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関税だけでは米国の製造業は復活せず しかし賢く使えば効果的

2025/05/08
更新: 2025/05/08

運命は大胆な者に味方する。トランプ米大統領は、その大胆さをこれまで幾度となく世界に示してきた。彼は、「フォーチュン」500企業の最高経営責任者(CEO)から、私のような家族経営の小規模事業者に至るまで、米国のビジネスリーダーたちに対し、自身の大胆さに、我々の創意工夫と創造性で応えるよう呼びかけていた。

私は大統領を支持しているが、我々は、彼の米国競争力に対するビジョンの細かなニュアンスを十分に理解してこなかったと思う。彼一人で、成し遂げられることではない。我々が知恵と効果的な行動で、そのビジョンを実現しなければならない。

関税だけでは戦略にはならないが、賢く使えば有効な手段になり得る。これこそ、大統領が一貫して主張してきたことだと私は信じている。しかし大統領は、アメリカの産業界がその呼びかけに耳を傾け、不満を述べるだけでなく実際の行動に移すのを、彼自身の政治的犠牲を払いながらも辛抱強く待ち続けていた。

我々は、行動する準備ができている。そして、大統領と歩調を合わせ、経済的勝利に向けて進む覚悟もある。

私は、アメリカの家庭用繊維メーカーの4代目だ。2005~12年の7年間は中国に駐在し、サプライヤーと誠実かつ機能的なパートナーシップを築くなど、この業界に人生を捧げてきた。1950年代に約250万人いた米国の繊維産業の雇用は、2000年までに90万人を下回るまで激減し、全米中部では、工場の閉鎖が相次いだ。その様子を、私もこの業界の多くの人たちと同じように、目の当たりにした。

中国製品に対する最大245%もの強硬な関税には、工場を国内に呼び戻したいという愛国的な願いが込められ、その思いは私自身も深く共有中だ。2008年の大不況の際、私たちの家業は、ノースカロライナ州ランロにある閉鎖寸前の工場を救うべく介入した。

しかし、この試みは予期せぬ労働力の問題という重い壁に直面し、残念ながら頓挫してしまった。米国の製造業を再建するというのは、スイッチを入れるように簡単なことではないという現実を痛感した。

だからこそ、私はこう考える。米国の製造業を国内に呼び戻したいのなら、関税は有効な手段になり得る。ただしそれは、実質的な投資や雇用創出を促す、戦略的かつインセンティブ重視の政策と組み合わせた場合に限られる。関税は単独では鈍器にすぎない。だが、賢く使えば精密なメスになり得る。

トランプ大統領の関税政策は、極めて現実的なフラストレーションを原動力としている。何十年にもわたり、米国の製造業は、工場の閉鎖と雇用の海外流出を目の当たりにしてきた。輸入品に高関税を課せば、失われた雇用が奇跡的に戻ってくると信じたくなるのも無理はない。しかし、これほど大規模な関税は諸刃の剣だ。

私の会社は現在、存続の危機に直面している。わずか4週間足らずの間に、米国の小売顧客から当社と同業他社に対して、中国からの出荷を事実上すべて停止するよう求められ、生産ラインは休止状態に陥った。同時に、忠実な米国人の高給取りのオフィスワーカーたちが職場を去る事態も目の当たりにした。多くの企業が彼らに給料を支払う余裕を失ったからだ。

中国からの即時の切り離しを求める人々は、何十年にもわたりサプライチェーンに築かれてきた信頼と精度を過小評価し、そのような関係やスキルセットを一夜にして再現することは不可能だ。

これが本質だ:関税が鈍器であるなら、スマートで的を絞ったインセンティブはメスだ。税額控除の拡大、規制の合理化、トレーニングへの投資など、米国生産の障壁を低くする政策が必要だ。そして最も重要なのは(そして緊急に)、リショアリング(生産の国内回帰)に取り組む企業に対する期限付きの関税緩和だ。

当社はアーカンソー州クラークスビルに工場用地を確保し、サラ・ハッカビー・サンダース州知事の支援を得て、この地域に100人以上の高賃金の雇用をもたらす準備が整っていた。しかし、開業前に関税に押し潰されてしまっては、我々は前に進むことができない。

中国からアーカンソー州への製造業移転という決断は、経済的愛国心、貿易政策への賢明な適応、そして中西部製造業の復活を象徴する。

この国への投資は、単なるビジネス・ベンチャーにとどまらず、ひとつの声明でもある。米国の製造業精神は生きており、革新的なパートナーシップと戦略的ビジョンによって再燃させることができる。このプロジェクトが、現代における「メイド・イン・アメリカ」の意味を示す輝かしい手本となるよう、アーカンソー州の指導者や連邦政府関係者と手を携えて取り組んでいくことを楽しみにしている。

米国の産業基盤を強化するという目標は、政治的スペクトルを超えて、米国人全体で共有され、しかし、それは単なる良い意図に基づくだけでは実現できない。大胆な政策と健全な経済学を組み合わせなければならない。

私たちは皆、強く、自立し、機会に満ちた米国を望む。もし我々がこれを正しく実現すれば、それを支えるビジネスそのものを犠牲にすることなく、過去に敬意を払い、未来を受け入れる米製造業の復興を見ることができるだろう。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
米コンサルティング会社「ブリストル・グループ」の代表取締役を務める