中国経済の低迷が続くなか、高学歴の若者たちが次々とスマートフォン向けショートムービー制作の世界に参入している。金融や教育など、かつて安定職とされた分野が相次いで縮小する一方で、この業界だけが例外的に拡大していることが背景にある。
2025年、中国のショートムービー市場は約500億元(約1兆円)規模に達し、年間の映画興行収入を上回った。俳優や脚本家、撮影、編集、配信運営などを含め、130万人以上の雇用を生み出した。
北京の名門大学で金融を学び、アメリカへの留学経験もある女性は、証券会社での実習中に相次ぐリストラと給与削減を目の当たりにした。将来像を描けなくなり、スマートフォン向けショートムービーへの出演へと方向転換したのである。1年足らずで20本以上に出演し、金融業界に戻る考えはなくなったという。
同様の選択は珍しくない。文学の修士号を持つ26歳の男性は、「卒業時に増えていた仕事はショートムービーくらいだった」と語る。撮影は長時間に及び、演じる役も毎回ほぼ同じ設定のものばかりだが、他に現実的な選択肢はなかったと話す。
しかし、現場の空気は楽観的ではない。大学院卒のエキストラ俳優によると、主演クラスの日給はかつての1万元(約20万円)から、現在は2千元台(約4万円)まで下落した。通行人役などの報酬は1日100元前後(約2千円)にとどまり、10時間を超える撮影も珍しくないという。
このため、ショートムービーを「一時しのぎ」とみなす若者も多い。25歳の男性は、「安定した職業にはなりにくく、就職の空白期間を埋めるための仕事だ」と語っている。
ショートムービーは、1話が数十秒から十数分で完結するドラマ形式の動画であり、短期間に大量生産するのが特徴である。1週間で数十話から最大で100話近く撮影することもあるという。
一方で、当局の監督は年々厳しさを増している。2025年には、内容が問題視された1200本以上のショートムービーが、抖音(中国版ティックトック)などのアプリから削除された。
高学歴の若者がショートムービーに集まる現象は、決して華やかな成功物語ではない。行き場を失った末にたどり着いた苦渋の選択であり、数分で消費される映像の裏側には、中国社会に広がる雇用不安と若者たちの行き詰まりを静かに映し出している。
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