米連邦地裁のクリストファー・クーパー判事は2月20日、トランプ政権による連邦職員の大規模な解雇計画を巡る訴訟で、解雇の即時差し止めを求めた労働組合側の訴えを退けた。これにより、トランプ政権の人員削減策は引き続き実施されることになる。
労働組合は、政府が試用期間中の新規職員を大量に解雇していると主張し、訴えを起こした。クーパー判事は「主張には一定の証拠がある」と認めたものの、「裁判所には管轄権がない」として、労使紛争を扱う連邦労働関係局で争うべきだとの判断を示した。
公判では、組合側が「大規模な人員削減によって組合費の収入が減少し、団体交渉の力が弱まる」と主張した。一方、政府側は「計画は合法的な行政権の行使だ」と反論した。
判事と双方の弁護士は、この訴訟が本来、連邦労働関係局やメリット・システム保護委員会で扱うべき労働争議であると認識している。労働組合側は「数千人規模の解雇に対し、個別に異議申し立てをするのは現実的でない」と主張した。
この訴訟では、政府が実施した早期退職プログラム「フォーク・イン・ザ・ロード」も争点となった。これは、政府職員が2月12日までに自発的に退職すれば、9月30日まで給与と福利厚生を全額受給できる制度だった。政府側は、この制度によって「非生産的な職員の整理が進み、効率的な行政運営が可能になる」と主張している。
この制度に対しても別の訴訟が起こされ、連邦地裁のオトゥール判事は、早期退職プログラムの締切期間を延長する判決を下したが、制度自体の実施を阻止することはしなかった。
トランプ政権、連邦職員の削減を加速
トランプ大統領は、連邦政府の規模縮小と財政支出削減を掲げ、政府職員の削減を積極的に推進している。1月25日のラスベガス集会では、「IRS(内国歳入庁)の新規採用を停止し、バイデン政権下で雇用された職員を国境警備に回すことを検討している」と発言した。

「彼らは銃を携帯することが許可されている。だったら国境警備に配置するのが妥当だ」と述べ、移民対策の強化と政府機関のスリム化を同時に進める考えを示した。
また、トランプ氏は就任直後から「政府効率化省(DOGE)」を設立し、政府支出の1兆ドル(約150兆円)削減を目指している。この機関にはテスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏がアドバイザーとして参加しており、すべての政府機関のコスト削減を精査する方針だ。
「DOGEはIRSを含むすべての政府機関を調査し、不要な支出を削減する」とトランプ氏は述べており、さらなる連邦職員の削減が進む可能性が高い。
IRSは本件に関するコメント要請に応じていない。
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