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外国の大学に拡大する中国共産党「海外党支部」 深まるイデオロギー浸透と安全保障リスク

2025/09/24
更新: 2025/09/24

アメリカの大学における中国共産党(中共)の「海外党支部」の活動が広がっている。名目上は「母校支援」を掲げながら、大学内に秘密のネットワークを構築し、アメリカの安全保障に新たな懸念をもたらしているのである。

主要なアメリカの大学では、中共党員が母校の支援を受けて「海外党支部」を立ち上げ、公式な学生団体として登録せずに活動していることが判明した。アメリカのニュース非営利団体であるデイリー・コーラー・ニュース・ファウンデーション(DCNF)の詳細な調査により、アメリカ学術界が中共の影響工作の舞台となっている実態が浮き彫りになった。

DCNFが中国国内での学術発表や現地報告を精査したところ、少なくともオクラホマ州立大学(OSU)、ネブラスカ大学リンカーン校(UNL)、コロラド大学デンバー校(UCD)の各キャンパスで党員が海外党支部を設立していることを確認した。これらの組織はいずれも大学の公式団体としては認められておらず、高い秘匿性を帯びている。

さらにDCNFはLinkedInなどの公開情報をもとに関連する党員を特定した。関係者は20人以上にのぼり、その一部はイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校やウィスコンシン大学マディソン校に進学し、ネットワークを拡大していることがわかった。

母校支援とイデオロギー浸透

中国の西北農林科技大学(中国国内第2の農業大学)は、公式サイトで自校出身の党員がUNLに海外党支部を設立したことを誇らしげに発表した。同大学は、この支部が「社会主義イデオロギーの堅持」に力点を置いていると強調している。

中共の制度上、同一機関に3人以上の党員がいれば支部の設置を義務づけられている。「党建活動の全面浸透」と呼ばれる原則を海外でも適用しているのである。

UNL食品科学・技術科には、2015年から西北農林科技大学との「3+1」共同プログラムに基づき学生を派遣しており、2018年には党支部設立を公式に決定した。公開されたリストによれば、少なくとも13人が支部メンバーとして活動し、現在も複数の党員が支部に関与している。

手法と活動実態

党支部設立以降、中国の母校は「海外支部による党イデオロギー推進」について年次報告で取り上げ、積極的に成果を喧伝してきた。

2025年7月に中国で行われた会議では、UNLの海外支部が「3+1プロジェクト」の目標として「食料安全保障の確保」「党員人材の育成」「英語による中国の物語の発信」を掲げていると発表した。出国前には愛国主義に関する事前指導が行われ、渡米後もオンラインによる政治・思想セミナーを繰り返し実施する予定だ。

UNLの支部メンバーで生物化学研究助手を務める余雅帆(Kayla)は「知識を通じて党と国家に恩返しをする」と語った。しかし、DCNFからの取材依頼に対して本人および大学側はコメントを避けた。

他大学への拡張

一部のメンバーは、UNLからウィスコンシン大学マディソン校やイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の大学院に進学し、ネットワークを広げている。アメリカの大学側は「学生や研究者の政党所属は把握しておらず、入学や登録には一切関係ない」と説明し、現状把握を進めようとしていない。

同様の海外党支部は中国農業大学によっても、UCDやOSUに設置している。これらは共同教育プロジェクトの一環と位置づけられ、支部メンバーには「アメリカの同級生に中共の歴史や物語を伝える」ことが奨励されている。出国前には共産党の思想教育課程の履修が義務づけられており、UCDの支部では少なくとも9人、OSUの支部では3人の学生が活動に関与している。OSUとUCDは中国農業大学と学位提携を結んでおり、親中的なイベントや宣伝活動にも積極的にかかわっていることを確認した。

アメリカ国内の危機感

米テキサス州公共政策財団の高等教育政策分析官ケイト・ビアリー氏は「これらの党員はすでにアメリカの最大の敵である中共に忠誠を誓っており、アメリカの国家安全保障に対する明確な脅威である」と警鐘を鳴らす。

アメリカ議会中国問題特別委員会のジョン・ムーレナー委員長も「大学協力プロジェクトや納税者資金を通じて、軍事転用可能な研究成果が中国に流出している」と指摘し、「強力な対策がなければ、北京による研究成果の収集は続く」と警告した。

さらにインディアナ州の議員は「AIや科学技術分野への中共党員の参入禁止法案」を準備している。ネブラスカ州では2025年、この法案を可決し、10月1日から外国敵対国の代理人登録を義務づける予定である。

非営利団体「State Armor」の代表は「中共の軍事関連組織との接点や党支部活動は、いかなる形でも許されるべきではない。州と連邦政府は大学の責任を明確化し、知的資源の流用を防ぐ必要がある」と訴えている。

結び

今回の調査により、中共が中国の母校との連携を通じてアメリカの大学に党支部ネットワークを築き、学生や研究者レベルでイデオロギー浸透や宣伝活動を行っていることが明らかとなった。現場ではアメリカ大学側の無関心や統制不能が浮き彫りになっており、一方でアメリカの政界や有識者は国家安全保障上の脅威として強い警戒を示している。具体的な規制や対策の必要性がいよいよ高まっており、アメリカの学術界は中共との知られざる「情報戦」と「思想戦」の最前線となっているのである。

李言