。

米国を拠点とする中国時事評論家の王赫(ワン・フー)氏は、中共政権のこうした姿勢は多分に象徴的なものだと大紀元に語った。

「『平和共存』の呼びかけや限定的な協力は、主に表面的なものに過ぎない。根底にある緊張関係を変えるものではない」と王氏は指摘する。

2025年11月18日、北京にある中国外交部の建物の外で、準軍事警察官が警備にあたっている(Pedro Pardo/AFP via Getty Images)

台湾とイランが議論の中心となる見通し

新華社通信によると、中国外交部の郭嘉昆報道官は5月12日の記者会見で、米国の台湾への武器売却に改めて反対し、中国の立場は「一貫しており明確だ」と述べた。

トランプ氏は5月11日、ホワイトハウスの大統領執務室で、今回の訪中において台湾問題について議論する意向を示した。また、投獄されている香港のメディア王で民主活動家の黎智英(ジミー・ライ)氏の問題についても、中国当局に再び提起すると述べた。

鐘氏は、両国がそれぞれ異なる地域の火種を交渉の「レバレッジ(てこ)」として利用する可能性が高いと見ている。

同氏によれば、中共政権の優先事項は依然として台湾海峡であり、一方で米国はホルムズ海峡とイランに焦点を当てているという。

「トランプ氏は、中国がイランに対して米国とのより広範な合意に応じるよう圧力をかけることを望んでいる。一方、中国はこれらの議論において、台湾を交渉材料に使おうとする可能性がある」と鐘氏は述べた。

米財務省は5月11日、イラン産原油の中国への輸送を支援したとして、12の個人および団体に制裁を科した。対象には香港、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーンを拠点とする企業が含まれている。

同日、米司法省は、カリフォルニア州アーカディア市の中国系アメリカ人市長、アイリーン・ワン氏が、中国のための不法な代理人として活動した罪を認め、辞任することに同意したと発表した。

鐘氏は、こうした出来事が両国関係の敵対的な性質を浮き彫りにしており、首脳会談で大きな突破口が開かれる可能性を低くしていると述べた。

「米国は中国の反対を理由に台湾への武器売却を止めることはない。むしろ、台湾が自衛能力を強化することをますます奨励している」と同氏は指摘する。

かつての米ソ冷戦時代のように米中が完全に経済的に切り離される(デカップリング)可能性は低いものの、インド太平洋における戦略的競争は激化するだろうとの見通しを示した。

台湾の台中市で行われた春季軍事演習で、ブラックホークヘリコプターからロープ降下する台湾軍兵士たち。2026年1月27日(Photo by I-Hwa Cheng/AFP via Getty Images)

台湾問題に関し、王氏は、トランプ氏が武器売却で譲歩する可能性は低く、中国側も米国から「台湾独立反対」へのより強い言質を得ることは難しいだろうと述べた。

「大きな突破口はないと予想している。この首脳会談は、将来の交渉に向けた予備的な段階としての意味合いが強いだろう」と王氏は語った。

蘇氏は、米国にとっての台湾の重要性を考慮すれば、トランプ氏の中国に対する広範な戦略的枠組みが変わることはないだろうと述べた。

「半導体だけの問題ではない。台湾の地理的地位は代えがたいものだ。本質的には、これは米中間の海洋覇権争いなのだ」

蘇氏によれば、中共政権は米国の対台湾政策を根本的に変えることはできないと理解しており、その代わりに時間をかけて段階的な変化を迫る、漸進的なアプローチを採用しているという。

2026年1月27日、台湾の台中市で、台湾兵が軍用無人航空機の横に立っている( I-Hwa Cheng/AFP via Getty Images)

また、蘇氏は、台湾は外部の保証だけに頼るべきではないと警告した。

「台湾は最終的に自らの防衛力を強化する必要がある。習近平が台湾を攻撃するかどうか、あるいは米国が武器を売ってくれるかどうかを絶えず心配するのではなく、台湾自身が成熟し、自己強化に集中する必要がある」

中国関連の話題に焦点を当てる大紀元の寄稿者です。